R7 いつまで痴話喧嘩してるんだ?
「おい……嘘だろ? エリス確りしろ!」
目の前でエリスが倒れた。
何で?
今何が起きたんだ?
何でエリスが倒れているんだ?
もうわけがわからねぇよ……。
とりあえず抱き上げた。
バコ!
そしたら顔面をぶん殴られた。
だから何で?
わけわからねぇよ……。
「煩いよ! 生きてるよ……『ハイ・リカバリー』」
そう言ってエリスは自分に中級回復魔法をかけて立ち上がる。
「いったい何があったエリス?」
「お前が手間取らせたのだろ?」
えっ!? 何の話だ?
「まったくわからんって顔だなロクーム。これは何だ? これは」
エリスが俺の息子を握る。
はふ~。
臨戦態勢に入ってるだけあって敏感だ。
って何で臨戦態勢に入ってるんだ?
あ、そう言えばサキュバスだ。
あれに惑わされたんだ。
「いつもエリスが奇麗だから、こうなったんだ」
ここはご機嫌を取っておこう。
ぎゅ~~~~~。
息子を握ってる手の力が強くなった。
「ふ・ざ・け・る・な!」
「痛い! 痛い! 痛い!」
怖い怖い怖い。
エリスは何でこんな怒ってるんだ?
「魔物に惑わされたんだから仕方ないだろ」
「もう怒るのも止めるから、目移りしないでくれ」
「だから魔物に……」
「町の女は?」
遮るにように言われた。
「それは相手してあげなきゃ可哀想だったし」
そう断じて俺は悪くない。
相手して欲しそうだから相手しただけだ。
子供がお腹にいたせいでエリスに手を出せなかったからではない。
「私は可哀想ではないのか?」
「……いや誰もそんな事は……」
「もう一度言う! 許してやるから目移りするな!」
顔が怖いですよエリスさん。
「でも……」
女の子は抱いてあげるものだろ?
町の女の子だってベッドを望んでるなら応えてやるのが男の甲斐性だ。
「わ・か・った?」
またぎゅーっと息子を強く握られる。
「痛い! 痛い! 痛い! わかった。わかったから」
というかさっきからずっと握ってるせいもあって一度処理したくなって来た。
だからそう言っておこう。
「いつまで痴話喧嘩してるんだ? 魔物どもの相手をずっと俺達にさせてるなよ」
ん? 誰だ?
さっきから誰かが戦っているな。
「ばっ! 治、余計な事言うな。このままいけば良いもの見れただろ?」
「……お、お前ずいぶんエロくなったな武」
「そりゃそれだけ歳を取ったからな」
と勝手な事ばかり言ってくれているが、その間ずっと魔物達を倒してくれている。
だが、エリスが顔を真っ赤にして息子から手を離しパっと俺から離れた。
ちっ! 余計な事言うからだ。
「あ、あー……おっほん。助太刀感謝する」
エリスが咳払いをすると見知らぬ2人に声をかける。
そんな事より俺の息子の相手しろよ。
仕方ないので4人で魔物達を全滅させた。
「ところで貴方達は?」
息子ではなく魔物の処理が終わった後、エリスが最初に口を開いた。
「えっ!? 俺の事知らない?」
さっきオサムって呼ばれてた奴が首を傾げる。
知らねぇよ。
「どこかで会ったか?」
エリスが問う。
「あーすまない。フィックス城で一方的に見かけてただけだ。俺の名はアーク」
オサムって呼ばれていなかったか?
「先程、オサムと呼ばれていたようだが?」
エリスも同じ事を思ったようだ。
「それはこいつ……武って言うんだが、この武の昔の知り合いに似てるらしく……まぁあだ名だな」
誤魔化すよう言っている。
「なっ? 武」
「あ? あーうんそれでも良いや」
「それで何でここに?」
エリスは話を進める方向で行くようだ。
「ここが罠で危険だって情報を掴んで助っ人に来た。間一髪で良かった」
「それはありがたい。先程も後ろから狙われたとこも助けられたしな」
えっ!? そうだったの?
「では、ここでの用事を終わらせてフィックス城に戻ろう」
「ああ、そうだな」
2人でどんどん話を進めているな。
俺は蚊帳の外。
タケルとか言われていた奴は興味なさそうにしていた。
そうして俺達は地下10Fに向かった。
結論から言おう。
ここには何もなかった。
あんな大がかりな罠とかあって結局何だったんだ?
というわけで迷宮から脱出するとしよう。
その道中だ。
タケルがにわかに信じがたい事を言い出した。
「だから、俺はこの世界の人間じゃないんだよ」
異世界人だという。
そしてこの世界の事を聞きたいと言い出した。
アークの手伝いで、ここまで来たのは俺達にそれを聞くためだとか。
ならアークに聞けよ。
「いや、俺よりトレジャーハンターのが詳しいだろ?」
これがアークの談だ。
仕方ないので説明した。
4年前まで何十年と続いていた精霊大戦を俺達を含む11人で終結させた。
その首謀者であるラフラカが精霊を統べる精霊王を吸収したせいで、ラフラカを倒した時に全ての精霊が消滅した。
しかし、時間をかけて少しづつ精霊は復活して来ていた。
ちなみに人が精霊と契約する事で魔法を行使出来る。
つまりラフラカを倒した瞬間、全ての魔法が消えた。
それが時間をかけて再び行使出来るようになってきたというわけだ。
そう話してるうちにフィックス城に到着した。
元々アークはエドと知り合いらしく俺達を手伝ったら戻るつもりだったらしい。
タケルはついでだからという軽いノリで着いて来た……。
「戻ったか……うん? 1人知らぬ者がいるが?」
玉座に座ったエドが訝しげにタケルを見る。
「俺の昔の知り合い。エルドリアで偶然再会して、せっかくだから手伝わせた」
とアークが説明した。
「タケルという。よろしく」
「ああ、よろしく。ではせっかくに来たのだ……ゆっくりして行くと良い」
「ではお言葉に甘えるとしよう」
それにしも王相手に委縮しないな。
まぁエドは堅苦しいのを嫌うから構わないだろうが、初対面では大抵の者は畏まるのだがな。
「それでアーク、今回の戦争では助かった。事前に情報を聞けて良かった。まあそれでも被害はそれなりにあったがな……まったく戦後を考えると戦争なんて無駄だと思うがな」
エドが嘆息するように言う。
うん? 戦争があったのか?
「無事で何よりだ……それでエーコは?」
「ああ……部屋で休んでるよ。戦争が終わった後も事後処理も手伝ってくれてな。助かったよ」
「そうか」
そう言ってアークが王間から退出した。
タケルもそれに続く。
うん? エーコと知り合いなのか?
ならますます精霊大戦の事とか知ってるだろ?
タケルに自分で教えてやれば良いのに……。
つくづくわからん。
「それで……ロクーム、エリス、迷宮はどうだった?」
「意味がわからない」
エリスが簡素に言った。
「というと?」
「罠だからけで、結局何もなかった」
俺が補足した。
その後、詳しくエドに話し、その日はフィックス城に泊まった。




