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潔癖なお方は嘘が許せません。


部屋へ戻り、メイリーンを侍女部屋へ返し、一人で待ちました。

いよいよです、緊張します。

しかし待っていると長く感じられるのが時間というものです。

遅いです、ブレット様。まさか忘れていませんよね?


緊張することに疲れた頃、ようやく部屋がノックされ、ブレット様が来られました。

向かい合ってソファーに座ると、改めて緊張がみなぎります。


ブレット様と夜に部屋で二人きり……

晩餐時にはきっちりとベストスーツを着込まれていましたが、白いブラウスの上にナイトガウンを羽織られているだけのお姿は、普段とは違う雰囲気です。

しかし寛ぎ用のガウンとはいえ、深い藍色のシルク生地と、きらびやかな銀糸で刺繍された凝った模様は、はっと目を引く美しさです。とてもよくお似合いです。


「そのガウン、とてもよくお似合いですね」


「そうですか、ありがとうございます」


はい、会話終了。

と言っている場合ではありません。

言わなくては!


「あ、ああの、私……」


言え、言うのよ、リシュー。勇気を出して!


「……先日、キャシーおば様がいらしてて」


言えない~!

咄嗟に舌が他の話に逃げてしまいました。


「ブレット様の昔の話を色々お聞きしました。すごくモテてらしたとか、騎士団で活躍されてた事とか」


そうです、まずは世間話的な。雑談から始めて場を暖める作戦で!


「そうですか、叔母が余計な事を。聞くところによると、私の留守中に叔母二人が頻繁に訪れているとか。それが心労だという話であれば、私からきっちりと言っておきます」


「いっ、いいえ違います。キャシーおば様のお話は楽しいですし、エイダおば様のジャミットは可愛いですし、心労だなんて全然! そういう話ではなくて」


むしろ、おば様たちの手土産とジャミットの魅了のお陰で、ほんのり幸せ気分になれます。


「では、大事な話とは何でしょうか」


う、この冷ややかな視線を浴びると言葉が詰まります。


「あの、実は、私…………」


「セオとのことですか?」


「えっ! ご、ご存知で……」


「当然でしょう。『お祓い』と称して裏でコソコソと。騙すなら騙し通せば良いものを。わざわざ打ち明けることを決めた、あなたの覚悟は分かりました。明日中に荷物をまとめて、この屋敷から出て行ってください。後の事は好きにすればいい」


頭が真っ白になりました。

出て行ってくださいって。え?

荷物をまとめてって。え?

好きにしろ?え?


すくっとブレット様は席を立ち、無言で部屋を去りました。

ぱたりとドアが閉じた音が聞こえ、私の脳みそはようやく理解をし終えました。


嫌われました。

完璧に、木っ端微塵に砕けました。玉砕です。


しばらく茫然自失としていましたが、気を取り直しました。悲劇のヒロインぶっていても仕方ありません。

悪いのは私ですから。

秘密を抱えたまま結婚し、嘘をつき、嘘を隠すためにまた嘘を重ね。


正直に話して謝れば済むと思ったのが、甘かったのです。

ブレット様は許してくださいませんでした。

セオが言ったように器が大きい小さいの問題ではなく、ブレット様がそれだけ潔癖な方だということでしょう。

私が異常に食べすぎることよりも、嘘をついて騙していたことが許せないという口ぶりでした。


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