示された三つの選択肢。
「でもブレット様、私とセオが浮気していると誤解されていたのに、冷静だったじゃないですか」
言ってから、気づきました。これは地雷だと。自分で置いて自分で踏んで、自分でダメージ受けるタイプのやつです。
「……って、あれですよね。私のことはイザベル様みたいに愛してないから、ですよね! あはっ」
ブレット様に処理させる訳にはいきませんから、慌てて自分で回収しました。
「冷静ではなかったですよ。自分でも驚くくらい、むかつきました。これ以上気持ちを乱されるのはまずいと思い、斬り殺したくなる前に追い出した。私は新しい妻を決して愛さないと心に決めていたのに、やって来たあなたといったら……とても清楚で愛らしくて、純粋で……イザベルとあまりにタイプが違いました」
えっ、はい、えっ?
私はイザベル様のような妖艶な美女ではないってことですよね?
えっ、追い出されなかったら斬り殺されてた可能性が……!?
「今日の話を聞いて、私と暮らすのは無理だと思われたなら、正直に言ってください。私に原因のある離婚ということで、各方面へ話をつけます。慰謝料もお支払いします。一緒に暮らしてもいいが親密になるのは無理だと思われた場合は、これまで通り寝室は別室で。適切な距離を保ち、形式上の夫婦でいられるよう、努力します」
「はい……」
「そして三つ目。もしも私の全てを受け入れてくださるなら、私は恐れずにあなたを深く愛します」
これは愛の告白でしょうか……頭がこんがらがっています。ブレット様の瞳がとても真剣で、本気だということだけはきちんと分かります。
「返事は今でなくて構いません。今日は戻りますので明日の晩、またこちらで聞かせてください。丸一日、熟考ください」
それでは、おやすみなさい。遅くまでありがとうございました、とブレット様は寝室を出て行かれました。
パタンとドアの閉まる音で、どっと疲労感が押し寄せました。
つ、疲れたっ~。
一気に色んなことを知りすぎて、もういっぱいいっぱいです。
ブレット様の新たな面をたくさん知って、イザベル様との真相も知って……セオについても知らないことが多すぎました。
正直色々とショックでしたが、ブレット様が良いも悪いも偽らず、素直な言葉でお話くださったことが胸を打ちました。
どれほどの勇気と覚悟が必要だったでしょう。
ブレット様はあのクールな仮面の下で、今も苦しんでおいでです。
新しい妻をもし真剣に愛せば、ずっと抑えこんでいた激情がまた暴走するかもしれない。些細な事で苛立ち、嫉妬し、斬り殺したくなることがあるかもしれない、と。
殺したくなるほど愛される、ブレット様に。
あら?
意外と悪くない語感です。
むしろ嬉しい気もします。
でも実際殺されそうになったら、そんな呑気なことは言ってられませんし。
選ばなくてはいけません。
ブレット様が示された三つの選択肢。
一、円満離婚する。
二、完璧な仮面夫婦となる。
三、愛し愛される夫婦になる。(ブレット様がヤンデレ化するリスクあり)←本当にあるのでしょうか?
今日はもう頭も心も疲れました。明日熟考することといたします。




