表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
H//iraeth  作者: 呟貝
第二章:ネスト
16/22

第16話:王の犠牲/前編

ネストの格納庫(かくのうこ)に、けたたましい警告音が鳴り響いた


敵襲(てきしゅう)!所属不明機、高速で接近ッ!」


管制室から響いたのは、悲鳴に近い絶叫(ぜっきょう)だった

その声に、整備中だったアダリズたちが弾かれたように顔を上げる


ブラインは息を呑み、モニターに映し出された一点の光を睨んだ

その光は、あまりにも速く、そしてあまりにも真っ直ぐに、このネストを目指していた


「なんだこの信号は…!?バカな、ありえん!」


隣でコンソールを叩いていたイオロが、血の気の引いた顔で叫ぶ


「あの残骸(ざんがい)だ!自己修復して位置情報を…!まずい、もうそこまで来てるぞ!」


その報告と、管制室からの絶叫がほぼ同時だった

解析を続けていたあの残骸が、結果としてこの襲撃を招いたのだ


「総員、迎撃用意」


ファルシアの冷静な声が、格納庫の混乱を断ち切る


だが、敵の到着は彼らの準備が整うよりも早かった


ネストを覆う岩盤が、轟音(ごうおん)と共に砕け散る


粉塵(ふんじん)の向こうから現れたのは、誰もが見たことのない異形(いぎょう)のフェザーフレームだった


そこにあったのは、神話から抜け出たかのような、白銀(はくぎん)のグリフォン

翼を持つ獅子の(ごと)きその機体は、無機質なカメラアイで静かにネストを見下ろしている

その姿は神々(こうごう)しく、同時に底知れぬ冒涜(ぼうとく)を感じさせた


「なんて機体だ…」


誰かが呆然(ぼうぜん)と呟く


だが、感嘆の声を上げる暇はなかった

白銀のグリフォンは、その巨大な翼を一度羽ばたかせると、音もなくネストの防衛ラインへ突入する


「リース、ギャレス、散開して撹乱(かくらん)しろ」


ファルシアの指示が飛ぶ


ネストのアダリズたちが、それぞれの機体でグリフォンを迎え撃つ


だが、彼らの攻撃は白銀の装甲に触れることすら叶わない


グリフォンは最小限の動きで全ての攻撃をいなし、あるいはその分厚い装甲で弾き返す


そして、その反撃はあまりにも無慈悲(むじひ)だった


ハチドリが舞うように放たれたリースのドローンは、翼から放たれた光の鞭に一瞬で薙ぎ払われ、制御を失い爆散(ばくさん)する

ギャレスの機体は、レールガンを発射する直前、その鋭いクローによって砲身ごと胴体を貫かれ、まるで玩具のように引き裂かれる


悲鳴を上げる間もない、一方的な蹂躙(じゅうりん)


パイロットは誰だ


ブラインの脳裏に、あの赤い機体を駆っていた男の顔が浮かぶ


「エフニス…」


だが、モニターに映るグリフォンの動きには、かつて彼が感じた狂気や激情は微塵も感じられない

ただ、無表情に、無言のまま、プログラムされた破壊を遂行する機械のようだった

ブラインのことも、ネストのアダリズたちのことも、まるで認識していないかのように


その圧倒的な力の前に、次々と仲間たちが地に伏していく


格納庫に残されたのは、ブラインのクレセントと、ファルシアのヘブリンだけになっていた


白銀のグリフォンは、ゆっくりとこちらへ向き直る

その無機質なカメラアイが、ブラインを捉えた気がした

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ