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今日から怪人ですか  作者: ねむたいからのねこ
20/25

20.とばされた

今から少し時間を遡る。


宿のベッドはそんなにふかふかしていなかった。

むしろ、ぺたんこだった。

がっかりはしていない、オレはそんなことに拘ったりしない。



クロが心配だが、まぁ、不埒なやつはいないだろう。

なにかあれば、助けに行かなくては。

本当は一緒の部屋が良かったが。


自分の身体のあだ名なんて、気持ちわりいが仕方ない。


ベッドに入るとすぐに眠りに落ちた。


目が覚めるとふかふかベッドの中にいた。

こいつは素晴らしいベッドだ。オレはこのベッドを知っているぞ。

これは神殿の…。


そんなわけがあるか!


意識が覚醒して、飛び起きた。

部屋の扉を開けて廊下に出て叫んだ。


「おーい!!誰か!!誰かいないか!?」

声を聞いたジークが駆けつけてきた。

「い、いわ様!?どうしてここにいるのですか!?他の皆様はどうされたのですか!?」


イライラしてジークを蹴り飛ばしたくなった。

「オレだって分かんねーよ!でも、絶対良くないことが起こっているはずなんだ。頼む、オレを連れて行って欲しい。」


ジークは、困った顔をして黙っている。

そんなに、だいしんかん、って奴が大事かよ。


「貴様の選択肢は2つだけだ。オレの言うことを聞くか、それとも今すぐこの世界にお別れするか、だ。」


オレの力は完全ではないが、ジークを屠ることなどわけない。


お願いだ、目の前の人間の力が必要なんだ。


一部始終を見ていたルークが、声をかけてきた。


「それはこの世界に関わることなんでしょうね?」

ルークが眼鏡をクイっと指で持ち上げた。


「当たり前だろ!!お前でもいい。頼むよ。」


「私の言う通り行動できますか?出来なければ諦めてください。」


え、なんかこいつ偉そうだな。

しかし選んでられるか!

「分かった。頼む。」


「伝承で読んだ話を試してみましょう。ジーク、いわ様と両手を繋ぎなさい。」


ジークが真っ赤になって狼狽えた。

イライラして、オレから手を繋いだ。


「いわ様は、目的地を頭にイメージしてください。ジークは、いわ様に接吻をしてください。」


「き、貴様、ふざけているのか!?」


「ふざけていません。いわ様は約束を反故するのですか?」


ぐぐぐ、堪えるんだ。


「さっさとやれ!ジーク!」


「は、はい!」


オレは目を閉じてジークの接吻を待った。

数秒待って、やっと…。


「神の加護がありますように。」

ルークの言葉が聞こえると、身体が強烈な力で引っ張られた。



「愛の力がないなら、辿り着けないよ。」

ルークがぽつりともらした。



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