15.作者の名前を叫びました!
「あ、ジュリエット様。目覚められましたか?」
目覚めたとき、目の前にはロレンスがいた。
(ロレンス……? そっか、私、仮死の毒を飲んで……。)
「ロレンス、おはよう。」
「おはようございます。ジュリエット様。お加減は如何ですか?」
そう言いながらロレンスは、ベッドの上で横たわっているジュリエットの上体を起こす。
「うん、ちょっと体が重いかな。」
「あ~、2日間も眠られていましたからね。」
(2日、か……。ロミオ、どうしてるかな?
ちゃんと、今回の作戦が伝わっているはずだから、私が目覚めるの、待っててくれてたかな。)
「それで、ロレンス。ロミオは今、どこにいるの?」
「さぁ…、わかりませんが、2日後にジュリエット様が目覚められることは先日伝えました。今日中には来られると思いますよ。」
(やっと、ロミオに会えるんだ。)
ジュリエットにとっては、この一週間は長かった。会えるのが楽しみで仕方なくなって、当然である。
(にしても、いつも時間を守るロミオがまだ来てないなんて、珍しいな。)
バタバタ…
教会の奥のこの部屋に、誰かが駆け込んで来る。
「ロレンス、ロレンス!」
息を切らして部屋に入ってきたのは、修道僧のジョンだ。
「どうしたの? ジョン。そんなに慌てて。」
「ロミオ様が、ロミオ様が……!」
その慌てようから、不吉な予感がした。
「ロミオがどうしたの?!」
「ロミオ様が、…川へ墜ちられまし…た。」
(!?)
「どういうことなの、ジョン。詳しく聞かせて。」
ロレンスが冷静にジョンに尋ねる。
ジョンは息を整えながら、語り始める。
「それが、ジュリエット様の墓がある墓地にいた人によると、ロミオ様が自ら川に身を投げられたらしくて……。今、捜索隊が捜索をしていますが、この時期の墓地付近の川は、水かさが増えて、流れもとても速くなるので、もし、発見できても、もう……。」
その続きは誰もが察した。
(そん…な……。なん…で……?
上手く作戦が伝わらなかったってこと……?
でも、ロミオは原作の内容を知っていたはず。
それなのに、なんで…、自殺なんか…を……。)
ジュリエットは、自分の顔を手で覆う。
(私たちは、幸せになっては、いけないの……?!)
……。
(ねぇ、なんでこんな結末にしたの……?
私たちが幸せになるために、チャンスをくれたんじゃないの……?)
……。
(ねぇ、答えてよ。あぷりこっと!!)
作中で、キャラに名前を叫ばれたのは、初めてだな。
(何、呑気な事を言ってるの!?)
「そうだぞ、あぷりこっと。
俺の時は優しく諭してくれなかったか?」
「!?」
「貴方、なぜここに?!」
「よぉ、ロレンス。俺の嫁が随分とお世話になったな。
いや、お前はこう呼んだ方が喜ぶか? ─黒幕さん。」
どうも、こんにちは。
初めてキャラに名前を叫ばれた作者のあぷりこっとです。
いや~、ほんと、今まで趣味で色々な小説を描いてきましたが、初めてですよ、こんなの(笑)。
にしても、どうして私はこんなにキャラと距離を近くしたいのでしょうか。と、不意に思いまして。布団の中に入りながら考えていたらわかったんですよ!
皆さんって、小説とかお読みになったりしているときに、落ち込んだり立ち直れなくなったりしている登場人物を見ると、今すぐ助けに行きたいと、思われたことはありませんか?
慰めたい、声を掛けたい、せめて話を聞くだけでもいい、何でもいいからしてあげたい みたいな。私はよくあるのですが。
もちろんそれは叶わない願いです。いくら願っても、私が出来ることは物語の続きを読むだけ。どれだけ彼ら彼女らが苦しんでいても、何もしてあげられないんです。それがとてももどかしくて仕方ない。
だから私はせめて自分の創る物語ではと、こんなに距離を近くするのだと思います。
単なる自己満足、ですね。でも、それで私はいいと思うんです。それで少しでも彼ら彼女らが救われるのなら─。
と、いい話っぽくなったところで、
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
また次回、お会いしましょう。
バイバ~イ!