12.後悔と希望
ロミオは立ち尽くした。
目の前には、「ジュリエット・キャピュレットの墓」と書かれた石がある。
大きく、立派な墓だと思えるほど、ロミオには余裕がなかった。
ジュリエットの死は、ロレンスから聞いていた。
だが、こうやって実体している証拠を見ると、現実味が増す。
不意に、ロミオの中にある何かがプツリと切れた。
「じゅりえっ…っ…。」
嗚咽を交え、最愛の人の名を呼ぶ。
親友の死を前にして出なかったものが、止めどなく流れ、頬をつたう。
もう、あの眩しい笑みを向けてくれる彼女がいないのだ……。
どこかで、鳥がさえずった。
その美しいさえずりは、ロミオの耳には雑音に聞こえた。
「うるさい!」
ロミオは叫ぶ。だが、鳥はさえずりをやめない。
(なんで、なんで鳴くんだ! 何で生きてるんだ。
あのジュリエットはいないのに!
まるで、ジュリエットは最初からいなかったと言わんばかりに鳴くんだ!)
ロミオにとっての世界の中心はいなくなったのに─。
(どうして、地球は回り、朝が来て、夜が来るんだ!
もう、ジュリエットはいないのに!
なんで人はお前たちは、俺は…生きているんだ……。)
ジュリエットがいなくなっても、当たり前のように活動する自然に動物に人に、ロミオは怒りを覚える。
そして、ロミオが何より許せなかったのは…自分だった─。
(もし、あの時、ジュリエットの家に行かなければ…、あの日、ジュリエットと婚約式を挙げなければ…、もし、あの時ジュリエットとデートをし始めなかったならば…、もし、俺たちがあの日、出会わなければ…、もし、あの時俺がジュリエットのことを好きにならなければ……!
ジュリエットは死なずに済んだのにっ!!)
ロミオは気づいたら、橋の縁に立っていた。
(ジュリエットがいない世界に、俺が生きる意味はない。)
……、ちょっと待ってロミオ!
(なんだよ、ナレーター!
今、良い感じの雰囲気だったじゃん!)
いや、どこが!? ただ単に橋の縁に立ってることしか、読者の方に伝わってないよ!
(うるっさいな~。)
否定はしないのね…。
まぁ、話を聞いて。
……、ロミオ、貴方は大切なことを忘れてる。
「大切なこと?」
ロミオは、私の話を聞き、自分の記憶を探る。
『ジュリエットに助けを求められたロレンスは、彼女をロミオに添わせるべく、仮死の毒を使った計略を立てる。』
『何があっても、死ぬなよ。』
(!?
どうして、俺は、こんなに大切なことを忘れてたんだ……?)
ロミオは私の言ったことを思い出し、後悔する。っと同時に
(ジュリエットは、生きてる……!)
希望を噛みしめる。
「ナレーター、ありがとう。お前のお陰で俺は死なずに済んっ!?」
ドンッ
ロミオの背を何者かが押す。
すぐに対応できなかったロミオの体は、バランスを崩し、そのまま川へと傾く。
「ロミオ殿!!」
そのままロミオは、川へ墜ちた─。
どうも、こんにちは。
今回のストーリーをかなり楽しく描かせていただいたあぷりこっとです。
今回のMVPは何と言っても、ナレーターですよね!
個人的にこのナレーターとロミオの会話はかなり気に入ってます。ちょっと親しげで、いいですよね!
最後にロミオが声に出してナレーターに話しかけてます。普通に考えたら、周りの人から見ると、おかしな人ですけど(笑)。ちょっとしたウケ狙いです。
そういえば、今回で初めてロミオが涙を流しましたね。本当に現実を受け入れざるを得なくなったようで……。そこまで追い詰めてしまって、申し訳ない限りです……。早くロミオとジュリエットを解放してあげたい……
え~、ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
また次回、お会いしましょう。
バイバ~イ!