41.シュカの内心
ロクの住居を後にしたトーリは、暴れる住民を拘束し、隔離している住居に寄り、しばらくしてからシュカとリクロの住居に向かう。そしてシュカとリクロの住居に、ノックせずに入る。
住居の中では、相変わらずリクロとリンリが、近い距離で触れ合っており、そこから少し離れた位置で、シュカが座りこみ、黙々と、何かの作業をしている。
リクロが入ってきたトーリを、一瞬、見るが、すぐにリンリに向き直る。
そんなリクロとリンリの様子を、トーリも、一瞬、見ると、次はシュカの元まで、近寄っていく。
シュカは、そんなトーリにに気がつくと、作業の手を止め、トーリを見あげ、微笑みかける。
「あぁ、トーリちゃん。子どもたちと遊んでくれたんだってね」
そして口元に手をそえながら、そう言うシュカに、嫌そうに顔をしかめる。
「んだよ、もう広まってるじゃん。勘弁してよぉ」
そのトーリの様子を、シュカは、おかしそうに少し笑いながら、続けて口を開く。
「今度、その子たちとも一緒に遊びにでも行きましょ? 族長、ロクさんも呼んで。リクロとリンリも一緒に」
そう言うと、シュカは、一回、リクロとリンリを見ると、次にトーリを見あげる。
トーリは疲れた声で「マジかよぉ」と呟くと、シュカの隣に座りこむ。
「まぁ、でもロクは難しいんじゃないかな? たぶん忙しくなるだろうし」
そのトーリの答えに、シュカは、少し残念そうに「そうなのね」と言う。
「トーリちゃんがたまにロクさんと話してることだったりする?」
そんなシュカの疑問に、トーリは「ん? まぁね」と返すと、シュカが作業に使っていた布切れをいじり出す。
シュカは、トーリがいじり出した布切れを取りあげると、作業を、また再開する。
「トーリちゃん、私たちのためにロクさんと、いろいろ動いてくれてるんでしょ?」
「あら、分かる? まぁ、でもそんな大したことはしてないけどねぇ」
「うぅん、そんな事ないわ。私たちが今こうしてられるのも、あの時、あなたが来てくれたからで」
そうトーリに語りかけると、シュカは、いったん作業の手を止め、少しの間、寂し気に顔を伏せる。
「でも、二人とも、私たちには、何も言ってくれないのね」
シュカは、続けて呟くように言うと、顔をあげ、少しトーリを見つめる。すると、すぐにやけに明るい微笑みを浮かべ、更に口を開く。
「なんてね。ごめんね、困らせること言っちゃって。分かってるわ。戦える人じゃないと役には立てないのよね」
そう言うと、シュカは、また作業に戻る。
そんなシュカに、トーリは困ったように「う、ん。まぁ、えっと」とだけ呟く。
その呟きを聞くシュカは、黙々と作業に取り組みつつも、その無表情な横顔は、どことなく寂しそうな雰囲気を漂わせていた。
その様子に、トーリは、それきり黙りこみ、顔を伏せると、うかがうようにシュカを横目で見つめる。




