表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
奈々美さんの裏の顔  作者: 暁の裏


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/21

第6話「鎖につながれて」

 朝、元樹は重いまぶたを擦りながら起床した。

 昨夜は結局ほとんど眠れず、頭が重く霞んでいる。

 窓の外に見えた人影のことが頭から離れず、何度も窓辺に立って外を確認してしまった。

 階下では、由美がいつものように慌ただしく朝食をとっている。


「お兄ちゃん、今日もすごい顔してるけど大丈夫?」

「……大丈夫だ」


 由美は心配そうに眉をひそめたが、時間がないのか「気をつけてね」とだけ言って先に家を出て行った。

 元樹は一人でトーストをかじりながら、今日こそは奈々美を避けようと決意する。

 早めに家を出て、違う道を通って学校に向かえば――

 そう考えて、いつもより10分早く家を出た。

 しかし。


「おはよう、渡部くん」


 いつものコースを避けて回り道をした先で、奈々美が静かに立っていた。

 まるで元樹の行動を全て読んでいたかのように。

 元樹の血が凍る。


「……なんで、ここに」

「あら、偶然よ」


 奈々美は首を傾げて微笑む。


「渡部くんと同じで、たまには違う道を通りたくなったの」


 その笑顔は穏やかだが、瞳の奥には確信に満ちた光がある。

 元樹は理解した――彼女は自分を監視している。


「そう、だな……」


 震える声で答えながら、元樹は歩き始める。

 奈々美は自然に隣に並び、いつものように会話を始めた。


「昨日の夜、窓の外を見てたでしょう?」


 その言葉に、元樹の足がよろける。


「え……?」

「心配事があると、人って外を見たくなるものよね」


 奈々美の声は優しいが、その意味するところに元樹は戦慄する。

 やはりあの人影は――


「私、渡部くんの家の近くを散歩するのが好きなの。夜は静かで、落ち着くから」


 それは脅迫だった。

 穏やかな口調で告げられる、静かな脅迫。

 元樹は何も答えられず、ただ震えながら歩き続けるしかなかった。




 教室に着くと、玲はもう席についていた。

 元樹の青ざめた顔を見て、心配そうに立ち上がる。


「元樹、大丈夫? すごく顔色が悪いよ」

「あ、ああ……ちょっと寝不足で」


 元樹が曖昧に答えると、奈々美が静かに口を開く。


「心配事があるみたいなの。私も気になって」


 その言葉に、玲はより心配そうな表情になる。


「何かあったの? 話せることなら聞くよ」


 玲の優しさが身に沁みるが、同時に恐怖も増した。

 奈々美の言葉を思い出す――『玲なんて必要ないわ』


「大丈夫だから。ありがとう」


 元樹は無理に笑顔を作る。

 玲は納得していない様子だったが、それ以上は追及しなかった。

 授業が始まると、奈々美は相変わらず元樹を見つめ続ける。

 だが今日のその視線は、より所有欲に満ちていた。

 二時間目の休み時間、玲が席を立った隙に、奈々美が小さく囁く。


「心配してくれるのね、上野さん」

「……」

「でも、あまり迷惑をかけない方がいいわ。彼女だって、重い話ばかり聞かされたら嫌になるでしょう?」


 その言葉の裏に隠された脅しを、元樹は敏感に察知する。


「玲に何かしたら――」

「何もしないわよ」


 奈々美は無邪気に微笑む。


「あなたが私だけを見てくれるなら」




 昼休み、三人で弁当を食べることになった。

 玲は相変わらず明るく話しかけるが、奈々美の存在が重く圧し掛かる。


「そういえば奈々美さん、趣味とかあるの?」


 玲の質問に、奈々美は少し考える素振りを見せる。


「人間観察かしら」

「人間観察?」

「ええ。人の行動パターンを見るのが好きなの。例えば……」


 奈々美の視線が元樹に向けられる。


「渡部くんは朝、いつも同じ時間に家を出て、同じ道を通る。でも今日は10分早く出て、違う道を選んだ」


 玲が驚いたように目を丸くする。


「へえ、よく見てるんだね」

「興味のある人のことは、よく覚えてるの」


 その言葉に込められた執着の重さに、元樹は箸を持つ手が震える。


「元樹、やっぱり体調悪いんじゃない? 保健室行く?」


 玲の心配そうな声に、奈々美の表情がわずかに変わる。

 一瞬だけ、冷たい光が瞳に宿った。


「大丈夫だから……」


 元樹は慌てて否定するが、玲の優しさと奈々美の狂気に挟まれて、胸が苦しくなっていく。





 放課後、元樹は今度こそ奈々美を避けようと、教室を素早く出た。

 しかし廊下を急いで歩いていると、後ろから軽やかな足音が聞こえてくる。

 振り返らなくても分かる。

 奈々美だ。


「渡部くん、そんなに急いでどこへ行くの?」


 追いつかれる。

 元樹は観念して足を止めた。


「……帰るだけだ」

「そう。一緒に帰りましょう」


 拒否する選択肢はない。

 元樹はため息をついて歩き始める。

 校門を出ると、奈々美が不意に立ち止まった。


「ねえ、渡部くん」

「……なに」

「昨日の屋上での話、ちゃんと考えてくれた?」


 元樹の心臓が跳ね上がる。

 昨日の奈々美の言葉――『私だけを見て、私だけを愛して』


「考えるって……」

「私たちの約束のこと。そして、上野さんのこと」


 奈々美の声が低くなる。


「あなたが選ぶのよ。私との約束を守るか、それとも……」


 言葉の先は語られないが、その威圧感は十分に伝わってくる。


「時間はあげる。でも、あまり長くは待てない」


 そう言って、奈々美は微笑んだ。

 その笑顔が、元樹には悪魔のものに見えた。





 家に帰った元樹は、部屋で一人考え込んでいた。

 机の上のフィギュアが、暗闇の中で不気味に光っている。

 奈々美の執着、玲への脅し、そして自分の無力さ。

 全てが重くのしかかり、呼吸が苦しい。

 スマホを手に取り、玲にメッセージを送ろうとする。

 でも画面を見つめたまま、指が動かない。

 何を書けばいいのか。

『気をつけて』と言って、玲を不安にさせるべきなのか。それとも、何も言わずにいるべきなのか。

 結局、メッセージは送らずにスマホを置いた。

 窓の外では夜が更けていく。また奈々美が見ているかもしれないと思うと、カーテンを開けることもできない。

 ベッドに横になりながら、元樹は玲のことを考える。幼い頃からずっと一緒だった玲。

 明るく、優しく、いつも元樹を気にかけてくれる玲。彼女を巻き込むわけにはいかない。

 でも、奈々美の要求を飲むことも出来ない。

 板挟みの中で、元樹は苦悩し続けた。




 木曜の朝、元樹は一つの決意を固めていた。

 奈々美と直接話し合い、玲には手を出さないよう約束してもらう。

 その代わり、自分は――

 考えたくない結論だったが、他に選択肢はない。

 いつものように奈々美と遭遇し、学校まで歩く。

 今日の奈々美は上機嫌で、鼻歌まで歌っている。


「いい天気ね」

「……そうだな」

「何か決めたことがあるみたいね」


 奈々美の洞察力に、元樹は内心驚く。

 表情に出していないつもりだったが、やはり見透かされている。


「放課後、また屋上で話そう」


 元樹の方から提案すると、奈々美は嬉しそうに笑った。


「ええ、待ってるわ」


 教室での最後の日常

 教室に着くと、玲がいつものように明るく挨拶してくる。


「おはよう、元樹!」

「おはよう」


 元樹は玲の笑顔を見つめながら、これが最後かもしれないと思う。

 奈々美の要求を飲めば、玲と自然に接することは出来なくなるだろう。

 授業中、元樹は玲の後ろ姿をじっと見つめていた。まっすぐな背筋、時折見せる横顔。

 全てが愛おしく、そして失いたくないものだった。

 隣では奈々美が満足そうに微笑んでいる。

 元樹の心の動きを全て読み取っているかのように。




 昼休み、三人で弁当を食べながら、元樹は玲を観察していた。

 いつものように明るく話し、元樹を気遣ってくれる玲。

 その優しさが、胸に痛い。


「元樹、今日は少し元気そうね」


 玲の言葉に、元樹は苦笑いする。


「そうかな」

「うん。昨日までは心配だったけど……」


 玲の心配そうな表情を見て、元樹は胸が締め付けられる。

 こんなに優しい玲を、危険に晒すわけにはいかない。


「ありがとう。玲がいてくれて、本当に良かった」


 突然の感謝の言葉に、玲は驚く。


「どうしたの、急に」

「いや……いつもありがとうって思ってたから」


 奈々美がその会話を静かに聞いている。

 その瞳に、静かな怒りが宿っているのを元樹は見逃さない。




 放課後、元樹は重い足取りで屋上に向かった。

 扉を開けると、奈々美が夕陽を背にして立っている。


「来てくれたのね」

「……話がある」


 元樹は意を決して口を開く。


「俺は君の気持ちに応える。だから――」

「玲には手を出すな、って言いたいの?」


 奈々美が振り返る。

 その瞳には、勝利の確信があった。


「……そうだ」

「いいわ」


 あっさりとした返事に、元樹は拍子抜けする。

 奈々美がゆっくりと近づいてくる。


「あなたは私だけのもの。他の女の子と親しくするのは禁止」

「……それは」

「玲とも、距離を置いてもらうわ。幼馴染でも、関係ない」


 元樹の心が痛む。

 玲との関係を断つことは、自分の過去を切り捨てることに等しい。


「そして……」


 奈々美の声が甘く響く。


「私と付き合って。恋人として」


 その言葉に、元樹は絶句する。


「返事は?」


 奈々美の瞳が、答えを待っている。

 拒否すれば玲が危険に晒される。

 受け入れれば、自分の自由が奪われる。

 元樹は深く息を吸い、覚悟を決めた。


「……分かった」

「やっと私たちの約束が果たされるのね」


 奈々美は嬉しそうに微笑み、元樹の手を取る。

 その手は冷たく、でも強い力で握られる。

「まずは連絡先交換しましょう」


 奈々美が携帯を取り出しながら言う。

 俺たちは連絡先を交換した。


「明日から、恋人として学校に通いましょう」


 元樹は頷くしかない。

 玲の安全と引き換えに、自分の自由を差し出したのだ。


「約束を破ったりしないでしょうね?」

「……しない」

「良い子ね」


 奈々美は満足そうに笑う。

 その笑顔は美しいが、元樹には悪魔の微笑みにしか見えなかった。

 夕陽が沈み、屋上に薄闇が訪れる。

 二人の影が長く伸び、やがて一つに重なった。




 金曜の朝、元樹は重い気持ちで家を出る。

 昨日の約束を思い出し、胃が重い。

 案の定、奈々美が待っていた。

 しかし今日の彼女は、これまでとは違っていた。


「おはよう、元樹くん」


 名前の呼び方が変わっている。

 より親しげに、より所有欲を込めて。


「……おはよう、奈々美」

「今日から私たち恋人なのよ。もっと嬉しそうにしなさい」


 奈々美は元樹の腕に自分の腕を絡める。

 その親密な仕草に、通りがかりの生徒たちが視線を向ける。


「みんな見てるじゃないか」

「構わないわ。むしろ、見せつけたいの」


 奈々美の瞳が熱を帯びる。


「あなたが私のものだってことを、みんなに知らせたいの」


 元樹は抵抗したいが、昨日の約束が頭をよぎる。

 仕方なく、奈々美の行動を受け入れる。




 教室に入った瞬間、クラス全体の視線が二人に集中した。

 腕を組んで入ってきた二人を見て、ざわめきが起こる。

 玲は前の席でその光景を見て、目を丸くしていた。


「元樹……?」


 玲の困惑した声に、元樹の胸が痛む。

 しかし奈々美が隣で満足そうに微笑んでいるのを見て、何も言えない。


「みんな、驚かないで」


 奈々美が教室に向かって宣言する。


「私たち、昨日から付き合ってるの」


 教室がさらにざわめく。

 急展開に、クラスメートたちは戸惑いを隠せない。

 玲は振り返ると、元樹を見つめた。

 その瞳には、困惑と少しの悲しみがある。

 元樹は玲と目を合わせることができず、視線を逸らした。




 昼休み、奈々美は元樹の弁当を半分取り上げる。


「恋人同士なんだから、一緒に食べましょう」

「……」


 元樹は抵抗する気力もなく、されるがままになっている。

 玲は少し離れた席で一人で弁当を食べていた。

 いつものように元樹と一緒に食べることを遠慮したのだ。

 その姿を見て、元樹の心が痛む。


「上野さん、一人で寂しそうね」


 奈々美が小さく囁く。


「でも仕方ないわ。あなたはもう私のものなんだから」


 その言葉には、静かな勝利感がこもっていた。

 元樹は玲を見つめながら、自分の選択が正しかったのか疑問に思う。

 しかし、もう後戻りはできない。

 奈々美の執着から玲を守るためには、これしか方法がなかったのだ。




 放課後、奈々美は元樹にいくつものルールを告げた。


「まず、他の女の子と話すのは禁止」

「勉強のことでも?」

「ダメ。私に聞けばいいでしょう」


 元樹は絶句する。


「それから、部活動や友達付き合いも控えめに」

「……」

「私との時間を最優先にして」


 奈々美の要求は、元樹の行動を完全に支配するものだった。


「あと、毎日メッセージを送ること。朝、昼、夜の三回は必須よ」

「分かった……」


 元樹は項垂れながら答える。

 自由を奪われた鳥のような気分だった。




 土曜の朝、元樹のスマホに奈々美からメッセージが届く。


『今日はデートしましょう。10時に駅前で待ってるわ』


 選択の余地はない。

 元樹は重い足取りで家を出る。

 駅前で待つ奈々美は、華やかなワンピースを着ていた。

 その美しさに、通りがかりの人々が振り返る。


「おはよう、元樹くん」

「……おはよう」

「今日は一日中、私と一緒よ」


 奈々美は嬉しそうに笑いながら元樹の腕を取る。

 二人は街を歩き、ショッピングや映画を楽しんだ。

 表面上は、普通のカップルのデートだった。

 しかし元樹には、監視されているような窮屈さがあった。

 奈々美の視線は常に元樹に向けられ、他に注意を向けることを許さない。


「楽しい?」

「……ああ」


 元樹は無理に笑顔を作る。

 奈々美はその表情を見て、満足そうに頷いた。




 日曜日、元樹は久しぶりに一人の時間を過ごしていた。

 奈々美は用事があるとかで、今日は会わない。

 部屋で横になりながら、元樹は自分の状況を整理する。


 ――奈々美との関係は、恋愛ではない。

 ――それは支配と服従の関係だ。

 ――でも玲の安全のためには、これを続けるしかない。


 スマホを見ると、玲からメッセージが届いていた。


『元樹、最近大丈夫? 何か悩みがあったら相談してね』


 その優しさが胸に沁みる。

 元樹は長い間画面を見つめていたが、結局返信しなかった。

 奈々美との約束を破るわけにはいかない。

 窓の外では、平和な日曜の午後が過ぎていく。

 でも元樹の心は、深い孤独に包まれていた。




 月曜の朝、新しい週が始まった。

 元樹は奈々美との「交際」を続け、玲とは距離を置く日々を送っている。

 教室でも、玲は元樹に遠慮がちに接する。

 その姿を見るたび、元樹の心は痛んだ。

 しかし奈々美は満足そうで、以前よりも機嫌が良い。

 元樹を支配していることに、深い喜びを感じているようだった。


「今日も一緒にお弁当を食べましょう」


 奈々美の提案に、元樹は頷く。

 もはや拒否する気力も残っていない。

 玲は一人で弁当を食べながら、時折こちらを見る。

 その視線には、失ったものへの寂しさがあった。

 元樹は玲を守るために自分を犠牲にしたが、結果的に玲を傷つけてしまっている。

 この選択は正しかったのだろうか。

 元樹の心に、疑問が渦巻いていた。




 1週間が過ぎ、奈々美の支配はより巧妙になっていく。

 表面上は愛情深い恋人を演じながら、実際は元樹を完全に管理している。


「今日は誰と話した?」


 毎日の尋問は欠かさない。


「宿題を手伝ってくれた田中と少し」

「男子生徒ね。許可するわ」


 奈々美の許可制に、元樹は屈辱を感じる。

 しかし反抗すれば、玲に危害が及ぶかもしれない。


「でも、長話は禁止よ」

「分かった」


 元樹の返事を聞いて、奈々美は満足そうに微笑む。

 その笑顔の裏には、狂気的な支配欲が隠されていた。




 ある日の放課後、元樹は一人で屋上にいた。

 奈々美は生徒会の仕事があるとかで、珍しく一人の時間ができた。

 夕陽を眺めながら、元樹は自分の人生について考える。

 このまま奈々美に支配され続けるのか。

 玲との関係は、もう二度と戻らないのか。


「元樹?」


 振り返ると、玲が立っていた。

 久しぶりの二人きりに、元樹の心が動揺する。


「玲……」

「最近、全然話せてないから……心配になって」


 玲の優しさに、元樹の心が痛む。


「大丈夫だから」

「本当に? なんだか元気がないみたいだけど……」


 玲が一歩近づく。

 その瞬間、元樹は奈々美のことを忘れ、玲との距離を縮めたくなった。

 しかし――


「何をしてるの?」


 冷たい声が響く。

 振り返ると、奈々美が立っていた。

 その瞳には、怒りの炎が燃えている。

 玲は慌てて距離を置く。


「あ、奈々美さん……」

「上野さん、私の彼氏に何の用?」


 奈々美の声は氷のように冷たい。

 その迫力に、玲は怯む。


「別に、その……心配になって」

「心配? 恋人がいる男性を心配するなんて、どういうつもり?」


 奈々美の敵意は明白だった。

 玲は困惑しながら後ずさりする。


「そんなつもりじゃ……」

「もう近づかないで。元樹くんは私のものなの」


 その宣言に、玲は傷ついた表情を見せる。

 元樹は止めたかったが、奈々美の視線に釘付けになって動けない。

 玲は小さく頷くと、屋上を去って行った。

 その後ろ姿に、深い悲しみが漂っていた。


「いい加減にしろ」


 元樹がついに声を上げる。


「玲は関係ないだろう」

「関係ないって?」


 奈々美の瞳が危険に光る。


「あの女はあなたを私から奪おうとしてる」

「そんなことはない」

「あるのよ。女の勘よ」


 奈々美は元樹に近づく。


「約束を忘れたの? 私だけを愛するって」

「……忘れてない」

「なら、証明して」


 奈々美の要求に、元樹の心は折れそうになった。

 しかし玲の安全のためには、耐えるしかない。

 これが愛なのか。

 それとも狂気なのか。

 元樹にはもう、区別がつかなくなっていた。

 夕陽が沈み、屋上に暗闇が訪れる。

 二人の影が長く伸び、元樹の心も深い闇に包まれていく。

 しかし、この支配的な関係に終わりはあるのだろうか。

 元樹の苦悩は、まだ続いていく――。

遂に付き合った2人だが不安が隠せない元樹の描写や奈々美さんの裏の顔が存分に出されています。

これからどういう関係が構築されていくのかお楽しみに



暁の裏

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ