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よく似た他人

ここから聖者、ノクシエル視点へと移ります。

祈りの時間には、まだ早い。

僕はお粥が入ったお椀を手に、ドアを控えめにノックして、ドアを開けた。

部屋には夜の名残と、僅かな日の光が埃に反射した。

ベッドに眠っていた魔王も丁度目が覚めたようで、薄く目を開いたと思えば、勢いよく身を起こした。

敵を見る目だ。凍りつくような冷たさを持って、僕を射抜く。


「おっと、体に障るよ。動かないように」

「っ、ここは……?」

「僕の家」


簡潔に答えれば、僕はお粥を差し出した。


「食べて。手が不自由なら食べさせる」

「……いらん」

「まあまあ、そう言わずに」

「だからいらん」

「まあまあ………」


そんな攻防を続ければ、魔王は折れて折れていない片腕で一口お粥を含む。


「………不味い」

「……失礼だな。僕の力作だぞ」

「こんな味がするものがこの世に存在したとは……」


今にも吐き出しそうな魔王は、口元を抑えながら問うた。


「一体、何を入れたんだ」

「ええ?ただ滋養にいい薬草と山菜と、果物の果汁を入れただけだよ」

「何でも入れれば良いと言うわけではないだろうが……」


そうして睨み合いの末、僕が匙を無理やり押し込むことで完食をさせた。

魔王は暫く苦しんだ。


「………落ち着いたかな?」

「一体誰のせいだと思ってる……?」

「よし、元気だね。それじゃあ傷を見せてもらうよ」

「……何故」


僕は、その疑問の意味を考える。

魔王を世話してること?

こんな、呑気に会話していることか?

それとも………殺していないことか。


「……君は、懐かしいから」

「……」


そこから魔王は、理由もわからないけど特に抵抗しなくなった。

魔王の体の傷は酷かった。

左腕、右足は骨折して、ほぼ全身に切り傷があった。どれも風の魔法によるものだ。

そして、聖魔法による火傷。これは勇者にやられたに違いない。

二つある角のうち一つが折れている……これは何が原因だろうか?

魔族の角は硬く、特に魔王なんてもっと硬いはず。これは……?


僕は仕方なくため息をついた。


「完治は簡単なことではないね。……ちょっと荒治療が必要か」

「……?」


荒治療、その言葉に僅かな反応を示す魔王。

僕は迷いなく彼の頸に、手刀を入れた。

魔王の赤い目が、静かに閉じた。

次回、お買い物

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