5.なろうエッセイ・批判系エッセイ(過去作は検索除外しているのでこちらから)
エロ広告について、結論迷子なままに書き連ねる。
JAROってあるじゃないですか。あれってなんJAROと、少し思ったことがあります。
公益社団法人日本広告審査機構。広告に対する苦情や疑問点を受け付けて審査をして、問題がある場合は「厳重警告/警告/要望/助言」の4つに分類、広告主に注意喚起をするという組織。「ウソ、大げさ、まぎらわしい」という宣伝文句で有名な団体さんですね。
この「嘘、大げさ、まぎらわしい」というのは、広告の良否を判断する基準としては良くできていると思います。例えば「合体」というキーワードを強調しながら女の子のイラストを表に出して意味深に上下に揺らしてた某ビビットアーミーとか、ゲームとは全く違うホラーテイストの広告で有名になった某エバーテイルとかは、「ウソ」とか「まぎらわしい」に該当する広告だったのかなと。
現に、「2022年度の審査状況」(2023年6月20日)という資料には、『「オンラインゲーム」については、苦情が多かった複数のタイトルの苦情が減少した』みたいなことが書かれていて、確かに、あるタイミングであの手の広告は減ったなぁなんて思ったりもしています。
この審査状況の資料、半年に一度のペースで公開されてて、ふと思い出した時に見ているのですが、たまにこう、面白ケースみたいなのが載ってまして。
例えば、「ゲーム関連グッズ販売店のアドトラックに61件(未成年ユーザーが多いゲームなのに風俗店の求人あっせん広告を模した表現であることに不適切との苦情)」とかいう文章が書かれてて、「なるほど、パロディでバニラバニラ言うトラックをネタにしたのね」と笑わせてもらったりと、そんな感じです。
その、意外とあなどれないJAROの審査状況の資料なのですが。最新版となる2023年度上半期(2023年12月20日)の資料に、こんな文言が記載されるようになりました。
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2023年度上半期のトピックス
性的な広告表現への苦情
主に女性を性的に描いた表現の広告に対して、JAROには相当数の苦情が寄せられており、オンラインゲームと電子コミック配信が多くを占めている。
2019年4月以降の苦情を類推するキーワード(性的、卑わい、性表現など)で抽出すると件数は表のとおりで、4年半で計1,633件あった。媒体はインターネット1,137件、テレビ427件などであり、業種では電子書籍・ビデオ・音楽配信363件(うち電子コミック配信321件)、オンラインゲーム312件、化粧品98件、健康食品(機能性表示食品以外)77件、医薬部外品62件などとなっている。
「女性の卑猥な身体の広告は気持ち悪く不愉快」「こういった性的なものは年齢制限のないサイトでは出さないでほしい」「特殊性癖の性行為を載せた漫画広告はアダルトサイト以外に載せないでほしい」などと不快感や掲載場所に関して苦情が寄せられている。
このほか、子どもへの性的虐待や猟奇的な描写など残虐な表現についても苦情が寄せられており、インターネット上のオンラインゲームや電子コミック配信、出版物などが多い。
◇性的表現への苦情件数
2019年度 252件
2020年度 382件
2021年度 460件
2022年度 332件
2023年度 上半期 207件
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この文章を見たときの感想ですが、「とうとう来たかな」という感じが半分、「ちょっと意外かな」というのが半分といった感じでしょうか。
最近は、純粋に「エロい本をエロい本とわかるように、でも表示していけないところは隠す」みたいな広告の方が目立っていると感じるのですよ。その良否は置いておいて、それ、「ウソ、大げさ、まぎらわしい」とはちょっと違うよねと。売ってるモノがエロいだけで、広告としては正常の範囲内にあると、そんな感じでしょうか。
ホント、JAROってなんJAROなと。「ウソ、大げさ、まぎらわしい」を取り締まる所じゃなかったっけと、そんなことを思ってしまいました。
◇
エロ広告で経営が成り立っている、システムがそうなってる、だから「小説家になろう」がエロ広告を掲載するのは必要だ、そういう意見は理解できます。でも、それと「批判の是非」って、連動しないですよね。
……なろうエッセイでよく見るエロ広告批判って、そんなに攻撃的ですか? 私は、なろうで見るエロ広告批判って、そこまで攻撃的な内容には見えないんですよ。
そもそも、本当に「小説家になろう」の運営にエロ広告が必要かどうか、確定なんてしていないんですよ。もしかしたら、エロ広告無しで十分にやっていけるかもしれないじゃないですか?
それが判断できるような材料をヒナプロジェクトは公開していないと思います。だから、本当はどうなのか、いち利用者には判断のしようが無いことで、どこまで行っても、推測の域は超えないと思います。
――何か、「小説家になろうのマネタイズは現状のようにエロ広告を掲載する必要があるし、それが最善だ」というバイアスがかかっているのではないかな、と思います。
なろうの運営はヒナプロジェクトが自由にやればいい話で、その運営にエロ広告の掲載が必要だと判断したのなら掲載すればいい。でも、だからと言ってヒナプロジェクトの判断を常に受け入れて文句の一つも言ってはいけないなんてことにもならないはずです。「ここは良いけどあそこは駄目だよね」みたいなことを言う自由は常にあって、その自由はヒナプロジェクト自身が認めていると思います。
もし、ヒナプロジェクトにとってエロ広告批判が認められるような物でないのなら、ぶっちゃけ処罰の対象にしてしまえばいい。運営にはそれだけの力があるし、それが運営上必要な措置ならそうしてるかなと。ユーザーの自由を守ってくれるけど必要なナタはきっちり振るう、そんなイメージがなろう運営にはあります。
そもそもここは小説投稿サイトですからね。エッセイストの自由な発言なんて、そこまで大切でもないと思います。治安を優先して文句を言えなくしても、文句は言えないと思います。
同時に、エロ広告が必要かどうか、現実的かどうかに関わらず、最終的にエロ広告が表示されるような形でこのサイトを運営しているのはヒナプロジェクト自身です。その責任をゼロにすることはできないと思います。何かをすれば評価されることがあれば批判されることもある、そんなことは当たり前のことで、片方だけを選ぶことはできないですよね。感謝はいいけど批判は嫌だというのは、どこか歪だと感じます。
小説家になろうは良いサイトで、だけど広告はエロが多くて微妙だよねと、これ、そんなにおかしな感想でもないと思います。
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なろう側にどんな事情があろうとも、広告システムにどんな事情があろうとも、あの広告は、一般的には苦情が出てもおかしくない、批判の対象になりうるものだと思います。
なろうでエロ本の広告を表示して収入を得るというのは、見方を変えれば「なろうでエロ本販売ページの直リンを貼ってそのキックバックで運営する」とも取れる行為です。しかも、どの広告も、ユーザーの興味を引こうと超頑張ってます。
画面を切り替えてストーリーを見せたり、動いたり、チカチカ光ったり。凝った奴だとカーソルを上に持ってくると特別な動きをしたりと、忙しいことこの上ない。限られたスペースをフル活用して「エロ本買って!」と叫んでいるようなものです。
あんな全力でエロ本を売りにこられたら、そりゃあ「こんなところに表示しないで」みたいな苦情も出てきますよ。私もやめてほしいなぁと思いますし。それらを全て「運営するには金がいるから」で済ますのには、正直無理があると思います。
静かな図書館の中で寅さんがバナナを叩き売り始めたら「こんな場所で商売するな」になると思いません? もしそうなったら、追い出されても無理はないですよね。……同時に、無理はないけど、もっと穏便な解決方法として「静かにバナナを売る」という解決策も実はありますよね。そういう解決策を出さずに「図書館の中でいかにバナナを叩き売るか」「図書館からいかに寅さんを叩き出すか」みたいなことを論じたりするのは、ちょっと殺伐としすぎじゃないかなぁと。
エロ広告を表示してもいいかというのは倫理の問題で、広告費云々はお金の問題。お金がなければ運営できないのは事実ですが、インターネットという公共の場で広く開かれたサービスを提供する以上、守らなければいけない倫理だってあるはずです。
その場にあったやり方で商売できないかを考える、そういうのも倫理の内で、お金のことを考える際にも必要なことじゃないかなと。
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この「小説家になろう」というサイトは、かなり巨大です。いろんな人がいるし、微妙な人もいると思います。が、このサイトに愛着があるからこそ、エロ広告を表示してほしくないと思うことだってあると思います。
私が小説を書き始めて、始めて投稿したのが 2016年の7月。気がつけば7年以上の月日が経ちました。その間、いろんなことがありましたが、基本的には小説を書き続けて、今では確か100万字を少し超えたくらいまでになったと思います。
ここには、そんな数字が霞むほどの年数や文字数を重ねてきた人もたくさんいます。その人たちが、これまでどのくらい、これまで創作に注ぎ込んできたのか。体験しないと想像するのも難しいような、そんな「何か」を、小説を書く人の多くは注ぎ込んでいるんじゃないかなと思います。
愛着はね、あるに決まってるのですよ。このサイトが無ければ私は100万字も小説を書くことはありませんでしたし、このサイトにしかない人や作品にも出会えました。ぶっちゃけ生活も価値観も、私はこのサイトと出会うことで変化したと断言できます。唯一無二の、私にとって、ここはとても大切な場所です。
……それでもね、今のエロ広告に関しては、どうかしてると思うのです。事情はなんとなくわかりますし、それが「小説家になろう」側で完全にコントロールできる話でもないだろうとも想像できます。それでも、どうにかした方がいいと思うのです。
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小説投稿サイトの片隅で、思ったことを吐き出す。別に良いじゃないですか。ここの運営は、そういうことをしてもいい、そんな感じでこのサイトを運営してくれています。それは、私がこのサイトを好む理由の一つです。
どれだけ声高く「エロ広告、許すまじ!」「エロ広告、滅ぶべし!」と叫んだところで、こんな辺境の地の声で世の中は一変したりはしません。でも、そういう言葉から何かが生まれることだってあると思います。「許すまじ!、滅ぶべし!」が「こうなったらいいね」に変わることだってあると思います。
きっかけはどうであれ、言葉を紡いで、言葉が伝わるというのは、楽しいことだと思います。思ったことを一つ一つ丁寧に言葉にしていく、その過程で生まれる考え方だってあると思います。そういう「言葉と向き合う」行為には、言霊と対話するような楽しさがあると、そう思うことがありますが、どうでしょうか? ……これはちょっと脱線かなぁ(笑)
いろんな言葉が生まれていろんな言葉と戯れる、ちょっとぐらいカオスでも、そんな場所の方が私は好きです。いろんな発言であふれる、この場所がそんな場所であるといいなと思います。
……なんでこんな結論になったんだっけ? 確かに私はJAROだのエロ広告だのを論じていたはずなのに。おかしいなぁ(笑)
以下、本文中でとりあげたJAROの審査資料です。
2022年度の審査状況(HTML版)
https://www.jaro.or.jp/news/20230620.html
2023年度上半期の審査状況(HTML版)
https://www.jaro.or.jp/news/20231222.html
以上、参考までに。