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ワケあり辺境伯令嬢、嫁入りします。

ああ神様、お腹いっぱい食べられる環境に生まれ育ったことを心から感謝いたします。

辺境伯のお父様の下、すくすくと育った田舎令嬢リシュー・レトナーク、 本日嫁入りいたします。


「すまんな……リシュー。何とか上手くやってってくれ」


「はい、お父様。そんな顔をなさらないで。何とか上手くやっていきますから」


お父様が心配しているのは、結婚相手のブレット様が女嫌いの堅物だと有名だからですわ。

女嫌いなのに結婚っていうのも変な話ですが、これはガチガチの政略結婚ですから、お互いに損得勘定です。


国境を守っている辺境伯のお父様は強大な軍事力を有し、王や中央貴族にとって頼もしい存在であると同時に、脅威ともなり得ますから。

他国へ寝返ったり、謀反を起こしたりしないか、常に警戒される身。

もちろんお父様は国へ忠誠を誓っていて、そのようなことは決してなさらないはずですが、疑われ出したらキリがありません。


そこで中央貴族との信頼関係を深めるため、「政略結婚」の出番です。

我がレトナーク家から王族へ嫁を出し、血縁関係を結ぶというわけです。


そういうわけで、六つ上のお姉さまはすでに王族へお嫁入りしています。

旦那様は国王の親戚筋、グリーンハルシュ公ユリウス様。お二人の間には男女の双子が生まれ、それはそれは仲睦まじいご様子。


なのでお父様は私に言いました。私は無理をしてお姉さまに追随しなくても良いと。

三人いる娘のうち、一人くらいは地元にいてほしいと思ったのかもしれません。

幼なじみのサイラスとの婚約を祝福してくれましたわ。

サイラスはお父様の親友であり腹心であるオヒギンズ大佐の嫡男で、幼い頃より家族ぐるみの付き合い。

私たちが結婚すれば、家同士の結束はより強まり将来安泰だと皆が期待していました。


なのに青天の霹靂で訪れた婚約破棄。破棄というか放棄。

旅の踊り子と恋に落ち、駆け落ちしやがったのですわ、あの男。

出会ってすぐの女にぽーっと熱を上げて、幼なじみの婚約者も何もかも捨てて。


別れを告げに来た彼を問いただしましたわ。

その人のどこがいいの?

私のどこが悪いっていうの?


「リシューは悪くないよ、悪いのは僕だ。分かってる。でも、どうしても君にはときめかないんだ。アイラみたいな色気を感じない……。君と食事してると、胸やけしてきて料理がまずくなる。げんなりする」


それはそれはショックでしたわ。

頭をハンマーでガツンと殴られたような。

それ以来ずっと霞がかかったようにぼんやりしていて、気づけば「行き遅れ」と囁かれるような年頃になっていて、焦り始めた周りが持ってきた縁談に素直に頷いていましたわ。


ブレット様が女嫌いの堅物というのは、これ幸いです。

私だって懲り懲りですもの、もう男の人は。もう恋なんてするもんですか。いえ、できませんわ。私には。

私のような女に本気でときめいて、恋をしてくれる男性はいないのでしょう。

レトナーク辺境伯の娘、という肩書きを好いてくれる人はいても。

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