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13 ロランナの失落



「ちょっと、勝手に人のモノを持って行かないでよ!!」

 ちょうどその頃、ロランナの部屋にも侍女達はやって来た。

 侯爵家の物は、小さな物でも格段に高価である。

 服の中に隠して出て行かれても、別段困らないがシャクには障る。それにここにある物の中にはーー。

「これはシャーロット様のペンダントですわ」

 ベッドボードから、滴型の宝石が付いたペンダントを見つけた。

 シャーロットの誕生日に、父セイバールが贈った物である。

「それはシャーロットから貰ったのよ!!」

「 "貰った" のではなくて "奪った" の間違いでしょう?」

「まぁ、ディアドラ様の形見まであるわ!!」

 探せば探すだけ、次々と出て来る品々に、漁っていた侍女達は怒りを通り越し呆れていたのだった。



「ちょっと、やめて!! 触らないでよ!!」

 ロランナの中では、シャーロットの物は自分の物も同然だし、この侯爵家の物も自分の物だった。

 それを使用人ゴトキが触れるなんて、絶対に許せなかった。



「気分はどうですか?」

「え?」

「人に物を取られる気分はどうですか?」

 侍女の1人がロランナの前に立ち、無表情で訊いた。

 いつも奪う側のロランナが、今奪われる側にいる。どんな気持ちだと訊いてみたかったのだ。

「最悪も最悪よ!!」

「それは良かった」

「何がイイのよ!!」

 こっちは気分が最悪なのに、楽しそうに笑う侍女にロランナは叫んだ。



「シャーロット様のお気持ちが、やっと理解出来た様で」

 そう言って笑った侍女達の顔は、まるで悪魔の様に見えた。

「は?」

「物を奪われる気持ちが分かったのでしょう?」

「はぁ? 何言ってるの? バカじゃないの?」

 分からないのか、理解したくないのか、それはソレとばかりにロランナは恍けていた。

 まだ、理解しようとしないのか。反省の姿も見せないのかと、侍女達はロランナを冷めた目で見ていた。

 そして、皆は目配せすると、ロランナにジリジリと詰め寄り始めた。




「まぁ、ロランナお嬢様。そのペンダント凄く可愛いわ、私に下さらない?」

「はぁ? あげる訳……ちょっと!?」

「まぁ、その靴も最新モデルですのね。私の娘に下さるわよね?」

「な、何言って、触らないで……きゃっ!」

 身に着けている物まで剥ぎ始めてきたので、ロランナは怖くなり部屋から出ようと走ったのだが、ドレスの裾を踏みつけ転んでしまった。

「いったぁい!! あなた達ねぇ!?」

 ロランナは突き飛ばされたと、侍女達に睨みつけたのだが、それでも迫る彼女達に背筋がゾッとした。

 侍女達はロランナに手を貸すところか、何故か手にハサミやナイフを持って抑え付け始めたのだ。



「何するのよ!?」

「そのお髪、キラキラと輝いていて綺麗だわ。少し分けて頂ける?」

「か、か、髪なんて分ける訳、ハ、ハサミはしまいなさいよ!?」

「まぁ、なんて細くて長い素敵な手をしていらっしゃるの? 2本あるみたいなので片方下さいます?」

「な、何? 手!? 何言ってるのよ!?」

「足も2本あるみたいだし、片方頂きましょうよ!」

「バカな事言わないでよ!! ヤメなさいってば、ヤメてーーっ!!」

「まぁ、ロランナお嬢様。瞳が青くてお綺麗です事。2つあるのだから一つ分けて貰えますよね?」

「ロランナお嬢様」

「いや」

「ロランナお嬢様」

「いやァァ」

「ロランナお嬢様」




「イヤぁぁぁァァーーーーッ!!」

 ロランナは余りの恐怖に堪えられず、泣き叫ぶと失神したのであった。









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