異世界渡りの置手紙
拝啓
渡異世です。これを読んでる人は多分知ってるだろうけど、改めて自己紹介から始めさせてください。
私の名前は渡異世。十七歳、高校生です。高校生っていうのは、要は学校に通っている人って意味です。魔術学院の生徒とおんなじ感じ、って言ったら伝わるでしょうか。私の通っている学校では、魔法じゃなくて国語とか数学とか、そういったものを習います。役に立つのかわからないけど、きっと大人になるために必要なことなんでしょう。
私は地球っていう星の、日本ってところに住んでます。この世界の人は誰も知らないと思うけど、そういう場所があるんです。うまく言えないけど、とってもいいところですよ。
私は魔法は使えないけれど、一つだけ特別な能力を持っています。「異世界を渡る」チカラです。
異世界ってわかりますかね?皆さんが暮らしている場所とは遠く離れたところに、全く知らない人間が暮らしている場所がいくつもあるんですよ。私の生まれ育った地球もその一つです。突拍子もない話ですいません。こんな説明じゃ理解できないですよね。
私は一週間に一度、元居た世界とは別の世界に飛ばされてしまうのです。能力より体質といった方がわかりやすいかもしれませんね。行先も指定できないし、チカラを発動しないこともできません。
実は、この世界に来る前にもいくつもの世界を渡り歩いてきました。さっき私は高校生だと言いましたが、それももう半年ほど前の話です。このチカラに目覚めてからは日本にも帰ることができていません。どうやったら帰ることができるのかもわかりません。この世界に来たのも偶然です。もう一度皆さんに会える保証はどこにもありません。
もしこのことを話したら、優しい皆さんは何とかして私の助けになろうとしたでしょう。だから私は打ち明けることができませんでした。短い付き合いだから、迷惑をかけたくなかったんです。
今になってこの話をしたのは、全てを打ち明けたうえで皆さんにお礼がしたかったからです。何度も異世界を旅してきて、これほど心優しい人々に巡り合えたのははじめてです。料理もたくさんごちそうになったし、見たこともない道具や魔法をいっぱい教えて頂きました。とっても幸せな七日間でした。本当にありがとうございました。
今度来るときは、日本の美しい景色をたくさん紹介したいと思います。いつになるかわからないけど、楽しみに待っていてくれたら嬉しいです。
敬具
分かりにくかったかもしれませんが、この話は「異世界を渡り歩く少女がとある世界を去るときに残した手紙」という設定です。キャラの設定は連載もの用に出したアイデアをそのまま流用してます。もっと長いお話も書いてみたいのですが、なかなか難しいです。
本当は人や地名などの固有名詞やエピソードを入れてリアルさを出したかったのですが、うまく書けなかったので諦めました。実力不足ですね。
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