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21.〔尻尾付き〕戦 四『終戦』


 ヒビが入り、細かく砕けているギンガの氷柱には、屋根の上に座していたはずの〔リーダー格の尻尾付き〕が、その奇怪な(あし)の、踵を、氷柱に大きく入るヒビの中心に置いていた。


 脚を、氷柱の上に置き〔リーダー格の尻尾付き〕は、微かな身の動きで、ギンガを見る。


 しかし不思議なことに〔尻尾付き〕の象徴の、赤黒い尻尾は、なくなっていた。代わりに〔リーダー格の尻尾付き〕の奇怪な脚には、蛇のように巻き付いた、太く赤黒い線が、力を()めた血管のように、異様に浮き上がりをする。

 尻尾は、〔リーダー格の尻尾付き〕の(つや)のある濃く赤い皮膚(ひふ)の脚に、入り込み、複雑に巻き付いている。


 〔リーダー格の尻尾付き〕の、奇怪な脚に、入り込み、巻き付く尻尾は、その異常な伸縮力を持って、脚の筋肉の動きを補助し、ただでさえの異常な〔リーダー格の尻尾付き〕の脚力を、更に増強することとなる。


 そして〔リーダー格の尻尾付き〕の脚の形状は人間に似ているが、その脚は、人間に、似つかない奇怪な発達をしている。

 普通の人間の膝より、強く出っ張り、かつ少し低い位置に移動し、その膝の位置のズレが、その質量が引き締まったような脹脛(ふくらはぎ)が、更に分厚くなる。


 この膝が出っ張り、下の位置にズレれることにより、この〔リーダー格の尻尾付き〕の脚は、膝関節のしなりを少なくし、振り下ろしのエネルギーの分散を最小限に抑え、踵落(かかとお)としに最適な形状の脚を、実現していた。


 そんな〔リーダー格の尻尾付き〕の脚に入り込んでいた、尻尾が、蛇のような鈍いうねりのある、奇妙な速やかさで、抜けていく。

 その〔リーダー格の尻尾付き〕の様子に、ギンガがためらいなく、氷塊(ひょうかい)を圧縮させながら、撃ち出す。

 打ち出された氷塊は、すぐに見えない程の小さくなると、不可視な衝撃波を放ちながら、〔リーダー格の尻尾付き〕に、飛んでいく。


 すると氷柱にかけていた〔リーダー格の尻尾付き〕は、脚の、膝が開き、新たに、折りたたまれていた関節が、(あら)わとなり、その関節の数は、二つとなる。しかし、その人間の膝関節の下に、更にもう一つ現れた関節は、鳥のように、前に曲げる構造の、奇怪な脚となっていた。

 〔リーダー格の尻尾付き〕は、すぐに鳥のような関節を、曲げることで、姿勢を前に倒し、更にその上の関節も曲げると、一気に両方の関節を伸ばし、飛び上がると、背を反らし、ギンガが放った不可視の衝撃を、軽々と避ける。

 そして〔リーダー格の尻尾付き〕は、音もなく着地すると、鳥のように曲がる関節とその上の膝を、間の部位を格納するように、曲げ、最初の踵落としをした脚の形状に戻る。

 すると今度は、膝を開く以外の、動きがない、ノーモーションの跳躍で、高く跳躍し、ギンガの攻撃でボロボロになった、〔配下の尻尾付き〕の近くに着地する。


 〔リーダー格の尻尾付き〕の、前方と後方に曲がる二つの膝関節が、前後の姿勢の移動を、容易にし、かつ二つの関節が生み出す、通常の倍の屈伸力によって、ノーモーションであったとしても、高い跳躍力を実現していた。

 同時に、〔リーダー格の尻尾付き〕の通常の倍ある屈伸力により、着地時の衝撃さえも、最小限に流して、少しの音さえも立たない。


 そこにもう一匹の〔配下の尻尾付き〕も、〔リーダー格の尻尾付き〕の傍らに寄ってくる。

 その〔配下の尻尾付き〕と、ギンガたちが睨みあう。

 その傍らで〔リーダー格の尻尾付き〕の方は、ボロボロになった方の〔配下の尻尾付き〕に、目の位置が確認できない流線形の顔を向けている。やがて、そのボロボロの方の〔配下の尻尾付き〕に、おもむろに近づいていく。


 その〔リーダー格の尻尾付き〕の様子に、ギンガたちは、険しい表情で警戒する。


 〔配下の尻尾付き〕は、近づいてきた〔リーダー格の尻尾付き〕を見上げ、小首を傾げる。

 すると〔リーダー格の尻尾付き〕は、〔配下の尻尾付き〕の尻尾を掴むと、一気に引き抜く。

 尻尾を引っこ抜かれた〔配下の尻尾付き〕は、けたたましいカスれた悲鳴を上げ、のたうち回る。


 〔リーダー格の尻尾付き〕は、その配下の様子を、首を、少し傾けると、頬の位置に手を当て、その指が、鮮やかな瑞々(みずみず)しい赤い皮膚の上を、滑り落とす。


 すると、おもむろに姿勢を前に倒し、その脚を、後ろに引きあげると、のたうち回る〔配下の尻尾付き〕の頭を、格納した関節を開きながら、蹴りつける。

 人間と似た膝関節の構造による、振り下ろしによるエネルギーに乗じて、鳥のような関節が閉じることにより、その放たれる蹴り上げの威力は、引き上がる。


 よって、その蹴りを受けた〔配下の尻尾付き〕の頭は、木っ端微塵(こっぱみじん)に吹き飛ぶ。


 〔リーダー格の尻尾付き〕の、その脚は、高く、変則的な機動力と、すさまじい脚撃を両立し、脚での戦闘に最効率な形状を、実現していた


 そして〔リーダー格の尻尾付き〕は、その手に持った、抜き取った、のたうつ尻尾を、強引に丸めながら、もう一匹の〔配下の尻尾付き〕に近づいていく。

 やがて尻尾は、小さな、手で持てるほどの複雑に絡まり合った球体となる。尻尾の球体を持ち〔リーダー格の尻尾付き〕が目前にまで迫ると、もう一匹の〔配下の尻尾付き〕は、諦めたかのように腰を抜かし、座り込む。


 脚を、たたむ瞬間の翼のような形にし、へたり込む〔配下の尻尾付き〕の首を、〔リーダー格の尻尾付き〕が掴み、持ち上げると、〔配下の尻尾付き〕の胸に、丸めた尻尾の球体を抉り、入れる。





「うわぁ、流石は〔ブレイン〕。むごいことするねぇ。〔尻尾付き〕の、尻尾は、最上位の〔ブレイン〕である、〔〘尻尾〙のブレイン〕の因子であり。そんな強大な力を有した因子を、並みの〔ブレイン〕が二つ以上取り込むなんて」


 逐一、戦場の様子をうかがっていたトーリは、双眼鏡を覗くのを止めながら、そうシミジミと言う。


 その瞬間、トーリが先ほどまで双眼鏡を向けていた場所から、いくつもの数え切れない量の赤黒い巨大な尻尾が、触手のように、のたうち伸びる。

 うねる尻尾の、根元の、肉が歪な、痙攣(けいれん)のような(うごめ)き方で肥大化していく〔ブレイン〕の、その体は、やがて双眼鏡なしでも、確認できるほど、巨大になる。

 〔尻尾付き〕であった〔巨大化したブレイン〕は、叫び声をあげ、のたうち回るように暴れ出す。


 そんな〔巨大化したブレイン〕を見て、トーリは「まぁ、そうなるわな」と呟く。


 その間にも、暴れる〔巨大化したブレイン〕の体を、いくつもの赤黒い尻尾が(えぐ)り、潜り込む。

 尻尾は〔巨大化したブレイン〕の体の、スミズミまで伸びていき、まるで大樹の根が縛り付けるかのように巻き付く。尻尾による、体内の浸食が進むほどに、もがき苦しむように暴れ、同時にその力までも上がっていく。


 それから目を逸らすと、トーリは胡坐(あぐら)の中に納まる(セミ)を見る。


「じゃ、そろそろ大変そうだし、セミちゃん、お願いねぇ」


 するとトーリが抱いていた蝉が、脂ぎった羽音を立てながら、暴れる〔巨大化したブレイン〕に向かって飛んでいく。

 〔巨大化したブレイン〕の近くまでいくと、蝉は、その巨大な手で、叩き落とされる。


 するとその瞬間、発動した蝉の〈カウンター〉が発動する。しかしその〈カウンター〉の威力は、〔巨大化したブレイン〕どころか、屋敷を含む周り一帯を巻き込み、クレーターを生み出す。


主人公の従魔

■蝉:セミ

・種族:蟲

・スキル:〈カウンター〉〈みがわり〉〈残機〉





カクヨム様でも掲載させていただいています

URL

https://kakuyomu.jp/works/16818093079582354496

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