4.ちょっと思い出した
「とりあえず、お前は俺がいいと言うまで喋るなよ。」
クライシスが言った。
威圧感におされて私は頷いた。
「そのまま黙ってついてこい。」
クライシスが歩きだしたのであとを追った。
城内は真っ暗だったのに、まるでセンサーのように歩くとガス灯のようなものが灯った。
通り過ぎればまた、暗闇にもどっていく。
少し歩くと私の身長の倍の高さがある扉の前についた。
飾り彫りがしてあって、宝石らしきものが埋め込んである。
「ストーンドリーム国第三王子クライシスが参りました。」
目の前の扉が音もせず開いた。
「中に入りたまえ、許可するよ。」
先ほどの門前で聞いた声と同じだ。
「ありがたく存じます。」
クライシスが私を縛った光の縄を引っ張り、進み出した。
私はストーンドリーム国、と聴いて心臓がはねた気がした。
『ストーンドリーム国』というのに聞き覚えがあった。
私が前世?にクソゲーだと揶揄したものの舞台もストーンドリーム国だった。
確かあれは聖女が異世界から召喚されて、ストーンドリーム国の王子の誰かを選択し、一緒に魔王を倒しに行く話だった。
恋愛ゲームのはずなのに、まさかの皇子から…のバッドエンドパターンもあるんだよね。
攻略難易度が高めで、すぐゲームオーバーになったんだよね。
設定もヤケクソだったし…。
あの展開はクソだったわ…。
クライシスが止まり、私も慌てて止まった。
「お前はまた余計なことをしてくれたね?」
穏やかな声なのに、背筋が震えた。
「私は面白い事が大好きなのです。」
兄上、そうだ、クライシスには2人の兄がいる。
玉座の横にいるのが第一王子アレン
王様が病で倒れていて、それを隠しているのよね。
「王に会えなくて残念だが仕方あるまい。」
「明日になれば神殿から聖女が城に来るはずだった。
しかし召喚は失敗した、でいいね?」
おそらく神殿から使いの鳥がきたらしい。
確か鳥が聖女の召喚を伝えるから。
クライシスはくっくっ、と含み笑いをした。
「ところがこの怪物は、聖女なんですよ。」
「…なんだと?」
アレンはジロリと私を見た。
記憶のアレンは綺麗なブルーの瞳、髪型はショートで赤毛の髪。
慈愛に満ちた顔、イケメン、三兄弟で1番まともな…。
「兄上の石を怪物に向けていただけますか?」
石が聖女を光で指し示す、そういう話だったっけ。
「そんな、まさか…。」
アレンは手のひらから石を出現させて、私に向けた。
その石からレーザー光線のようなものが出て、私の心臓のあたりをさした。
「嘘だろ…。」
私だって信じたくない。
聖女って…怪人で聖女なの?
わけがわからない。
「俺が、こいつを使って魔王を討伐に行きます。
そのかわりにこいつの使い道は問わない、でいいですね?」
ニヤニヤしながらクライシスは話す。
アレンは長いため息を吐き、了承した。