なんとか帰路へつきました。
また先ほどの部屋へ戻り、ブレット様にブランケットをかけて待っていると、セオがやって来ました。
「お待たせー! ブレット卿、泥酔してるんだって?」
セオは空いたグラスとボトルを見て、目を丸くしました。
「わー、ちょっとこれ飲みすぎでしょ。約束に遅れたって言っても、一時間弱だよね? その間にこれだけ飲める?」
「店員さんによると、ブレット様は約束より随分早めに来られていたとか」
「あー、なるほど。話し合いは? 全然出来てない感じ?」
「はい。私が到着したときにはすでにこの状態で。起きられても多分、まともにお話できないかと。とりあえずソファーで横になって頂きたいんです。運ぶの手伝ってもらえます?」
セオはええーと嫌がりました。
「絶対無理、あそこまで運ぶなんて」
「リリア嬢は軽々抱き上げて、運んでたじゃないですか」
「女性はね。泥酔してる大の男だよ? 重さが違う。男は細く見えても筋肉質で重いんだよ。それにブレット卿、俺よりでかいし」
「だから二人で運びましょうって。セオが後ろから抱えてくれたら、私は足のほうを持ちます」
「無理無理。ブレット卿だって、そんな死体みたいな運ばれ方されたくないって。起こそう」
「えっ、でも」
「起きないのは、起こし方が甘いからだよ。でろんでろんだろうが、起きてとりあえず自力で立ってもらえたら、後は何とかなる」
そう言ってセオはブレット様の背中をバシッと叩きました。
「ブレットさまー、ブレットさまー、起きましょー」
大声で呼びかけながら、肩を掴んでゆさゆさ揺さぶります。
ブレット様が目を開けました。とろんと蕩けた瞳です。
「おはようこざいます。はい立って。立ちますよ」
ブレット様の脇下に腕を入れたセオが、強引にブレット様を立ち上がらせました。
ふらついたブレット様の手が当たり、円卓のグラスが倒れ、わずかに残っていたウイスキーがこぼれました。
「おっと。しっかり俺に掴まって。歩きますよー」
ブレット様に肩を貸す形で脇を支えているセオが言い、歩行を促します。
ブレット様がふらついた一歩を踏み出します。私も慌てて、反対の脇からブレット様を支えました。
ふらふらのブレット様でしたが、私たちの介添えで何とか歩き、細長い通路を渡ってカウンター付近のソファーまでたどり着きました。
「はい、一回ここへ座りましょうねー」
店員から水の入ったグラスを受け取ったセオは、ソファー前にしゃがみこんで、それをブレット様へ差し出しました。
「持てますかー。はい、しっかり持って。水ですよ。冷たいお水です、飲めますかー?」
酔っ払いの介抱に手慣れているセオを羨望のまなざしで見つめました。
セオが顔を寄せて話しかけると、ブレット様はふにゃふにゃと何やら答えます。
「家に帰るって。その辺で馬車を捕まえてくるから、寝かせないようにしといて。すぐ戻るから」
そう言い置いて、さっと店を出て行ったセオは本当に頼もしいです。頼りになります。
それに比べて、私のなんと頼りないことでしょう。
不甲斐なくて申し訳ありません。
ブレット様に話しかけましたが、ふにゃふにゃと何を言っているのかよく分かりません。
しかし喋っていないとまた寝てしまいそうですので、分からないなりに会話を続けました。
間もなくしてセオが戻り、再びブレット様を立ち上がらせて歩行を促しました。
今度は銀髪の店員が協力してくれ、セオと彼(美人すぎる男性でした)がブレット様を両脇から支え、馬車まで歩きました。
私とメイリーンは荷物を持ち、その後をついて行きます。




