友達
教室に戻る際に、廊下で三栗は小梅と会った。
小梅は重そうに大量の冊子を抱えている。
「小梅ちゃん、持ちますよ。」
「あらあ、助かるわあ。今日、私日直やもんで、もってけ―…っていわれてしもて。」
少し息切れした様子の小梅は、三栗に半分、冊子を持ってほしいと頼んだ。三栗は素直に頼んでくる小梅がかわいいと思った。
「それにしても、ホームルームが始まっているのにこんな重いものを頼むなんて。」
「先生も気きかんよねえ。三栗ちゃんが通ってくれてよかったわ。私、運いいわぁ。」
そういって小梅は笑いかけてきた。おかっぱの黒髪が揺れて、ほんのりと花の香りがした。
「小梅ちゃん、何かつけてるんですか?いいにおいがしますね。」
「あや、なんやろう。この前焚いてみたお香やろか。」
「お香をたしなんでるんですか?おしゃれですね!」
「せやろか、私、ちょっと火点けるんがまだ怖いわぁ。」
「あ、確かに、少し怖いですね。」
三栗と小梅はそんな雑談をしながら、指定の教室まで冊子を運んだ。
国語準備室には誰もいない。準備室はほこりっぽくて小梅は少しせき込みながら、冊子を四つの山に分けて机の上に置いた。
「三栗ちゃん、助かったわ。持つべきものは友達やね。」
そういって小梅は笑った。