犯人からの手紙
それから数日経った、桃井家に一通手紙が届いた。直接ポストに投函されたようで、切手の貼られていない手紙だった。差出人の名前もなく、桃の花があしらわれたシーリングスタンプで丁寧に封されていた。宛先は三栗だった。
三栗は手紙を自室に持ち込み、封を開けた。中には2通の便箋と一枚の写真が入っていた。
内容としては「この前はありがとう。」から始まるもので、内容を読む限り《能面の小柄な犯人》からだろうと思われた。
『桃井三栗さんへ
この前は、どうもありがとう。
図書館であなたに会えたのは運命だったのでしょうか。
私たちが初めてであったのも図書室でしたね。
話しは変わりますが、一江苺さん、星葡萄さんの件ですが、
こちらの2名うら若き少女たちはわたしがいただきました。
とてもあなたがショックを受けているようでしたので、
ここに記させていただきます。
あなたは優しい人だから、死と別れを同義で捉えていると思ったのです。
一江苺さんはお父様より許可を得てこの度生贄として、
星葡萄さんに関しては本人からのお願いで、
この度、お命を頂戴した次第です。
まだ詳細を話すには三栗さんの精神状態も整っていないことと思います。
また改めて、お話しする機会を設けますね。』
と、書かれた達筆な字のもの。そしてもう一通は筆跡の違う、星葡萄の署名がされた手紙だった。
『……へ
う……が香……………………した。
……で…か。
先日お話しした…遺体の件……が、
私は、頭部…………存じます。
……様が、美…………ままで…………。
して、4月……に、校内図書室にて…渡しをお願い……。
その際に、…贄の………、彼女は憎………。
……ので、………様は気に入…………。
何卒宜…………しま…。
星葡萄』
ほとんどが焼け焦げて読める部分は一部だけだったが、葡萄が誰かに向けて宛てた手紙であるように思えたが、別の人間が筆跡を変えて書いた可能性もあるし、なんのためにこんなものを三栗宛に送付してきたのか主旨が理解できなかった。
しばらくの間、三栗は便箋を眺めていた。「この前はどうもありがとう」という文面から読み取るに、先日図書館でエンカウントした能面の犯人からの手紙だろうと想像はつくが、なぜ犯人から三栗の自宅に手紙が届くのか。
そして同時に、まるでこれまであったことがあるかのような文、一緒に添付されている葡萄のものと思われる手紙、三栗には意図が理解できなかった。
三栗を混乱させるため?葡萄に裏切られたと悲しみに浸らせるため?そうであったとしても、殺人犯がわざわざ目撃者の家にあるポストに直接投函に来るほどのリスクを背負うものではないと三栗は感じた。