表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/46

旦那様にはナイショです。

高級そうなレストランへやって来ました。

セオは慣れた様子で受付を済ませ、予約なしの急な来店にも関わらず、すぐに奥まった個室へと案内されました。

護衛は部屋外で待機。メニューも見ずにオーダーを済ませたセオは、私に言いました。


「時間勝負だよ。今からどんどん料理が来るから、とりあえずどんどん食べて。喋らなくていいから」


その宣言通り、間もなくして料理がどんどん運ばれて来ました。次から次に。

「何でもいいから、早くできるものからどんどん出して。一時間で出せるだけ、どんどんね」等とセオが無茶苦茶な頼み方をしたせいでしょう。

シェフが自棄っぱちになっているのではと推測されるペースで、順序を無視した料理が運ばれてきます。

しかし、それの何と美味しいこと!

食べても食べてもまだ食べられるとは、なんと幸せなことでしょうか。

舌鼓を何度も打ち、頬っぺたが蕩け、目尻が下がります。う~天国っ。


食べたくても食べられなかった我慢、この十二日間の鬱積が解き放たれます。



「ふはぁー」


一時間が過ぎて新しい料理が来なくなり、ついに全て完食いたしました。

空になった食器が次々と下げられ、テーブルがすっきりしたのを見て、はっと我に返りました。

そういえば、一人じゃなかった!

途中からすっかり同席者の存在を忘れていたのです。静かすぎて。


一時間ぶりに目を合わせると、セオは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしています。

そして、あははっと笑いました。


「いやあ、ほんと凄いね。びっくりしちゃった。圧巻。お見事。感動すら覚える」


「ほら……引いちゃってるじゃないですか!」


「え? 全然。言葉通り、感動した。いやあ、凄いもの見せてもらった。さすがにもうお腹いっぱい? まだ食べたい?」


あっけらかんとした口調で返され、気が抜けます。


「さすがに、もうお腹いっぱいです」

「それは良かった」


テーブルに頬杖をついてニコニコ笑うセオに、胸がドキリとしました。

初見で「感じが悪い」と思いましたが、とても話しやすくていい人ではないですか。

ご飯も食べさせてくれましたし。そこではっといたしました。お代金!

奢ると言ってくださいましたが、高級そうなお店ですし、何と言っても食べた量が尋常ではありません。


「おおお、お幾らでしょうか。こちらのお食事代。私、いま手持ちのお金が……」


「奢るって言ったよね」


「でも、すごくお高いんじゃ……」


「俺、金あるよ。高給取りだし。今回の依頼もサンドフォード家からたんまり報酬もらう予定だし。ってことで、実質は俺の奢りじゃなくて、君の旦那様の奢りね」


ひらひら~と両手を振って、セオは言いました。


「けどさ、とりあえず今日はこれで良いとして。また明日になったらお腹は空くわけじゃん?」


セオの言いたいことは分かります。


「今後どう凌ぐつもり? またお腹が空いて困るよね? 君から言いにくいなら、俺からブレット卿へ伝えるけど?」


「や……やめてください。それだけはどうか。今後は……明日のパーティーが終われば、出歩ける自由もあるはずですので、こっそり食べ歩きしようと思いますの。このような高級店でなくても良いのです。安くて美味しいものをたくさん買い込んで、凌ごうと思っています。サンドフォード家に迷惑をかけるようなことはいたしませんので、秘密にしていただけませんか」


私の懇願にセオはう~んと唸り、しばらく思案顔をしました。

それから何か思い付いたようで、ぱっと顔を明るくしました。


「じゃあさ、こうしない? 週一で俺のところに通って、お祓いを受ける。っていう体で、ご飯食べにおいでよ。食事でも、お菓子でもいい。とにかく満腹食べさせてあげるよ。安くて美味しいものも、たくさん持ち帰ればいい」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ