3.強いやつきた
そんな目で見られても…。
こちらも被害者なんですよね、とは言えない。
静寂の中、上から爆発音が聞こえ、神殿の天井の一部から夜空が見えた。
神殿は一瞬でパニックになった。
バサっと重たい羽の音が聞こえ、目の前にはドラゴンらしき生き物がいた。現実世界で実物を見たことはなかったが。息遣いがきこえる。
「その怪物は俺がもらうよ!」
ドラゴン、ではなくドラゴンに乗った男が喋った。
上下黒の旅人みたいな服装。
顔は布で隠れている。
綺麗な長い金髪を、後ろでひとつ結びにしているっぽい。
「お待ちください、クライシス様!勝手をされては困ります!!」
大神官が叫ぶ。
「面白い夢を見た!その怪物は、どうやら俺に縁があるらしい。」
クライシス様と呼ばれた男が、右手の人差し指をこちらに向けて
「檻よ爆ぜろ。」
と呟けば、たちまち檻が砕け散った。
「ヘミング、そいつを連れて行く。縄を掴め。」
ヘミング、かわいい名前ね、と思う間もなく、今度はドラゴンに捕まった。
「お前を城へ連れて行く、悪いようにはしない、たぶんな。」
クライシスがにやりと笑った。
私に選択権などない。
「行くぞ、ヘミング!」
上空に舞い上がった。
神殿の屋根を越えると、うっすら街?が見えた。
月の明かりが街を照らす。
私は考えるのをやめた。
だって怖さしかないから。
時間はさほどかからなかった。
どこかの城の門前に降りた。というか、地面に崩れ落ちた。
「ヘミング、ありがとう。」
クライシスが声をかけると、ヘミングは一声鳴いて飛び立っていった。
「悪いがそのままお前を王の前まで連れて行く。」
クライシスが門番に王に会わせろとゴリ押し?している。
門番は困った顔をしながら、
「今日はお休みになっておられるので、誰も通してはいけないと命令されていまして…。」
「明日にはこの城がなくなっているかもしれぬぞ。
いまここで俺が燃やしてしまうかもしれないからな、かまわないぞ、俺は。」
ヤバいやつだな、クライシス。
笑っているよ。
突然門が開いた。
「かわいい弟の頼みだからね、開けてあげよう。」
中には誰もいないのに、声だけが聞こえた。
クライシスが、
「さすが兄上は話が早い。いくぞ、怪物。はやく立って歩け!」
私は慌ててよろよろ立ち上がった。