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今日から怪人ですか  作者: ねむたいからのねこ
17/25

17.異変

身体が聖女、外側聖女のいわちゃんと、一緒に行動することになった。


「おい!アルジ!オレの身体に指一本触れるなよ?触ったら貴様を◯るからな!」


アルジがこっちを見た。

「俺は別に構わないが。」 


流れ的にはよくないのかも。

「私が魔物に襲われて、手に負えない時は助けてほしい…かな。」


いわちゃんが憤慨した。

「オレの身体はそんな弱っちくねぇよ。岩を全方位に飛ばせ!ダメならオレが守ってやるよ。泥舟にのったつもりでいな!」


そ、それ、助からないやつ。

大船じゃないの?怖いよ。


アルジを見ると、肩が震えて、くっくっと声を押し殺している。


側から見ると、少女が怪人を守ってやる宣言してる風に見えるよね。シュールだ。

アルジとのキスだって、人間と怪人のキス…。

思い出して叫びたくなった。

アルジは私のことなんか1ミリも好きじゃないくせに。

ゲームの強制力のせいで一緒にいるだけ…。

あれ?でも、だいぶゲームの流れと変わってきていないか?


「あの、アルジ、ひとつ気がついたのですが。」


「なんだ?」


「私が知っている世界と色々変わってきています。まあ最初から変だったけど。王子が2人も行動するのもそうだし、12の魔物は一体ずつ現れるはずなのに。だから油断して噛まれてしまったのですが。」


さっきまで私の肩に乗っていたマオは、上着のポケットの中で寝ている。

お気楽なやつ。


「俺も不可解なことがある。神の強制力が薄れてきている気がする。」


「どうでもいいから、さっさと行ってさくっと魔王を封印しようぜ。ブラストが魔物を倒してるんだったら早く終わるだろ?」


いわちゃんがぶーぶー文句を言った。


いわちゃん、可愛いよね。

こんな可愛い子なら、アルジも惚れちゃうよね。

アルジもいわちゃんとキスしたかったよね。


「なんか自分にジロジロ見られるの、むずむずするなー。なんだよ、なんか文句ある?」


いわちゃんに言われた。

あっ、ダジャレみたい。


「いわちゃんとアルジならお似合いなのに。」

うっかり心の声がもれた。


「きっしょいこと言うな!!オレにそんな気はない!!アルジ、貴様、オレに近寄るなよ?」


心底嫌そうな顔をしている。


「俺はクロの方がいいが。」


アルジの一言で心臓がドクンとはねた。


絶対好きじゃないくせに。

男性に耐性がないから…心拍数がアホになっちゃったよ。


「おや?魔法のレベルが上がったみたいだ。」


アルジのやつ、わざとだろ!

そのニヤニヤ顔やめろ!


次の街に着く頃には、夕方になった。


たぶん、ハーゼが現れると思うけれど。

「宿に泊まるか。」


あっ、野宿じゃないんですね。

ゲームの時は、どうだったっけ?覚えてないや。

アルジが、さくっと宿を見つけて2部屋借りた。

これ、どういう部屋分けにするの?


宿の主人が私の姿をみて腰を抜かしたが、アルジがこういう病気なんだと説明した。


納得してもらえた。

え?いいの?ってか腕輪で変身すればよくない?


「いつ魔物が来るかわからんから、そのままがいいだろう。ブラストもこの宿に来るしな。」


えっ、そうなの?


それから一刻もたたずに、ブラストが宿に着いた。

「ハーゼ、ドラッヘ、シュランゲ、プフェーァト…シャーフ、アッフェ、ヴォーゲル…まで倒したよ。あと2体かな?」


ブラストの服にはあちこち血の染みがついていた。

腕の止血をしたみたいで、余裕そうに見せているが、実際は相当痛いだろう。


「ちょっと手こずったのもいるけど。」


ふふ、とブラストが笑った。


見ていられなくなって、ブラストの両手を握り、神に祈った。

「神様!ブラストを回復させてください!お願いします!!」

必死に心の中で叫んだ。

真っ白の光がブラストの全身を包んだ。




ブラストが腕の切り傷を確かめると、塞がっていた。

体力も魔力量も回復したらしい。


ブラストが興奮して、力強く抱きついてきた。


「ありがとう!クロ!!」


やはりブラストは大人でも可愛い。

「どういたしまして。」

えへへ、と照れた。



にこにこ笑うブラストに、急にキスをされた。


え?


く、くちびる?


いわちゃんが、呆気に取られている。


アルジは?無?


マオ、は、こっちを見てない。


え?マジですか?

尊し?

え?天国?なに?これはご褒美ですか?


「もう一回する?」


ブラストに訊かれて首を横にぶんぶん振った。

そんなの失神してしまう。


我に返ったいわちゃんが、ブラストに蹴りを入れた。

「変な真似をすんじゃねー!それはオレのだ!」


正確には『オレの身体』ですよね。



部屋割りはもう一つ部屋をかりて、

アルジとブラスト

いわちゃん

にした。


ブラストが乗ってきた赤い馬は、外に繋がせてもらった。マオも一緒だ。


馬は、魔物が近づけば知らせてくれる。

マオの顔を見た時は、めっちゃ怒っていたけど、なんか仲良くなってるし。


その時は、大丈夫だと思っていた。

でも、この世界に絶対というものはなかったんだ。







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