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今日から怪人ですか  作者: ねむたいからのねこ
23/25

23.急展開

今、祈りの森にいるのは魔王、ケイ、私だけだ。

ヴィルトシュバインもいなくなった。


「それじゃあ魔王の勝ちで終わりにしようか。」

ケイが呑気な声で言った。


「私はもう嫌だ。この世界を、ループを終わらしたい。私の存在自体を消してくれ。」


魔王が頭を抱え、膝から崩れ落ちた。


「うーん、僕には無理かなぁ。僕も神様の端くれだけど。この世界の強制力が強すぎるんだよね。プレイすることは出来ても、物語を破壊することはできないなぁ。この世界の神様に頼んでみるしかないかなぁ。やってくれるかはわからないけどね。」


ふと思いついた。

アルジは神様の加護を受けている。神の愛し子だ。

アルジの頼みなら聞いてもらえるのではないか。


「わ、わ、私に考えがあります。アルジをここに呼びだしましょう。」

私は手を挙げて喋った。

心臓がバクバクしているし、冷や汗がすごい。


「その必要はない。」


バサッバサッと羽音が上空から聞こえる。

あ、あ、あ、あ、あ、あ…アルジ!!!


「な、な、な、な、な、な、なんでぇ。」

アルジがヘミングと一緒に…。


「ヒーローは遅れてやってくる、というだろう。」


え、この世界にヒーローという概念があるの?

ちょっと分からないツッコミを心の中でしてしまった。


「お前、クロか?間抜け面だな。」

ククッとアルジが笑った。


「記憶があるの、なんで?バグが消したはず。」

ケイが言った。


「神の強制力が薄れたからな。城まで身体は飛ばされたが、記憶は削除できなかったみたいだな。」


アルジが魔王を正面から見た。


「俺もこの世界が嫌いだ。新しい時代が必要だと思う。魔王、お前を俺が救ってやる。クロ、協力してくれ。悪いようにはしない、たぶんな。」


魔王に嘘は通用しない。

アルジの本心だ。


私は二つ返事をした。


「神を呼び出す。クロは、神がここに来るよう祈れ。俺がいいと言うまで、絶対目を開けるな、絶対しゃべるなよ、いいな。お前に知能があればな。」


「わ、分かったよ。」


私は手を組んで目を閉じて、神様がここに来ることを願い、祈った。魔王を救うことも祈った。

アルジが、私の両手を握りしめた。

温かい力が流れ込んできた。

大丈夫、絶対大丈夫だ。神様は来てくれる。魔王も救われる。




「クライシス、お前の声が聞こえたよ。私が必要なのね。」


女性の声だ。神様が来たらしい。女神様なのかな。


「キッドと魔王、もいるなんて。どういうことかしら。」


わ、私も一応いますよ。

心の中で呟いた。


「この世界のループを終わらせてください。魔王や俺達を解放してください。お願いします。」


アルジが神様に願い事をした。


「いいわよ。」

呆気なく神様が言った。


よ、良かった、そう思った途端、

「でもね、代わりが必要なの。この世界には絶対悪が必要なの。でないと、私が消滅しちゃうのよ。」


い、意味がわからない。


「消滅するとどうなるのでしょうか?」


「わからないわ。経験がないもの。」


な、なんだそりゃー。


アルジが閉口した。



「みつけた。みつけたぞ。」

ギャー!アイツ、また来たよ!

蜘蛛人間…。


「なぁに。バグ。お前を呼んでいないわよ?」


「僕が呼んでみたよ。バグは、何かを消さないと帰らないからなぁ。困ったなぁ。」

ケイの声が弾んでいる。


「この場に相応しくないのは、神、様。消えてもらいます。」


「な、何言ってるの!?お前を造ったのは私なのよ。」


「無駄だと思うなぁ。だってバグだもん。」


「いや、いやよ。消えたくないぃ。お願いクライシス、たすけ…。」


神様の声が聞こえなくなった。


「クロ、目を開けていいぞ。」


目を開けると、至近距離にアルジがいた。


「ち、近すぎます。」

慌ててアルジを両手で押しのけた。


「神様はどうなったのですか?なんで、ケイがバグを呼んだのですか?バグはなんで…。」


「さあな。もう、ループはしないと思うが。」


「ブラストやいわちゃんにもう会えないのかな…。魔物だって、分かり合えたかもしれない、マオのように。」


「魔王はこれからどうするんだ?」

アルジが魔王に問いかける。


「わからない、が、ひっそりといきたい。」


「アルジ、俺が救うって言ったよね。魔王のこと、助けて。」

アルジは黙っている。



突然、魔王が私のことをぎゅうぎゅうにハグしてきた。

え?脈絡あった?

「クロ、お前は嘘をつかないんだな。変なことは考えるみたいだが。」


え?ちょ、ちょっと待って、バラさないで。


「変なことって何だ?」


え?な、何?何でアルジが不機嫌になるわけ?


魔王が唐突に私の顎を掴んで、接吻をしてきた。

な、な、な、なんで?

脳内がパニックになった。

が、アルジが無理矢理、私を引き離した。


「この、浮気者!」


え?な、何で?

怒ったアルジが、私の後頭部を掴んで接吻をしてきた。

逃げられない。

心臓が破裂しそう。

私が一番好きなのは…愛しているのは…アルジだ。


















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