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今日から怪人ですか  作者: ねむたいからのねこ
22/25

22.凶事

確か、祈りの森の中心に魔王が封印されていたのだ。

彼が移動していなければ、今もそこにいるはず。


フントは、魔王と話し合うことは出来ないはず、と言った。

しかし、ヴィルトシュバインは話し合いたいと魔王が言ったと…。


恐怖で足がすくむ。

連鎖したのか、ヴィルトシュバイン以外のみんなが止まる。


「フランメ、君はここで待っていてくれ。」

ブラストが馬から降りた。



「おまえたち、よろこびなさい。まおうさまがじきじきにこちらへきましたよ。」

ヴィルトシュバインが言った。


会いたくない、恐怖が込み上げてくる。

顔を上げることができない。


城の騎士団が大勢いるはずなのに、声が全く聞こえない。1人も会わないのはおかしい。

数え切れないほどの足跡はあるのに。

そんなことはありえないのに。


「ここにきた騎士団なら、一人残らず消えてもらった。こっちも魔物を大勢やられたんだ。文句はないだろう。」


魔王だ。


圧倒的な力の差があるのは、戦わなくても分かる。


魔王は思考が読めるんだった。


「数百年前の聖女は問答無用で私を封印してきた。封印を免れた一部の魔物を飼い慣らして、魔石を生み出して…相変わらず、人間は醜い、なぁブラスト。」

驚いてブラストを見た。

ブラストに関係があるの?


「なんのことかわかりかねます…。」

戦慄している…。

今、恐怖がこの場を支配している。


「私は嘘つきが嫌いでね。お前とは話し合えない。」


魔王が右手を払うと、ブラストが消えた。

一瞬の出来事だった。

頭が真っ白になった。


「お前達は思い合ってはいなかったんだな。」

淡々と魔王が言った。


「今回は、私を封印することは出来ないようだ。この世界を滅ぼせば終焉だろうか?このループから抜け出したい。」


魔王の声に感情がない。


「お前達もブラストの後を追うだろう。次はそこの男だ。怪物のお前は最後を見届けろ。」


「ふっざけんな!!貴様の言う通りになんかならん!!」


いわちゃんが激昂して、腕を前に出し両手を魔王にかざした。

「どうやらオレも『せいじょ』らしい。」


その声を合図に、無数の光る黒い石が魔王めがけて飛んでいった。 


魔王の顔を見ると、仮面を被っていた。

表情が分からない。


魔王は微動だにせず、石を弾き飛ばそうとした。

しかし、それは叶わずに命中していた。

「うぐっ。」


魔王が初めて感情をだした。



「くっ、あははは。お前、なかなかやるな。そんなにその男が大事か。なら…一緒に消してやる。」


いわちゃんが更に光る石の数を増やして飛ばした、と同時に、地面に落ちたリュックから剣を引き抜き、

「最大出力!」

と叫び、魔王に放った。


魔王は避けなかった。

むしろ、すべてを受け止めようとしているように見えた。


魔王は剣を受け止めた。

「半分だけだ。完全体じゃない。お前たちは紛い物だ。」


魔王の仮面が割れ落ちた。

ゲームでは素顔が見られなかったが、まさかここで見られるとは。


不謹慎だが、イケメンがすぎる、と思った。

黒いサラサラのショートの髪の毛、色白、可愛らしい二重、大きな口、綺麗な肌質…綺麗な筋肉…ツボすぎるだろ!!

神様、どうして彼は魔王なんですか!!

いや、落ち着け、魔王は、魔王は、ブラストを消したんだ。

許せないよ!!(早口)



いわちゃんが苦しそうな顔をした。


私が祈りをしようとしたら、いわちゃんに止められた。

いわちゃんの手には、真っ黒の石が握られている。

な、なにこれ?


「クロ、これを飲み込め。これがオレの石だ。お前の石と一緒になれば、完全体じゃないか?一か八かだけど。」


オレの石?


「『せいじょ』ってやつは『よみの石』を持っているんだろう?オレの身体、この身体に生まれたんだ。念力で取り出してみた。」


「やはり、いわ様は聖女様だったのですね。」


ジークが頷いた。


魔王は沈黙している。


石を、の、飲めるのか?

いわちゃんの目は真剣だ。

圧がすごいので、石を口に入れた。



「無理だろうなぁ。だってクライシスがいないもん。」

ケイが再び現れた。

やはりまた来たか。


魔王がケイに向かって剣を振り下ろした。

動きが素早くてよく見えなかったが。


思わずごくん、とした。


「無駄だって。前回も無理だったでしょう?」

ケイが剣を避けた。


「ケイ!!貴様!!オレの身体を元に戻せ!!騙しやがって!!」


ケイがいわちゃんを見た。

「しっつこいなぁ。分かったよ。」



身体から魂が無理矢理引き離された。

私の魂は聖女の身体に入り、いわちゃんは、いわちゃんだった身体に入った。

魂の交換が終わった。



「これで満足でしょ。今回のプレイヤーはつまらなかったなぁ。」

ケイがぶつぶつ言った。


「とりあえず、外野は消えてもらおうか。」


ケイが、パチンと手を叩いた。


いわちゃんとジーク、フランメが消えた。


「安心して。次の周回では生きてるからさ。このゲームのものならね。」


その言葉にゾッとした。

















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