10.出発
ブラストが先に建物から出た。
「君のことは忘れないよ。たぶん。じゃあね。」
不穏なことを言わないでほしい。
アルジが大量の荷物を茶色のリュックに全部しまった。
中が異次元になっているらしい。
こんなご都合主義なのに、王子と聖女の共闘が必要なのか…。
あのゲーム、恋がテーマだったっけ。
恋、無理でしょ。
恋が成就しないとゲームオーバーとか、ありえない。
ゲームオーバーの世界って何?
怖い。
「クロは武器を持っているのか?お前も戦うんだろ?」
アルジの表情は無だ。
「え、えっと、武器は持ってなくて、祈りで魔物とかを倒したり、味方を回復させたりする、らしいです。」
ゲームの聖女ならそのはずだ。
しかし、今の私に出来るかは分からない。
「その大業な祈りは出来るのか?お前に。」
「…分かりません。」
アルジは、ナイフ?がセットされたベルトを渡してきた。
「お前でも使えるだろう。」
これって仕込みナイフかな?漫画でよく見るやつ。
スカートをたくしあげてベルトを装着しようとするとアルジに止められた。
「ばっ、馬鹿か。これは腰に着けるものだ。」
アルジの顔が赤い。
えっ、照れてる?
「女が人前で脚を出すんじゃない。」
えー。
スカートは膝丈ですけど?
それはいいんですか?
「こっちを見るな!」
「な、なんかごめんなさい。」
くるりと向きを変えて、腰にベルトを装着した。
サイズがちょうどよかった。
この身体ってウエスト細いなー。
前世が太かったから、余計にそう思うのかな?
「ヘミングを呼んで、魔王の所まで飛ぶ。さっさとこの茶番を終わらせるからな。聖女の身体もすぐ見つかるだろう。」
いや、待って。
ゲームでは、紆余曲折していたような?
ヘミング登場しなかったし。
恋イベントなしで、魔王といきなり対決?
アルジに首根っこをつかまれた。
「さあ、ゲームの始まりだ。」
建物から出ると、ヘミングが飛んでくるのが見えた。
無茶苦茶だ。