13.いわ視点
このベッドはいい仕事をしている。
オレが使っていたものより素晴らしく良い。
この身体が貧弱なのか、それとも人間とは長い睡眠が必要なのか。
とにかく眠い。
それとも昨日、慣れない身体で念力を使ったからか?
「いわ様、朝です。起きてください。」
人間の女が困った声で言った。
これで3回目だ。
分かっている、が動けない。
なにやら廊下が騒がしい。
1人がこの部屋へ向かってくるらしい。
昨日の男だ。
足音で分かる。
筋肉質な男で、女慣れしてない奴。
扉を3回ノックされて、
「いわ様、扉を開けてもよろしいでしょうか?」
と訊かれた。
「かまわねーよ。」
掛け布団にくるまったまま返事した。
「失礼いたし…いわ様どうされました!?お加減がよろしくないのですか!?」
「ねみーだけだ、すぐ起きる…なんだ?」
男はひとつ咳をしてから話しだした。
「いわ様、先ほど書簡が届きまして。
いわ様が聖女様だという事が分かりました。
すぐに広間にきて欲しいとのことです。」
「はあ!?なんだそりゃ!?なーに言っちゃってんの!?」
オレは勢いよく飛び起きた。
オレの姿を見た男が顔を赤らめた。
女はキャッと声を出した。
「で、では私は伝えましたから。」
男はそそくさと部屋を出て行った。
うぶすぎだろ、あいつ。
「いわ様、寝衣はどうされたのですか?」
焦った女が訊いてきた。
「ごわごわしたから脱いだ。」
人間の羞恥心は必要か。
気をつけなければ。
自分が着てきた服に着替えた。
防御力0の服だが仕方あるまい。
女が髪を一つに結んでくれた。
「ありがとうな。」
というと喜んだ。
人間って、嫌な奴ばかりじゃないのか。
広間にはだいしんかん、て奴と、もうひとり明らかに、ここの奴等とは違う服装のメガネの男がいた。
「確かに絵姿にそっくりだ。うん、君で間違いなさそうだね、神殿の修復で来てみて良かった。」
やたらジロジロ見てくるな。
「なんなんだ。誰だ貴様は!」
思わずイラついてしまった。
男は、気にも留めずにふふっ、と笑った。
「これは失礼致しました。
僕はブラストと申します。貴方を迎えにきました。
貴方がお探しのものも、存じておりますよ。」
「オレの身体!見つかったのか!?」
メガネ男に掴み掛かろうとしたが、ひょいとかわされた。
「でも、どうやって身体を取り戻すんですか?興味あるなぁ。」
ブラストという男がにやにやしている。
気味が悪い。
「それは…見つけたら考える。」
確かに考えていなかった。
見つかれば元に戻ると思い込んでいた。
くそっ。
「僕なら力になれるかもしれません。
但し、僕を一度でも裏切ればその時点でさよならですけど。
どうしますか?
一生その姿で生きますか?」
冗談じゃない。
だが、この男は信用できない。
「オレは自分で方法を探す。」
目の前の男は笑い出した。
「いいね、君。面白いよ。」