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プロローグ
灰と埃、血の香りが漂う漆黒の城。
すでに崩れる寸前の場所に、聖者ノクシエル・フデリスは歩く。
先ほど、十年にも及ぶ魔族との戦争が終戦を迎えた。
魔王は討たれ、数多の犠牲と死体の上に、世界は平穏を今迎えようとしていた。
白銀の髪は風に吹かれ、蒼い瞳は深海を映す。
死体まみれの死屍累々とした光景に、フードを深く被った時、彼は気づいた。
物陰に隠れた、「何か」がいることに。
びゅう、風が一際強く吹き、フードが外れる。
聖者は目を見開いた。
その正体は、片や折れた双角を持ち、赤い瞳で聖者を忌々しく睨む……魔族であった。
しかし彼はすでに瀕死の重体だった。
いつ死んでもおかしくないのに、しぶとく生き延びている。
「……殺せ」
低く幽かな声が囁き、魔族は最期を請う。
聖者はその様子に目を細め、数秒の前を置き毅然と応えた。
「断る。その代わり、僕が髪を助けよう」
今この瞬間、敵対するはずの二つの存在の出会いが世界を回し始めた。
__これは、彼らが共に歩む物語




