かわいいお友達
「あっちに、立食パーティ席があるの…。」
苺は三栗の手を握って優しく引っ張る。苺に連れられて会館の後方に用意された食事スペースに三栗はやってきた。
そこには小さな講演会だというのに豪華絢爛な食事が用意されていた。ローストビーフにピラフ、それはまるでホテルのヴュッフェのような構えであった。
「ほら、白い苺タワー。」
豪華な料理に目を奪われている三栗の手を苺はくいくいと引き、立派な苺のタワーを指を差した。
指を差している方を見ると、三栗の背よりも高いタワーで、どれも真っ白な苺が積み上げられていた。
「わわ!これはすごい!立派ですね!?」
三栗も興奮気味に苺のタワーを見上げた。一体何粒あるのだろう…。数えきれない。一粒一粒ツヤツヤと輝いており、豪華絢爛な他の食事たちと比べても今回の主役を張れるような風貌であった。
「苺ちゃんの主食、ですね!」
三栗はそういって苺を見ると、苺も嬉しそうに頷いた。
「三栗ちゃんは、他のも食べてね。」
そういって苺はどこから持ってきたのかヴュッフェ皿を三栗に手渡した。
苺はタワーに駆け寄ると白いイチゴをこれでもかとヴュッフェ皿に盛り、勢いよくはぐはぐと口に詰め込んだ。
あっという間に苺は頬いっぱいにイチゴを詰め込み、口周りもイチゴのタベカスでべとべとになっていた。その姿はハムスターのように愛らしくて、三栗はファーストペンギンとしての役目を忘れしばし癒された。
しばらく苺との食事を楽しんでいるとと「あ、そろそろ出番だ。」と、苺が立ち上がった。
「あれ?なにかあるんですか?」
三栗が聞くと、「あのおばさん。うちのお父さんの知り合いで、なんか手品?をするらしくてそれのお手伝いするの。」と、講演中の番茶出花を指さして苺は言った。
「お小遣いも出る。」
そういって苺はブイサインをつくって三栗に見せた。
「働かれるということですね!すごいです!応援しています!」
三栗はそういって苺に拍手を送った。
苺も誇らしそうに胸を張り「お小遣いもらえたら、また、ゲーセンとか、カラオケとかさ、一緒に遊ぼ。」と言い残して、ぽてぽてとステージへと向かっていった。
苺と別れた三栗は、とりあえず一人にならないようにと会場真ん中ほどで参加者と雑談していた両親と合流した。
「おかえりなさい。苺ちゃんは…、ステージに行ったのね。」
柿八子はシャンパングラスに注がれた冷水を飲みながら言った。柿八子はお酒を飲まないのだ。
「手品のお手伝いがあるそうです。」
「あら、素敵ね~。」
柿八子は鞄にひっかけてある極小のマイクの位置を確認し「苺ちゃんってどんなお友達なの?」と、にこやかに三栗に尋ねた。
「苺ちゃんは、とっても頑張り屋さんなんです。」
三栗はスマートフォンを取り出し苺の写真を柿八子に見せた。体操服姿の苺がブイサインを作ってこちらを見ている。
「お勉強も運動もたくさん頑張っていて、けどすごく繊細なので失敗したり思った目標に届かないと、ちょっと休憩の時間が必要なんですけど…。」
苺は昨年末ごろから保健室通いを続けていて、授業はあまり受けれていない。三栗以外に親しい友人は少なく、幼馴染の星葡萄としか教室では話しているところを見たことが無い。
実の父とは仲が良く、父からの期待があるから運動も勉強も頑張りたいと話していたのが記憶に新しい。
「甘いものが好きで、よく一緒にクレープを帰りがけ食べました。今は食欲がないって言ってあまりいけていないんですけど…。」
そう三栗がいうと「かわいいお友達ね。」と。柿八子は言って微笑んだ。その言葉を聞いて三栗はうんうんと大きく頷いた。
「そう、苺ちゃんは努力家でかっこよくて、かわいいんです。」