14.1番目と2番目のやつ
ヘミング(ドラゴン)に乗り、いきなり祈りの森へ向かうつもりらしい。
アルジに手伝ってもらい、ヘミングに乗せてもらった。
ヘミングを撫でながら、
「よろしくね、ヘミング。」
というと、ヘミングが鼻息で答えた。
後ろにアルジが乗った。
か、か、体が密着している…変な汗が出る。
男性と付き合ったことがないのに、こんなイケメン耐えられない。
なんか、いい匂いするし。
イケメンってやつはいい匂いがするのか?
いやいや。
そんなわけない。
「飛行中は喋るなよ。口を閉じておけ。
行くぞ、ヘミング。」
ヘミングがひと鳴きし、飛び上がった。
祈りの森まで徒歩だったら、かなり時間がかかるはずだった。
途中で魔物を倒し、アイテムを手に入れたりして、武器を強化したり、恋のイベントが発生するはずだったのに。
現在は騎士団が魔物が街に行かないように食い止めているはず。
そこから逃れた魔物が、なんだっけ?
「マオスとオクセか!?」
アルジが突然言った。
そうそう、マオスと、え?
「魔物がもうここまで来ているのか。離れて降りるぞ、ヘミング!」
やばい、ゲーム通りか。
1番目と2番目の魔物。
キャラデザ担当の方が、ドイツの大ファンで、ドイツ語と十二支を掛け合わせた奴。
思いつきすぎるだろ!
え、てことはここから魔物退治になるのか。
できるのか、私に?
マオスはねずみ、オクセは牛がモチーフになっている。
しかし、全然可愛さがない。
オクセの肩にマオスが乗っている。
「クロ、自分の身は自分で守れよ、俺はあいつらをさっさと倒してくる。」
アルジの手には、いつの間にか弓が握られていた。
アルジが弓を構えると、光の矢が現れてそれはたちまちオクセ目掛けて飛んで行った。
矢がオクセの核に刺さり、オクセの姿は消え、代わりに魔石が現れた。
この時代の魔石は、鉱石を加工したものが流通している。
この国で魔物から取れた魔石が手に入ったのは、前回の魔王封印以来ではないか?
表向きはだが。
魔物魔石の価値は、計り知れない。
マオスが逃げたが、アルジが次の矢を放った。
さくっと仕留めた。
マオスは魔物魔石へと姿が変わった。
先ほどの魔石よりも小さい。
アルジが魔石を2つ拾い上げた。
「伝承通りだな。」
アルジに駆け寄ろうとすると、左からマオスが現れて、腕輪を噛まれてしまった。
ガチンと音がした。
もう1匹いたのか!!
「ぎゃあ!!」
私は悲鳴をあげた。
マオスがさらに攻撃をしてこようとしたその時、
腕輪が一瞬光った。
私はまたあの姿になったらしい。
そう、怪人岩いーわの姿。
「大丈夫か!?クロ!!」
アルジが叫ぶ。
大丈夫かどうかは分からないが、マオスを無意識で掴んでいた。
「これ、どうしよう…。」
私の両手の中でマオスがブルブル震えている。
よく見ると可愛いかもしれない。
ちょっと邪悪な顔しているけど。
アルジが何かを思いついたらしい。
「おい、クロ、ちょっとそいつに祈りをかけてみろ。」
ええ?
「出来るかどうか分かりませんが…。」
「いい、さっさとやれ。単純に見たい。」
ええ?祈りのやり方は知らないけど、とりあえず目をつぶって、神様に一任するか…。
私は目を閉じて、
「神様!よろしくお願いします!!」
と心の中で叫んだ。
数秒経って目を開けると、手の中にいたマオスはつぶらな瞳でこっちを見ていた。
邪悪さがなくなっている。
え?どういうこと?
「じろじみんなよ、くろいやつめ。さっさとはなせ!」
え?喋っているし、口悪い。
な、なんだ。
「ふん、おまえらのなかまになってもいい。」
「燃やすか?」
アルジがぼそっと言うと、マオスが慌てて
「なかまにしてください。」
と媚びてきた。
「クロの好きにしていい、ただ俺はそいつに触りたくない。」
マオスがうるうるした瞳で見つめてくる。
「絶対、人を襲わないと約束できる?」
「おまえ、ひとじゃねーじゃん。」
うっ、痛いところをつくな。
「人と私を襲わないと約束しないと無理だからね!ね!」
「わかった。おれ、うそつかない。」
マオスが必死に頷いた。
「破ったら燃やす。」
アルジが興味なさそうに言った。