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恋の病





夜。

ウィルとリリアは夕飯を食べると、時計塔の下へと来ていた。


「ウィルお兄ちゃん、ある場所って時計塔の事なの?」


「ああ、そうだ。といっても、用事があるのは時計塔の中なんだけどな」


「中?」


「ああ。とにかくついてきて」


ウィルは慣れたように、時計塔の裏手にある入り口から階段を登り始めた。リリアは入ったことのない時計塔の中に入れることにワクワクしていた。


しばらく階段を上ると、時計部分の真裏に来た。いろんな歯車が噛み合う場所を興味深そうに眺めるリリア。

そんなリリアを見て、ウィルはフッと笑みを浮かべると、ポケットからとある鍵を取り出す。その鍵を壁にポツリとある鍵穴に刺すとガチャッと音がして扉が開いた。


「わあ、これ隠し扉?」


「まぁそんなものだよ。さ、ここに入って」


「うん!」


リリアは迷いなく、その中に入る。

その後をウィルもついて入る。


子供2人が入るだけでぎゅうぎゅうになるその場所は、暗くてよく見えなかったが、ウィルが手に持っていったランタンを壁にかざすとリリアの瞳が輝いた。


「わぁー! 綺麗!」


そこには、大小様々な色付きガラスが組み合わさり、壮大な絵が描かれていた。


「これなんだろう……鳥?」


「多分、フクロウかな」


「これは?」


「四葉のクローバーかな」


「これ……はてんとう虫!」


「はは、当たり」


「すごいすごい、どうしてこんな所知ってるの?」


「偶然……というかなんというか」


リリアは知らないが、ここは王都では有名なデートスポットである。事前に予約をしておけば、時計塔の鍵を借りることができる(有料)。


すごいすごいと騒ぐリリアを優しい眼差しで見つめていたウィルだが、ふと振り返ったリリアとの距離がとても近いことに気づく。途端に、心臓がバクバクと脈打つ。顔が赤くなっていくのがわかる。落ち着け、落ち着けと念じながら、どうにかポーカーフェイスに戻るが、気づいてしまった。いや、見間違いかもしれない。リリアの顔がパッと赤くなったのだ。


「リ──」


「あ! ありがとう! 連れてきてくれて。こんな素敵な誕生日にしてくれて」


「あ……いや。どういたしまして。喜んでもらえて良かった」


「もう、すごくすごーく嬉しかった! また来年もここに来たいな、ウィルお兄ちゃん(・・・・・)と一緒に」


ウィルはショックを受ける。

そうか、そうだよな。僕はリリアにとってお兄ちゃんなんだ。

やはり、この想いが届く日は来ないのだろうか。気持ちが沈みそうになった、その時。


「ねぇ、ウィルお兄ちゃん……。なんだか顔が熱いの。風邪でも引いたかな?」


「え! それは大変だ、リリア! ちょっとおでこ貸して」


慌てたウィルはリリアのおでこに自身のおでこをくっつける。


(わ、ウィルお兄ちゃんの顔、近い)


真剣な物差しでおでこの熱を図ろうとするウィルに対し、そう思った途端リリアの心臓は大きく脈打つ。


(あれ、やっぱり私体調悪いのかもしれない。だってこんなに体が熱くて息が苦しい)


リリアは今まで恋というものをしたことがなかった。ラウルもただの幼馴染だと思っていたし、ウィルのことは守ってあげたい兄だと思っていた。だからこれが恋の症状だとは気づいていなかった。


「うーん、たしかに少し熱いかも。はやく家に帰ろう」


焦るウィルを見て、リリアは素直に従った。

だが家に着いた途端症状が無くなり、リリアはなんだったのかと不思議に思うのであった。






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