24.祈り
祈りの森の中心地に、魔王、アルジ、ケイ、私、ヘミングで歩いて向かった。
アルジに考えがあるらしい。
「クロ、俺を信じるか。」
「うん、信じるよ。」
アルジがニカっと笑った。
それはそうと、ケイが大人しくついてくるのが逆に怖い。
ニヤニヤしているし。
ほどなくして、魔王が封印されていた場所に着いた。
聖女の彫刻があり、祈りの様なポーズをしている。
彫刻の足元には魔法陣が書いてあり、それは、真ん中から割れていた。
よく見ると、誰かが魔法陣をいじった後があった。
アルジがその魔法陣の上に立ち、新たに魔法陣を錬成し、こちらへ手を伸ばしてきた。
「来い、クロ。」
私はその手をしっかりつかんだ。
アルジが呪文を唱えると、アルジからは真紅の石が、私からはグレーの石が、浮きながら出現した。
それらの二つの石が混ざり合って、一つの石になった。
こ、これは何色なんだろう?
アルジがその石を手に取った。
「クロ、お前はさっきの祈りで 2回願った。神を呼ぶ、と…お前のことだから、魔王のことか。あと一回、祈りの力が残っている。」
石に数字の1が浮かんでいる。
「え、で、でも神様はもういないんじゃない?」
「キッド(ケイ)がいる。あんなんでもな。」
「ちょっと酷くない?」
ケイが文句を言った。
「魔王復活後に戦いで亡くなった魔物と人間を蘇らせたい。あと怪人もな。出来るか?キッド?」
「僕は悪戯の神様だよ?出来るわけがないよ。」
ざ〜んね〜ん!とケイが笑った。
アルジがふむ、と言った。
「それよりも、この石の使い方を知っているか?クロ。」
え?急に質問されても、え、えーと。
「石を融合する方法は知らなかった。ごめん、分からない。」
「俺もだ。だが、閃いたんだ。よみの石とは黄泉の石。力が足りないから、封印になった。なら逆に蘇らせることも出来るんじゃないか?俺の石の効果が何かしらあるはず。」
どうだろうか?でもやってみる価値はあるか。
簡単には諦めたくないもん。
「そんなこと無理だよ。聞いたことない。」
ケイが呆れている。
「私は何をしたらいい?」
アルジに訊いてみた。
「全力で祈れ。そして叫べ。やってみろ。」
アルジが私に石を手渡した。
「私にも何か出来ないだろうか?」
魔王が、私の手のひらにある石の上に手を乗せた。
突然、石が一瞬、光を放った。
魔王が手を避けると、石が透明になっている。
な、なんで?
「石を強化をしてみたのだ。」
「あ、ありがとう。」
でも腰に手を回しているのはなんで?
アルジがまた不機嫌になって、間に割って入ってきた。
「早くやれ、クロ。」
「う、うん。」
私は頷いた。
石を両手で挟み、手を組んだ。
目を閉じて、深呼吸。
準備はいいか?
いわちゃんの声が聴こえた気がした。
うん、いいよ。
「この戦いでなくなったもの、みんなを無傷で蘇らせてください!!神様、よろしくお願いします!!!」
祈りと共に大声で叫んだ!!
石から湧き出る光の洪水が、天へとのぼっていった。
そして、ケイも光を帯びている。
「な、何これ?どういうこと?力が勝手に放出されちゃう!」
ケイが焦って、心底嫌そうな声を出した。
「初めて聖女の信仰の対象になり、この国の神に選ばれたのだ。もう悪戯は出来ないだろうな。」
「はぁ?ふざけるな!!それに、蘇りはできない。時間が巻き戻るだけだ。その間の記憶は全部なくなるはず。例外なくあなた達もね。ああ、厭だ。どうして僕がこんなことを。面白いものが見たかっただけなのに。結局ループと変わらないじゃないか。」
ケイが腹を立てている。
「それはどうかな。希望を捨てなければチャンスはある。また会おう、クロ。俺はお前を忘れない。お前を探しに行く。だから…浮気するなよ?」
「アルジもね。」
春の日差しのような暖かな光が世界を包んだ。
大丈夫、きっと。
理由はないけど。