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今日から怪人ですか  作者: ねむたいからのねこ
21/25

21.もうすぐ

気がつくと、ふとんに寝ていた。

テントの中にいるらしい。

助かったのか、私は。

ブラストが横にいた。

私の右手をブラストが握りしめている。


「ブ、ブラスト?」

声をかけると、ブラストがこっちを見た。

「よかった、クロ…。」


目が赤い。

心配してくれたのか。


「抱きしめていい?思いっきりハグしたい。」

ブラストに訊かれて驚いたけど、頷いた。

友達だって、ハグするもんね。


上半身を起こそうとすると、止められた。


「無理しないで。僕が言うのも変だけど。」


ブラストが私の横に寝そべって、ぎゅうと抱きしめてきた。


私もお返しをしたくて、抱きしめ返した。


「クロ、ちょっと痛い。力緩めて。」


「ご、ごめん。」


慌てて手を離した。

 

ははっ、とブラストが笑った。


ごほん、とテントの外から咳が聞こえた。

ブラストはハグをやめて、起き上がった。


「もう、いいよな、オレ、我慢したよな。」

テントの出入り口が開いて、いわちゃんが入ってきた。


いわちゃんは無事だった!


いわちゃんの後ろには、神殿で会ったあの神官がいた。

テントに入ろうとはしないっぽいけど。



「クロの身体をちょっといじらせてもらったよ。核が無事なら自己再生ができるんだ。魔物と一緒とかうけるよな。」

いわちゃんが自虐的に言った。


「いわちゃん、どこにいってたの?消えちゃったのかと思った。マオが、ケイに…。」


言葉に詰まった。


「気付いたら神殿にいた。不可抗力だろ、こんなん。ケイに会ったんだな?何もんだよあいつ。倒したわけじゃないよな?」


「よく分からない。いわちゃんの身体に私の魂を入れられたんだよ。アルジが『キッド』って言った人物かもしれない。マオがケイに噛みついたら、消えたんだ。」


「オレはケイと賭けをして勝ったら強くしてやる、と、言われて勝ったのに、身体を奪われて、この人間のなかに入れられちまった。」


さっきから気になる。

いわちゃんとあの神官の関係を。

「ところで、あの神官といわちゃんどういう関係?」


「ん?相棒だよ。ジークが責任とるってうるさいけど。」


「え?なんの責任?」


「まあ、訳あってな。」


話を逸らされてしまった。


そういえば、フントはどうなったのだろうか?

「フントはどうなったの?」

ブラストに訊いてみた。


「ジークが…。」

苦虫を噛み潰したような顔をした。


何も知らなかったんだ。

仕方ないのかもしれない。

魔物は人を襲うものだと刷り込みされてきたのだ。

すぐには分かり合えないのかもしれない。

心が痛くなった。


「最後の魔物、ヴィルトシュバインに明日会いに行く。クロ、君の祈りが必要なんだ。いいかい?」


「うん。」


「オレがクロを援護してやる。ジークは帰りたければ、勝手に帰れ。」


「ここまできたら、いわ様と一蓮托生です。嫌と仰られても、一生ついていきますから!」

テントの外でジークが叫んだ。


重いよ。

ジーク、重すぎるよ。


「ジークさん、テントに入ってください。」

とりあえず、中で話そうか。




朝になって、朝食をみんなで食べた。

パンを食べると涙がでてきた。


アルジが用意したリュックには、必要なものが全部入っていた。


テントを畳み、リュックにしまった。


フランメには全員は乗れないから、ここからは徒歩になる。

ブラストは王子なのだから、乗ったらいいのに。

多数決でブラストがフランメに乗った。


道中はみんな無口だった。



しばらく歩くと、ヴィルトシュバインがゆっくりと現れた。

「せんそうはおわりだ。もうじゅうぶんだろう。

まおうさまがおまえらにあいたがっている。ついてこい。」


ヴィルトシュバインが向きを変えて

「こい。」

ともう一度言った。


私達は黙って後に続いた。


祈りの森の入り口。

昼間なのに、うす暗い。

木々の隙間からさす光は頼りない。


この森はとても広大だ。

迷ったら出てこられないかもしれない。

普段は人が入らない。

神殿の毎月の祈りの日の時だけ、出入りがあるらしい。


魔王に近づくにつれて、空気が変わっていくのかもしれない。

鳥肌がとまらない。

会いたくない、本能が叫んでいた。







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