13. 部屋を開く
素敵な時間になりますように⭐️
執務室に初めて訪れてから間に1日挟み(お父さまは私に教える時間を創出するために、前倒しで2日分の仕事を片付けてくれたそうなの。お父さま、ありがとうございます)、また教えてもらえる日がやってきた。
今回もお父さまが直々にお迎えに来てくれて、私は足を使うことなく執務室に到着したの(あまりにも自然な流れで抱き上げられて、気がついたら腕の中にいてびっくりしたわ)。
使用人達の生温かい眼差しが突き刺さるっ。うぅ。は、恥ずかしい。あっ、そういえば5歳だったわ。
大丈夫、な、はず。よね?うん……
「お父さまの執務室へようこそ。よし、じゃあ今日は約束通り隠し部屋への入り方を教えてあげるよ。さあ、本棚の前に立ってごらん」
「はい。あの、お父さまが手前に引いた本の中には高い位置にあるものもありましたよね。私では届かないと思うのですが…」
「ああ、そのことなら心配ないよ。やってみた方が分かりやすいと思うよ。まずは、どこでも良いから本棚に触れて、それから”道を示せ”と願うんだ。そうしたら、どの本なのかは良いか自ずとわかるから感じたままに手前に引けば良いよ。ここまでやってごらん」
「はい」
触れる場所はどこでも良いって…でも、もし何かしらの印がついていたら「ここには隠し部屋があります」って教えることになってしまうわね。
本棚に触れて、
ーーー「道を示せ」ーーー
ぼんやりとこの本だなと感じるわ。ええと、今、手を置いているところから3つ右のと、2段上の左から7つ目、1段下の赤い本っと。この本棚は予想に反してスーっと静かに動くのよね。
「気づいたかもしれないけれど、手間に引くべき本は人ごとに異なる上に、毎回異なるんだ。自分の身長で届かないところが鍵となることはないから、安心していいよ。扉が現れたね。今度はアフロディーテ様の絵の上に手を載せて”入り口を示せ”と願うんだ。手から流れた神聖力に反応して扉が現れるよ。そうしたら”開け”と願うと扉が開くよ。さあ、絵に手を載せて」
「はい、やってみます」
絵画に触れて、
ーーー「入り口を示せ」ーーー
じんわりと手が温かくなってきたわ。絵画が光に包まれると女神様の背に羽が現れ、扉が現れたの。
豪華な装飾が施された扉に触れて、
ーーー「開け」ーーー
出来たわ、扉が開いたわ。電気ではなく、神聖力で開く自動ドアみたいかな。
「よくできたね。簡単に部屋に入れるように感じるかもしれないけれど、これらの仕掛けは神聖力が無ければ絶対に解除できないのだよ」
「もしも私達の後を誰かがつけてきた場合はどうなるのですか?」
「このアフロディーテの間ができてから賊などが侵入したことは一度もないけれど、もし侵入した場合は本棚の先へ一歩進んだ時点で消し炭になると伝え聞いているよ。発動したことがないから、仕掛けは解明されていないけれどね」
「そ、そうなのですか」
...消し炭...何故「アレクサンダー帝国物語」では悪役はすぐ消し炭になるのよっ。アデレイドが抹消されたシーンが脳裏をよぎったじゃないっ。
「そこにお座り。お茶でも飲むかい?」
「いただきます」
お父さまはおもむろに空のティーポットを持ってきた。お湯も茶葉も何も用意していないのよ。けれども突然、ティーポットが光るとそこには紅茶が入っていた。
「お父さま、これは一体...?」
「言っただろう。この空間の制御は全て神聖力で為されていると。簡単に考えるのであれば、ここは人間界にある神界だ。まあ、ここではなんでもありだな。女神様が創ったのだから。女神様の暮らしを再現しているのかもしれないね。家具類も全てアフロディーテ様が持ち込んだものだそうだ。あまり難しく考えなくていいよ。それよりも、ここで出来ることを楽しんだ方がいいよ」
「そうします」
その後は歴代の神聖力持ちの方が書いた手記を読んだの。
丁寧に書いてあるけれど、内容は...とても適当だったわ。1行目を読んだ瞬間に、「出た」と思ってしまったわ。お得意の「万能である、強い思いや願いによって発動する、必要なときに必要とする事ができる」だったから。
具体例が分かったから良いことにしようかしら。
具体例を一部挙げておくね。
怪我・病気の治癒
植物の成長促進
雨を降らせる
嵐を起こす/消す
満潮・干潮の時間を変える
大自然を意のままに操ることができるのは「神力」を持つ者だそうでこれまでに数人いたみたいなの。
神力は文字通り神の力で、水晶でいう9、10にあたるみたいなの。
「そろそろ夕食を食べに行こうか。帰る時は何もしなくて大丈夫だよ。神聖力を持つ者が部屋を出たら鍵がかかるからね」
帰り道も床に足をつけることはなかったわ...
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