15.3番目
ここは城下町から少し離れた街みたい。
街の住人と合わないですんでよかった。
パニックになるもんなぁ。
ゲームでは考えたことなかったけれど。
このあと10の魔物に出会うだろうなぁ。
アルジが先に歩き出した。
「ヘミングは呼ばないのですか?」
「怪物と魔物を乗せたくないだろう。」
アルジは鼻で笑った。
それを聞いた、私の肩に乗っているマオスがゲラゲラ笑った。
焼いてやろうか?
また変身できるか分からないけど、とりあえずこの恰好の方が安全かもしれない。
ナイフが入ったベルトが、大きくなっているのに気づいた。
大きさ自在なんですか!!
あっ、腕輪もか。
「退屈しなさそうだ。もう次が着た。」
えっ?進行方向には…ティーガー!!
ほぼ虎だ。
黒い虎!怖い!怖い!
アルジがリュックから剣を引き抜いた。
ノールックで右手をリュックにかざすと剣がでてくるって、すごいね。
いやいや、今はティーガーだ。
アルジが剣を構えている。
「おれ、あいつきらい。」
マオスが呟いた。
「ネコだからか?」
アルジ、煽るのをやめてください!
ティーガーは、挑発されたのが分かるのか怒りが見える。
ティーガーがアルジに飛び掛かった。
アルジも剣で応対する。
ティーガーが咆える。
青い焔が、アルジを襲う。
避けると、近くの民家に焔が飛んでいってしまう。
私は思わず、神に祈った。
「神様、よろしくお願いします!!」
青い焔が消えて、ティーガーが悔しそうな顔をした。
ふと、思い出した。
ゲームだと、祈りが使えるのは1日3回までだった気がする。
え、あれ?もしかすると、今日あと一回使ったら、
終わりじゃない?
みんなを仲間にすることはできないのか。
そもそもゲームでは、魔物を仲間にするという選択はなかったはずだ。
アルジが容赦なく、ティーガーの核を破壊した。
ティーガーが魔石に変わり、それをアルジが淡々と拾う。
魔物って、悪なのかな…。
「おい、変な気を起こすなよ?」
アルジが言った。
「変な気ってなんですか?」
「魔物に思い入れるのは止めろ。こいつらは人間とは上手くやれない。マオスは強い奴につくだけだ、仲間じゃない。」
マオスが慌てた。
「アルジさま、おれ、ぜったいいいしごとするよ!みすてないで。クロもなんかいってー。」
私は呼び捨てか。
まぁ、別にいいけど。
「腹が減ったお昼にするか。」
少し歩いた所に見晴らしがいい丘があった。
アルジがリュックからシート、おしぼり、水筒、ラッピングしてあるサンドイッチを出した。
「おれのぶんは?」
マオスがちょうだいと前脚を出した。
面倒くさそうな顔をしながら、チーズの塊らしきものを投げた。
マオスは目を輝かせた。
「ありがとうと言った方がいいんじゃない?」
わたしがアドバイスすると、
「ども!」
と明るく言った。
「そういえば、君の名前って何?」
私はマオスに尋ねた。
「なまえなんてないよ。おれは、まおすだもん。
べつにふべんじゃないしさ。」
うーん、でももし、別のマオスと遭遇したら不便だよね。
「じゃあ、マオは?君の名前はマオでいい?」
「おい、余計なことをするな。愛着が沸くと面倒だろ。」
「おれのなまえは、まお だ!あれ?まおうさまとにてない?ま、いいか。」
「とりあえず、飯を食え、座れ。」
アルジが、やっぱり面倒くさいという顔をした。