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昨日の今日で、食材不足です。

セオは言いました。


「俺のことは置いといていいから、君はちゃんと君自身のことだけを考えて、どうしたいか言って。俺はそれをサポートする」


「セオ……」


うるっときました。

セオはどうしてこんなに良くしてくれるのでしょう。


「ブレット様とちゃんと話したいです。本当のことを話して、それで二度嫌われることになっても構いません」


真実を話したところで、許されるとは思いませんし、私の異常な食欲のことを知って余計に嫌われるかもしれません。

それでも誤解されたままよりはマシです。


「よし、分かった。じゃあ夜にブレット卿に会いに行こう。俺も一緒に行く」


「お待ちください」


押し黙っていたメイリーンが声を上げました。


「リシュー様の決意に水を差して申し訳ありませんが、疑われているお二人が揃って訪ねるというのは……。火に油を注ぎかねません。まずは私が一人で訪ね、ご面会のお約束を取り付けて参ります」


「メイリーン……」


「そもそも私が、ブレット様へ嘘を突き通すよう、リシュー様へ進言したのがいけなかったのです。責任を持って、必ずお約束を取り付けて参ります」


「火に油を注ぐ、か……確かにそうかもねぇ」


顎に片手を添え、セオは思案顔をしました。


「じゃあ、そうしてもらおう。ただし夜に女性一人で出歩くのは心配だから、俺の助手をつけるよ」


「助手?」


思わず室内を見渡しました。

この家に、セオ以外に誰かいるのを見たことがありません。


「今から呼ぶよ」


セオはそう言ってさっと掌を開きました。

いつどこから取り出したのか、灰色のマーブル模様の枠にはまった小さな手鏡が乗っています。

それを顔の前に構え、セオは自分の顔を映しました。鏡に向かって何度もウインクしています。

突然の奇行にぽかんとしていると、セオが言いました。


「今呼んだから。いる場所にもよるけど、夜までには来るよ」


「誰がですか?」


「だから俺の助手。来たら紹介するよ」


「今ので呼んだんですか?」


「うん。ここに映したものが、助手の見る物に映る。手にしてるワイングラスや、通り過ぎた建物の窓や、話してる相手の瞳にね。俺が現れてウインクしたら、すぐに来いって合図」


「そんな魔法みたいなことが……」


「ありえなーいって顔してるね。まあ細かいことは気にしないで」


その助手さんとやらが来るまでの間、とりあえず腹ごしらえだとセオが言い、家中の食材を使ってメイリーンが料理を始めました。


「あー、二人が来るって分かってたら、もっとたくさん買い込んでおくんだったのに」とセオが悔やみます。


「いざとなったらうちへおいでとは言ったけど、流石に昨日の今日で、とは思わなかったし」


「う、ごめんなさい……」


私もまさかこんなことになるとは、想像していませんでした。

本当のことを打ち明けた結果、ブレット様と一緒にいられなくなるかもしれないと覚悟はしましたが、まさか昨日の昨日とは。


特に話し合いも必要とせず、私の言い分を待つでもなく、さっさと背中を向けられたブレット様。取りつく島がありませんでした。


改めて話し合いの機会を得られるのか、不安です。



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