8.第二王子
クライシスがくれたリンゴを見ていると、お腹の音が鳴った。
ククッとクライシスが笑う。
「やはり、お前も人間と同じなんだな。」
そうなのか?
この身体は人間と変わらないのかな?
黒い岩がちょっとついていて、見た目がちょっと怪物くらいなんだな。
いや、全然ちょっとじゃないけど。
「お前の名前はなんていうんだ?」
クライシスが訊いてきた。
「怪人岩いーわ…。です。」
「カイジン?怪物じゃないのか。いわいーわ…。お前の中身の名前はなんだ?」
「ヤマダA子です…。」
クライシスが黙った。
どうせ名前もパッとしないよ。
「お前は黒いからクロだな。俺のことは、アルジと呼べ。」
はぁ?
「この家には、風呂、トイレがあるから好きに使っていい。2階は俺が使うから入ってくるなよ。寝る時はそこのベッドを使え。詳しくは明日話す。」
クライシスが階段を上がって行った。
丸のままのリンゴをかじる。
リンゴが柔らかい?
いや、私の顎の力が強いのか。
3口で食べてしまった。
普通の人間じゃないなぁ…。
ま、なるようにしかならないかぁ…。
翌朝、ベッドで寝ていると顔や腕をペタペタ触られているのに気がついた。
目を覚ますと、眼鏡の少年と目が合った。
驚いて声が出なかった。
魔道具オタクの第二王子、ブラストだった。
ひぇぇ…。好きすぎる。
ブラストはにっこり笑って
「身体の一部の岩、ちょーだい。」
と言った。
私はフリーズした。
「…い、いやです。」
かわいい顔して怖いこと言う。
「だよねぇ。ふふ。」
見た目が少年なだけで、ブラストは大人だ。
自作した魔道具の腕輪で、見た目を変えているのだ。
「かわいい弟がさ、珍しく僕を頼ったんだ。たまには良いところを見せないとね。」
にっこりしている。
なんか怖い。
「左手を出して。君にプレゼントがある。」
怖いなぁ。
ゲームでこういう展開あったっけ?
確かにプレゼントのシーンはあったけど、こんな感じじゃなくて…。
うーん。
そんな私を無視して、ブラストは強引に私の左手首を掴んだ。
えっ?
カチッと音がした。
左手首に腕輪をはめられた。
「これ、僕からのプレゼント。ちなみに僕にしか外せないからね。」
怖すぎる。
にこにこしているし。