警察の到着
「警察だ!」「動くな!」
図書室の扉が乱暴に開けられると同時に警察2名と山椒、柿八子が入っていた。
あたりを警戒した様子で見渡し、確認が終わった山椒は三栗に駆け寄り三栗に耳打ちをした。
「何があった。」
「星、星さんが、」
三栗はまだ腹を蹴られたばかりでうまく声が出なかったが、星が机の下に転がっていることを山椒に伝えた。
山椒は三栗の指さす机の下を覗き込むと、顔を上げて声を上げた。
「机の下で人が倒れている。変な機械と繋がっているようだ。救急車を呼べ。」
山椒の声に1人の警察官は慌てたように無線を使ってどこかと通信を始めた。
「まだ息があるわ、この機械、どこに繋がってるの?」
そういって柿八子は改めて葡萄の身体のあちこちを調べた。
柿八子はこれまで、自分の部下である検察事務官とともに仕事をした経験から検視自体を行うことは容易だった。
葡萄の身体の背面には無数の針穴が開いており、首裏には大きな採血針が突き刺さったままになっていた。つながっている管を通ってどこやらに葡萄の血は運搬されているようだった。
三栗は痛む腹を抑えて柿八子の傍へ腹ばいで近寄った。
「星さんは、」
「まだ生きてる。けどもう、相当危ない。」
「この針、抜けないの?」
三栗は葡萄の首裏にぶっすりささった針に触れようとした。
「動かすべきではないわ。どこの血管に刺さっているか分かったものじゃない。」
「けどこのままじゃ。」
どんどん葡萄の顔色が白から青に近付いていくのが目に見えて分かった。
いくつか抜けた注射針から逆流した葡萄の血が地面にどんどんあふれ赤く染まっていく、その反対に葡萄の顔は一気に死に染まっていくようにみるみる真っ青になった。恐ろしい光景だった。
葡萄の背面に柿八子はタオルを当てて止血を試みたが、背中に穴が無数にあるのと穴自体が太めの注射針ほどのサイズですべてを塞ぎきることは難しかった。
葡萄は大切そうに苺の頭部を抱えていた。三栗は抱えているものが人間の頭だとわかると、吐きそうになった。その衝動を抑えながら三栗は苺の顔を見た。
少し微笑んだような口角、真っ白で血の気はないが確かに、苺の頭部だった。
「なんで、こんな。」
三栗が立ち尽くしていると、救急隊が到着し、葡萄の首に刺さった針の取り外しに掛かった。
苺の首は警察がさっさと回収していってしまった。