表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/46

空腹とホームシックで眠れません。

あと三日、あと三日で結婚披露パーティーです。それさえ終われば時間ができて、念願の食べ歩きに行けます!

あと三日、あと三日我慢すれば……。


そう胸のなかで唱えながら眠りに就こうとして、ふと思いました。

結婚披露パーティーは立食形式です。

食事がメインではありませんが、ワインのあてとして手軽に食せるものが山ほど用意されます。

大勢の招待客が全員食べても余るくらいの数が用意され、そして大抵、全員は食べないものです。

私が十人分、二十人分食べてもまだ余るに違いありません。

これはチャーンス?


いやいやいや、披露宴の主役の一人である私がゲストそっちのけで皆のものを貪るわけには。

はあーと溜め息が漏れました。


実家は良かったなあ。

レトナーク家でのパーティーを思い出します。

お父様は辺境伯ということもあり、華やかな戦歴を誇る軍人気質で豪快なお方です。


そんなお父様が開くパーティーは豪快で、料理は質より量。どどーんと大きな食材がででんと盛られた大皿ばかりです。

各国から取り寄せた様々な種類のお酒を飲み比べたり、べろべろに酔っ払った部下が一芸を披露したりと、それはそれは賑やかな宴会となります。

ですから私がどれだけたくさん食べても誰も気にせず、むしろ殊更盛り上がるのです。

普段の食事も然り。


それに比べて、こちらでの食事は量より質。

いかに高級な食材をちんまり食べるか、に価値を置いています。

素晴らしく美しい装飾が施された食器に、まるで絵画のように配置された手の込んだお料理。

食べるのが勿体ないと形容せざるを得ないその芸術にナイフを入れるときには、少しの罪悪感さえ感じます。

ああ、そんなことを気にせず、とにかく美味しいものをたらふく食べたい。押し込めすぎた欲求が、ぐるぐるととぐろのように渦巻いています。


あー、実家が恋しい……。

これはホームシックというやつかもしれません。

……もしくはマリッジブルー?


旦那様のブレット様は、国王陛下の従兄弟の息子(従甥というらしいです)で、お父様が公爵です。ゆくゆくはお父様の爵位を継がれます。


同じ貴族といっても、辺境を統治する地方の辺境伯レトナーク家と、お城に仕える中央の公爵サンドフォード家では、お家のカラーが全く違いました。

レトナーク家は軍人気質、サンドフォード家はお役人気質です。

ブレット様はお父様のように筋骨隆々ではありませんし。すらりと細身で、三つ揃えスーツがバリッとお似合いです。


四日前に一度食事を共にして以来、お会いしていません。

深夜に帰宅された日もあるようですが、書斎で寝泊まりされたようです。

「夫婦の寝室」と冠しただだっ広い部屋で、今日も私一人きり……。

別に一緒に寝たいとかではありませんが、一応心積もりはしていたんですよ?


いくら「政略結婚」といえど、夫婦になるのですから。跡継ぎを残すための行為は必須だと。


ですが新婚早々この調子です。ひょっとしてこれからもずっと妻の元には寄り付かずに、一生他人行儀でいるつもりなのでしょうか。


なんだかモヤモヤします。お腹は減るし。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ