帰り道
それから数時間、三栗と葡萄は遊び倒した。
クレーンゲームをした後、メダルゲームをし、果てにはカラオケにも馳せ参じたので三栗は喉がガラガラになってしまった。
「三栗ちゃんって思ったより歌もうまいんだね。」
「思ったより…?」
「うふふ、なんか、"不運体質"以外は全然欠点無いんだなって。」
葡萄はそういってゲームセンターの敷居を飛ぶようにまたいだ。外はもう夕方で、あたりは真っ赤に染まっていた。
「三栗ちゃんまた、落ち着いたらでいいから、色々話したり、遊んだりしようね。」
葡萄はそういって、にっこりと三栗に言った。
「…そうですね。」
三栗は感慨深く返事をしたが、葡萄はもう歩き出していて、三栗の返事は聞こえていないようだった。
「ああ、春になったばっかりなのに暑いなあ。遊びすぎたかな。」
長い髪を葡萄はかき上げて真っ白で綺麗な首筋をさらけ出した。夕日に照らされてもわかるほど白い首は少し汗ばんでいた。
三栗は「葡萄さんって本当に綺麗な人だ。」と思った。
親友であった苺の死に目にいた"不運少女"を元気づけるために、下心なくこんなに優しくできるだろうか。とてもよくできたお嬢さんだ。
以前、苺から「葡萄は少し依存体質なところがある。」と聞いていたため一番苺の死に対して精神が揺らいでいるのではないか、と三栗は思っていたのだ。想像よりも葡萄は強い少女のようだ。
「苺ちゃんが、葡萄さんは自分がいないと、と言っていたのを思い出しました。」
三栗がそういうと、葡萄は驚いたように目を見開き笑った。
「なにそれ、反対でしょ。苺のほうが私がついてないと、だめなのよ。」
葡萄は「あはは」とかわいらしく笑ったが、とても寂しそうな声だった。三栗は失言しただろうか…と不安になったが、葡萄は瞳を潤ましただけで懐かしそうに夕焼けを見つめていた。
「苺のお母さんが亡くなってから、私毎日のように苺の傍にいた。そして、苺も私の傍にいてくれた。とっても大切な友達だったの。代わりなんてできないくらい。」
三栗は葡萄の言葉を聞いて感極まって涙を流してしまった。葡萄はをそれをみて「…苺はいい友達を持ったなあ。」と微笑んだ。
葡萄の顔は夕焼けに真っ赤に染まっていてうまく表情が見えなかった。けど口角があがっているから、きっと笑っているだろう。と、三栗は思った。