O07 痴話喧嘩してる
俺と武はロクームが向かった屋敷跡の迷宮を旧交を温めつつ目指す。
俺は記憶がないが、武からすれば4年ぶりの再会だ。
「あれ? 4年? 3年じゃなくて?」
「治が、いなくなったのは俺の時間軸では3年前だな」
時間軸という言い方するのは、異世界によって時の流れが違うかららしい。
もし俺に記憶があれば3年どころか5年や10年ぶりの再会の可能性もある。
逆に1,2年の可能性もあった。
「なのに4年ぶり?」
「うーん……あー……1年会ってなかったんだよ」
なんか歯切れが悪いな。
「俺、引っ越しでもしたのか?」
「いや引き籠った」
「………」
何と?
「今、何って言った?」
「引き籠った」
うん。聞き間違いじゃないな。
「何で?」
「……俺の口からは言いたくない」
気になるな。
じ~~~~~~~~~~。
「そんなに見ても教える気ないぞ」
「ちぇ! それでロクリスってどんな奴らなんだろうな?」
「おい! それをお前が言うか?」
「俺、FFOってゲームやってた記憶ないし」
「俺、そのゲームやっていないぞ」
マジかー。
じゃあダークの事もあんまり知らないか。
「そうか……まぁ今向かってるとこは結構危ないとこらしいから、戦力を知りたかったんだけどな」
それ以上に問題はエリスが死ぬ前に間に合うかどうかなんだけど。
「戦力と言えば、記憶のないお前は戦えるのか?」
「あまり期待しないで欲しいってとこだな。まだこの肉体がどこまで出来るか探り探りだし」
「ちなみに武器は剣なのか? 腰に剣の他にもいろいろあるようだけど」
「本来の得意武器は小刀らしいけど、扱いを覚えていないから剣のが扱いやすいかなって。他の武器は投擲用。そういう武は? 武器持っていないようだけど?」
そう武は武器を持っていない。
「一応あるぞ……『ストレージ』」
あ、空間が割れた。
そこに武が手を入れる。
ストレージとか言っていたから収納魔法か?
そして二刀拳銃を取り出す。
「銃が得意なのか?」
「いいや」
「おい!」
じゃあ何で出した?
「攻撃の幅を広げる為に銃も持ってるだけ。他にも剣もある。得意なのはコレだな」
拳を突き出す。
ほー拳闘士か。
まぁ見るからに動きやすそうな胴着の恰好だもんな。
「じゃあ戦いは、ちょーお前頼みになるからよろしく」
「……だよな。記憶がないんじゃそうなるよな。は~」
武が溜息を零した
ザ・他力本願で行くしかないっしょ。
そうして昔の話等をしてるうちに迷宮に到着して、あっという間に地下3Fに到着した。
それまでに扉がいくつもあったが、全て開錠されていたからだ。
おそらくロクリスが開錠したのだろう。
「やな気配がするな」
武がポツリ呟く。
「どうした?」
「何かいる」
何かって何だよ……と思っていたら鬼のような魔物が沸いた。
「何で魔物がいるんだ?」
「いたらおかしいのか?」
「うーん……記憶がないから詳しく知らないが昔になんやかんやあって魔物はいなくなったらしい」
だけどおかしい。
最初のタイムリープで魔物が出現したのは目覚めて10日後だったけど、まだ4日しか立っていない。
もしかしたらここから沸いた魔物?
「漠然としてるなー。まぁとっとと片付ければ良いだけだけどな」
「だなー」
俺はそう言って剣を抜き、魔物に突っ込む。
不思議なもので人間相手じゃなければ抵抗はない。
「ふん!」
ザン! ザン! ブスっ!
次々に斬り裂いて行った。
「動きがチグハグだな。記憶がないとそうなるのか」
武が戦闘を俺に任せて何か呟いている。
「何が?」
「肉体的にはもっと動ける筈なのに無意識にセーブしてる感じがある。あと剣の扱いがまるで素人」
「うるせー」
わかってるよ。
肉体任せに剣を振ってるだけだ。
動きをセーブしてるのも怖いからな。
例えば2歩踏み込みたいのに全力で踏み込んだ結果、4歩進んでしまうとかありそうだし。
「つーか……冷静に分析していないでお前も戦えよ!」
そう言ってると武の右側から鬼の魔物が這い寄って来た。
ブンっ!
それをそっちを見ずに裏拳1つで終わった。
踏み込みも何もあったもんじゃない。
無造作に腕を振るっただけだ。
「何か言った?」
挙句に首を傾げて言ってくる。
わざとだろ?
ムカつく野郎だぜ。
結局動き回ってた俺より高い戦果を上げてた。
そして次に進み地下5F到着
「何だこの扉?」
ぶっ壊れているぞ。
「しかも溶けた後があるな。ロクリスってのは高火力な炎系魔法を使えるのかね?」
武の言う通り、溶けている。
エーコのを何度か見た。
たぶん炎系上級魔法だな。
その後もそんな扉が続く。
これ開錠が面倒になったな。
そして地下8F。
「これどうする?」
俺は武に話を振った。
目の前が崖で、下が溶岩になってる。
エーコがいれば重力魔法を使って貰えるんだけどな。
「飛ぶ」
「はっ!? お前は飛べるかもしれないが、俺は無理だぞ」
『ストレージ』
武が収納魔法を唱えて、空間に亀裂が走る。
そこに手を入れロープを取り出した。
「これをお前のナイフにくくりつけな」
言い終わると武がジャンプで軽々越えて行った。
デタラメな。
「ロープを付けたらナイフを投げろ! 投擲は得意なんだろ?」
武が向こう岸で叫んで来た。
俺は言われた通りロープが付いたナイフ投げた。
武はナイフを掴む。
何で刃先を平然と素手で取れる?
「ロープを確り持ってろ」
そう言うとロープを一気に引っ張った。
「ぎゃーーー!!」
俺の体が一気に武の方へ引き寄せられた。
つうか、これどうやって止まるんだ?
そう思っていると武に抱き止めて貰えた。
「男を抱く趣味はないんだけどな」
「お前が言うな!」
だったらそんな手段取るなよ。
ってわけで次は地下9F。
そこで遂にロクリスを見つけた……。
「魔物にまでもか……節操がなささ過ぎるぞ」
「最近誰かさんがカリカリしてるからこっちだって溜まってるんだ」
「何が溜まってるだ? 昨日襲ったの誰だ?」
「あーもう! 煩い! 邪魔だ」
女はおそらくエリスだな。
ロクームがエリスを突き飛ばしやがった。
何やってるんだ? この男は。
しかもエリスは魔物と戦いながら傷だらけなのにロクームはフラフラ歩いてるだけ。
「痴話喧嘩してるな。しかも下世話な内容を含んでるし」
「違うぞ……あれはたぶん男を惑わす魔物、サキュバスだ」
何だって?
「く! 鬱陶しい! ぐはっ! このー」
エリスが鬼の魔物の棍棒を食らった。
まずいな。
あ、背後から頭をド突こうとしてる奴までいる。
俺は咄嗟に投擲を行ってエリスの後ろにいた魔物を倒した。
「おい! ロクーム! ロクーム! いい加減にしろ! 貴様らも邪魔だ!」
エリスはロクームを助けようと必死に暴れていた。
剣の二刀流で次々に斬り裂いて行く。
鬼の魔物より鬼の形相で暴れる。
そしてエリスはロクームを惑わせていたサキュバスらしきを斬り倒した……。




