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空より舞い降りし英雄の話

作者: 蟹地獄
掲載日:2025/10/18

むかしむかし、山と森に囲まれた小さな村がありました。


そこでは人々がのどかに暮らしており、子どもたちは川で魚を追い、大人たちは畑を耕し、夜になれば囲炉裏いろりの火を囲んで笑い合っておりました。


けれどもある日のこと。


山の向こうから黒い煙が立ちのぼり、「ズゥン、ズゥン」と地を踏み鳴らすような音が近づいてきました。


見ると、大木のような腕を持ち山のように大きい怪獣が、唸り声をあげながら村へとやってきたのです。


家は潰され、牛は吹き飛び、村人たちは悲鳴を上げました。


「逃げろー!」「神さまー!」「誰か、助けてくれぇ!」


その時です。


空の彼方から、まばゆい光が走りました。


風が逆巻き、雲が裂け、そこから一人の男が舞い降りてきたのです。


金色の鎧、白く輝く翼、眩しいほどの光を放ちながら、男は高らかに叫びました。


「恐れるな! 我こそはそら英雄ヒーロー! 悪を滅ぼし、正義を貫く者なり!」


村人たちは歓声を上げました。


「助かったー!」「我らのヒーローじゃ!」「これで村は救われる!」


英雄は大きく頷き、腕を突き出して空高く舞い上がると、渾身の力で怪獣に突っ込んでいきました。


が、勢いがつきすぎたのです。


空中で体勢を崩し、翼が風を裂く音を立て、

「ちょ、まっ……」と短く叫ぶと、そのまま地面へ急降下。


ズドオオオォン!


英雄は村のど真ん中に激突しました。


家々が吹き飛び、田畑はえぐれ、眩い光と土煙があたりを包み込みました。


しばらくして、煙の中から姿を現したのは……怪獣でした。


ほこりを払いながら、ムッとしたように鼻を鳴らし、「グルルル……」と一声吠えると、残った村を踏みつぶして歩き去っていきました。


その夜、村の灯はひとつも残りませんでした。


あとには、ぽっかりと大きな穴と、英雄のマントの切れ端だけが、風に揺れていたそうな。


そして旅の者がその地を訪れるたび、こう言うのだといいます。


> 「ここは――“英雄に救われそこねた村”」


めでたし、めでたし。




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