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「異世界」召喚   作者: 元居 葵
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第三話 変わる日常


衛星から撮られた写真と思われる画像と共にその記事のタイトルが書いてある。

 

 【天変地異!? 太平洋上に現れた謎の大陸、未曾有の異常事態】


 カイラは何ともネットニュースらしいタイトルだと思いながらも、その記事をクリックする。

 開かれたページには記事の本文と共にいくつかの写真が並べられていた。


 その写真には日本から東、太平洋上に出現したという見たこともない大陸が写されていた。


 それを見たセリエルが焦ったように問いかける。

 『ここにあるのは間違いなくニゼルギアだ。ここには何と書いてある?』

 セリエルの詰め寄るような問いかけに気圧されながらもカイラは記事の内容を読み込んでいく。


 要約すると、天変地異でも起きたのか、突如太平洋上に大陸が現れ、世界中が騒ぎになっているということらしい。


 その内容を見たカイラは昨夜自身が体験したことやセリエルの反応から普段なら鼻で笑うような非現実的な結論を思い浮かべる。


 『つまり、セリエルさんの世界、ニゼルギアがこの世界に転移してきたっていうことですか?』


 『にわかには信じがたいがそう考えられるだろう。少々気になるところはあるが、そこに写っている大陸は間違いなく二ぜルギアだ』

 セリエルも信じられないといった様子で肯定する。


 あまりにスケールの大きい出来事で飲み込めないカイラだが、ふとしてすぐにスマホを取り、ロックを開く。いくつかのメッセージが届いているのを見て安堵する。昨日の散歩からマナーモードのままで気づかなかったが不在着信の通知も溜まっていた。


 カイラは家族や友達からの安否確認に一通り返信を済ませ、セリエルとの会話に戻る。


 『そちらの世界では転移が認知されていると言っていましたが、こんな規模で起こるんですか?』

 昨日聞いた話を思い出しながらカイラはセリエルに確認する。


 『いや、有り得ない。こんな大規模で起こるなど聞いたこともない』


 『それじゃあ、セリエルさんはこれからどうするんですか?』

 彼女に聞きたいことは山ほどあるが、こうも事態が急変してはここでゆっくりもしていられないだろう。


 セリエルはしばらく考えたかと思うと、

 『このまま君の家に滞在させてもらえないだろうか』


 思いもよらない提案をしてくるセリエルにカイラは聞き返す。


 『どうしてですか? こんな事態なら早く国に戻った方が…』


 カイラが言い切る前にセリエルはパソコンの画面を指さす

 『ここを見てくれ』


 セリエルが指差したのはニュース記事の画像の一つだった。日本とその東に現れた大陸を映した一枚のようだ。ただよく見ると日本の東にある陸地は島のようになっていて横にある大陸とは海で隔たれている。


 『この島のようになっているのがアリステラという国だ。私の母国、ラヘルドの隣国で大陸の東の果てにある』


 大陸の東の果て?アリステラは島国のようだが… 


 そんな疑問に答えるようにセリエルは別の画像を指さす。

 『このあたりが恐らくラヘルドだろう』


 そう言って指差した画像は太平洋をアメリカ大陸側から写した衛星写真らしい。指の先は新大陸の東の端、アメリカと海を挟んだあたりを指している。

 

 そんな端と端が隣国とはどういうことだと思ったが、すぐに合点がいった。二ぜルギアが地球と同じ、惑星だとすると、太平洋に収まるには世界地図の左右の端のように本来つながっている場所を分ける必要がある。


 『つまり転移で陸地が分断されたってことですか?』


 『そういうことらしい。ラヘルドとアリステラの国境近くが分断の境界線になったようだ』


 これでは国に帰ろうにもとてつもない距離を移動しなければならない。しかし飛行機や船を利用しようにも新大陸周辺ではしばらく運航されないないだろう。


 『というわけで迷惑は百も承知だが、君の家でしばらく滞在させてもらえないだろうか』


 返答は考えるまでもない。彼女は命の恩人なのだから。

 まして異世界ニゼルギアの住人である彼女に話を聞けるとあればむしろ喜ぶべきだろう。

 

 『俺もセリエルさんに聞きたいことが色々とあるので、ここで良ければどうぞゆっくりしていってください』



 こうして始まったカイラとセリエルの共同生活が早くも一週間を過ぎた頃、世界各国の調査結果が発表され始めた。しかしその内容は芳しくなかった。


 理由の一つは重要な情報源になると期待された衛星だったが、新大陸、二ぜルギアの様子を詳細には撮影できていないらしい。それに加えて航空機や船を出そうにも何故か空や海が荒れて大陸に上陸出来ないということだ。

 

 いったい何が起こっているのか…


 しかし、これほどの変化が有りながらも社会は意外と普段通りに回っているのだから不思議なものだ。

 

 もっとも最近のカイラの生活はそれまでの自堕落なものとは大きく異なっていた。セリエルからの申し出でカイラは日本語をセリエルに教えていた。こちらの世界の言語を覚えておきたいということらしい。 

 カイラに空いた時間がたっぷりあったことも理由ではあるが、セリエルはすぐに簡単な会話くらいならできるようになっていた。

 

 「どうだカイラ!私もなかなかやるものだろう?」

 日本語での会話練習を上手くこなしたセリエルはこれでもかと自慢げに笑う。


 「読み書きはまだまだダメそうだけどね」

 あまりに自慢げに言うものだからつい軽く毒づいてしまう。


 「ウッ‥」

 痛いところを突かれてシュンとするセリエルであった。



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