2.こっそり式を挙げちゃいました!
お互いの仲を深め合うロミオとジュリエット。
ある日、修道僧のロレンスに1つの提案をされて……!?
恋仲となってしまったロミオとジュリエットは、父親たちに内緒で、毎週会うようになっていた。
「そういえば、ジュリエット。
今日もこの後、パーティーで知り合ったっていう令嬢のところに行くのかい?」
今は家族で朝食を食べているところだ。
静まりかえっていたため、妙にその声が響いているように感じるのは、ジュリエットだけなのかもしれない。
質問されたジュリエットは、手を止め、父親の問いに答える。
「はい。そうですわ、お父様。」
「そうか、気をつけて行ってこいよ。」
親たちには、この前のパーティーで知り合った令嬢とお茶会を毎週していると話している。自分たちが開いたパーティーに、変な令嬢など呼んでいないため、大丈夫だろうと、追求はあまりしてこない。
(この嘘も、いつまでつき通せるか、わからないけど。)
そう思うと、ロミオとの関係は、脆く弱い糸のようであることを痛感させられる。
(本当は今すぐにでも別れた方がいいんだろうけど……)
それが出来たら苦労はしないのだ。
「悪い、ジュリエット。待ったか?」
ジュリエットたちは、いつもの時間に集合した。
「ううん。さっき来たところよ。」
ロミオもジュリエットも、身分がバレてはいけないので、いつも軽装で来ている。服は最初の方のデートで買った市民が着るようなものである。こちらの方がドレスより歩きやすい。
「それじゃ、行こうか。」
「はい。」
ロミオが差し出した手にジュリエットは自分の手を置き、笑顔で応える。
(全く、何度見てもこの笑顔には勝てない……。)
ロミオは思わず顔を逸らす。
「? どうしたの?」
「い、いや、何でもない……。」
ロミオは改めてジュリエットと手をつなぎ、デートを開始する。
その後はいつものように、甘い一時が流れたのであった─。
「は~。」
(ほんと、なんで私はあの人を好きになってしまったのだろう……。)
ここはジュリエットがよく来る教会。
ジュリエットは、教会にある机に突っ伏し、溜息をつく。
「どうされたんです? ジュリエット様。」
修道僧─ロレンスが私に声を掛ける。
ロレンスはジュリエットの親友であり、唯一ジュリエットとロミオの関係を知っている人物だ。
「ううん。何でもない。」
「そうですか。……、ロミオ様のことでお悩みですか?」
「!?」
(な、なんでわかったの!?)
「エ、エスパー……?」
「いいえ、修道僧です。」
「…。」
「それで、ロミオ様と何かあったのですか?」
ロレンスは、会話を無理矢理続けようとする。
「……、なんで、あの人を好きになっちゃったんだろうって思って……。」
「……、惚気ですか?」
「!?」
思ってもなかったことを言われて、ジュリエットは驚く。
「……、いや、そうじゃなくて…ね。
私たちの恋は結局実らないだろうから、……思うところがありまして……。」
所詮結ばれない恋人同士。というか、結ばれるとバッドエンドになる恋人同士。
今、付き合っていることは正直言って不毛であるとジュリエットは感じている。
「まぁ、確かにそうですね……。
あ、そうだ!!」
少し悩んだ後、ロレンスが声を上げる。
「? どうしたの? ロレンス。」
「いっそ、結婚式を挙げてみてはどうですか?」
「け、結婚式!?」
思わぬ提案に、ジュリエットは驚く。
「正式なものではないので、婚約式の方が正しいかもしれません。
式を挙げて、お2人が前向きになられて、結果的に両家の争いに終止符を打つきっかけになればいいな、と思います。」
婚約式……か。
確かに、それはいいかもしれない。
「わかったわ、ロレンス。
ロミオと相談してみて、よかったら日時とか3人で決めましょう。」
「はい、ジュリエット様。」
一週間後、ジュリエットたちは式を挙げた。
その日、ジュリエットは家に帰り、自室のベッドに寝っ転がっていた。
(婚約…か……。)
ジュリエットはそっと目を瞑る。
「あっ!!」
ジュリエットは1つのことを思い出して、声を上げる。
「ジュリエット様、どうされました?」
部屋の外にいる侍女が訊いてくる。
「いえ、何でもないわ。」
本当は何でもなくない。
『二人は修道僧ロレンスの元で秘かに結婚。ロレンスは二人の結婚が、両家の争いに終止符を打つきっかけになることを期待する。』
(よく考えたら、ナレーターが言ってた話の近い形でことを進めちゃったじゃない!?)
そして、ジュリエットは青ざめる。
『しかしその直後、ロミオは友人とともに街頭での争いに巻き込まれ、親友・マキューシオを殺されたことに逆上したロミオは、キャピュレット夫人の甥ティボルトを殺してしまう。』
(もし、本当にそうなっているとしたら……。)
うっかり結婚まがいのものをしてしまったジュリエット。
さて、本当にジュリエットはバッドエンドを無事回避できるのだろうか……。
どうも、こんにちは。
思いの外展開早いな~ と思いながら描いているあぷりこっとです。
結婚ではありませんが、式は挙げましたね。
順調にフラグを回収してますね(笑)。
まぁ、どうにかなるでしょ、多分。
次回はロミオ目線の話になると思います。ちょっとした予告です。
それでは、また次回お会いしましょう。
バイバ~イ!