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O08 帰らずのムサシ

「おい……嘘だろ? エリス確りしろ!」

「煩いよ! 生きてるよ……『ハイ・リカバリー』」

「いったい何があったエリス?」

「お前が手間取らせたのだろ?」


 こっちは必死に魔物を倒してるというのにロクームとエリスが痴話喧嘩してるし鬱陶しい。

 隣で武がニヤニヤしながら見てるし。

 随分と性格悪くなったな。

 しかも片手間に魔物を倒してるような余裕ぶりが腹立つ。


 バコっ!


「いたっ!」


 武にイラ付いていたら、注意力散漫になり横から魔物に頭を殴られた。

 マジいて~。

 血、出てるし。

 俺も魔法使えるかな。


『リカバリー』


 なんとなしに頭を抑え、初級回復魔法(リカバリー)を唱えた。

 みるみる傷が塞がった。

 俺って魔法使えたんだな。

 だけど直感でわかる。

 俺は初級までしか使えない。

 何故だろう?

 やっぱ自分の体だからだろうか……。

 直感でわかる時がある。


 そんな事を考えていたら、甘い匂いがして来た。

 そして目の前に可愛い娘がいる。

 やばい。

 ビッグマグナムが覚醒した。


 バコっ!


「いたっ!」


 横から殴られた。


「サキュバスなんかに惑わされるな。四歩下がれ! サキュバスの有効圏外だ」


 殴ったのは武だ。

 何で有効範囲がわかるんだ?


「というかお前は平気なのか?」


 下がりながらそう言った。


「童貞と一緒にするな」


 むかっ!

 記憶がないだけで童貞じゃないよ。

 たぶん。

 きっと、うん絶対。


「それより下がって投擲で戦え」


 イライラするな。

 サキュバスの特殊攻撃が解除されると処理できなくてイラつくのかな?

 まだビッグマグナムが覚醒したままだし。

 というか投擲武器も限りあるんだけどな。


『ファイヤー、エレキー、ブリザード』


 試し打ちも兼ねて炎系初級魔法(ファイヤー)雷系初級魔法(エレキー)氷系初級魔法(ブリザー)を使ってみた。

 全部使える。

 初級なら一通り使えるようだな。

 魔法良いな。

 投擲だけでなく魔法も混ぜれば武器を節約できるな。

 というかすっげーイラ付くのはあの二人。


「いつまで痴話喧嘩してるんだ? 魔物どもの相手をずっと俺達にさせてるなよ」


 助けに来たのにいちゃいちゃイラつくな。

 お前らも手伝えよ。


「ばっ! 治、余計な事言うな。このままいけば良いもの見れただろ?」

「……お、お前ずいぶんエロくなったな武」


 正確にはゲスになったな。


「そりゃそれだけ歳を取ったからな」


 歳の問題ではないだろ。






 さて、そんなこんながあったがエーコの元に帰って来れた。

 こっちも無事で良かった。


「エーコ、お疲れ様。助かったよ」


 とりあえず労いの言葉をかける。


「アークが……」


 エーコが何かを言い掛けて俺の隣にいる武に視線を向け言葉を止めた。

 タイムリープの話でもしようとしたのだろうか?

 ややこしくなるからな。


「あ、いやアークも無事で良かったー。それでそっちの人はー?」

「武って言って異世界転移する前の世界のダチ。武もこの世界に来てたから手伝わせた」

「あ、エーコです。アークを助けてくれてありがとー」


 ぺこりとエーコが頭を下げる。


「治がこっちで同居してる人だね? エーコちゃんって言うのかー。可愛いね……良かったら俺と遊び行かない?」


 何言ってるんだ? こいつ。


「流石アークと同じ世界の人だねー。同じ事言ってるよー」


 ガク!


 首が落ちる。

 同じにされた。


「こいつのはどうせ冗談半分。俺はマジだぞ」


 と、武が説明した。

 そうそう。

 だがお前が言うのは釈然としない。


「俺の女に手を出すようなら殺す」


 とりあえず釘を刺しておこう。


「私、アークのじゃないって言ってるでしょー」


 顔を真っ赤にし頬を膨らます。

 それがまた可愛い。


「俺の(オンナ)だろ?」

「そうだけどー…中身違うでしょー」

「ははは…仲良いな」


 武が笑い出す。


「このやり取りでそれ言われるの釈然としないよー」

「まあでも安心したよ。これからも治を宜しく頼むな。聞けば記憶無いって言うじゃないか」

「うん…それは任せてよー」


 無い胸を張るエーコ。


「じゃあこのままじゃ夜の営みができんだろうから、俺は他の部屋借りて来るな。また明日」


 とんでもない爆弾を投下して出て行きやがった。

 気まずい。

 そもそもサキュバスの特殊攻撃をくらい、挙句にロクーム達のイチャイチャを見てしまったから、余計ソワソワしてしまう。


「えーーーーーっと……2人になれたからしちゃうー?」


 エーコが戸惑いがちにそう言う。


「……うん」


 まぁその気はないのだけどノリで答えてしまった。


「………」


 エーコが無言になった。

 視線が痛い。

 非難する眼差し。


「賭けは俺の勝ちだしデートを(・・・・)しちゃうよ」

「………」


 まだ無言。

 今度は非難するものではない。

 何かを言いたいけど言って良いものか悩んでるか感じだ。


「……前から思ってけどアークは2年で随分変わるんだねー」

「そうなの?」

「今はしょうもない事ばかりだけどーはっきり話すよねー」


 しょうもないのか……。

 まぁ中学生男子ってのは、同じ年の女子から子供みたいと思われているからな。

 俺の中身は15歳。

 エーコと同じだからそうなるのか。


「記憶をなくす前は違ったの?」

「しょうもない事を言うのは同じだけどー」


 同じなんかい。


「でも、口数は少なかったし、きょどってる事もあったなー」


「口数少なくきょどる? 想像つかないな」

「アーク曰くコミュ症だってー」


 マジか。


「あ、武が俺は引き篭もりになると言っていたから、もしかしたら人とあまり接しなくなってコミュ症になったのかな?」

「ナターシャお姉ちゃんは詳しく聞いてたみたいだけどー私は聞いてないから詳しくわかんなーい」


 だからナターシャさんって何者だ?

 直ぐ出て行くから全然わからない。

 わかるのは綺麗でおっぱい大きくて、柔らかいって事。

 いかんいかん。

 思考がまたそっちに。


「じゃあ俺は疲れたから、他の部屋を借りて休むね。エーコもお疲れ様」

「一緒の部屋じゃダメなのー?」


 今はまずい。

 サキュバスとロクーム達の件があるから。


「今日は何もしない自信ないから、1人で寝る」

「わかったー。じゃあおやすみー」


 でも、ちょっと寂しいのであった……。




 翌朝、エドワード国王に呼び出された。

 エーコと2人で王間に向かう。

 ロクーム、エリスは先に来ていた。

 エリスのお肌が昨日よりキッラキラで、ロクームが何故かやつれているのは……きっと気のせいだ。

 王座に腰掛けたエドワード国王が俺達が来たのを確認すると口を開いた。


「先程、エド城より使者が来た」


 エド城? 貴方の城?

 いやフィックス城だから違うか。


「ムサシがクロード城に行ったっきり帰って来ないそうだ」


挿絵(By みてみん)


 ムサシって誰だ?


「それでクロード城の者は何と?」


 エリスが聞く。


「来てないと」

「はぁ!?」


 ロクームが過剰に反応した。


「それでうちに来てないかと尋ねてきたわけだ」

「なぁエーコ、ムサシってのは11人の英雄の1人」


 小声で聞いた。


「そうだよー」


 マジかよ。

 このパターンはムサシが死んでいて、またタイムリープするのか?

 やっといろいろ上手く行ってたのに……。

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