Ec4 何で魔物がいるのー?
アークが目覚めてから10日立った。
今日も買い出しで港町ニール向かう。
「……おかしいー」
私はポツリと呟いてしまう。
目の前にはブタみたいなのがいた。
「何が?」
横で聞いてたアークが訊き返して来た。
もう慣れたもので、私がいれば安心と思ったのか逃げ腰はしなくなり平然としていた。
「とりあえず……『ハイ・ファイヤー』」
ブタみたいなのを中級炎系魔法で燃やす。
「オサム、見てー」
「ん? ……死体が無い」
「これ動物じゃなくて魔物だよー」
「この世界は魔物までいるのか-。流石は異世界だな」
「いやいないよー」
いるのがおかしい。
ちなみに魔物は倒すと死体を残さず消滅する。
「現にここにいたじゃん」
「昔にいろいろあって魔物はいなくなったんだよー」
そう…前に精霊大戦というのが起きて、その時は魔物が跋扈していた。
だけど大戦終結後にいなくなった。
なのに何故?
「そうなんだ。でもエーコならちょろいでしょう?」
「そうじゃなくてー……魔物がまた徘徊を始めた原因をどうにかしないといけないのー」
でないとまた精霊大戦のような惨劇が起きてしまう。
歴史改変で無かった事になってるけど第二次精霊大戦も起きてしまい、それはアークがどうにかしたけど。
たぶんこれは、その時のと違う。
同じだとしても、今のアークじゃどうにも出来ない。
「うーん…つまり魔王みたいなのが現れたって事?」
言い得て妙ねー。
「そんな感じだねー」
「どうするの?」
どうしようもできなよー。
「なんとか出来る人にやって貰うしかないかなー。ただ私達もこれまで以上に気をつけましょー。魔物は動物より危険だからー」
「わかった」
そうしてアークが目覚めて13日目。
「オサム、買い出し行くよー」
「わかったー」
「オサム、今日は武器持ってー」
「えっ!? でも扱えないよ?」
「護身用だよー。魔物が現れたんだから、いざという時、自分で対処出来ないとー」
「エーコがそういうなら」
そう言ってアークは2振り小刀を腰に回した。
もう既に魔物なんてどうにかなっていれば良いけど……。
楽観視は良くないかー。
でも、前より強くなっていればアークを守れないかもー。
そんな事を考えながら家の外に出て、港町ニールを目指す。
「は~……不安的中」
溜息を零してしまう。
今日出現したのはミラーアーマー。
前回の買い出しで出現したブタみたいのより遥かに格上。
それに魔法耐性が強い。
「あれやばいの?」
「まぁね……『グラビティ』」
重力魔法でアークの真下の地面の重力を軽くする。
そしてアークを抱えて跳び、後方に下がる。
『グラビティ』
着地に際に再び重力魔法を使い衝撃を柔らげた。
「オサム、大丈夫?」
「んあ……ああ。大丈夫だよ」
耳まで真っ赤。
だから私を異性として見たらダメだよー。
『ミーティア』
私の手持ちの魔法で最強の隕石魔法で一気に倒さないとなー。
魔法耐性があるから他のじゃ効かないかも。
「すげーー。隕石だ。一気に倒れたよ」
「興奮してないで、周辺警戒してー」
「ああ……あっち。あっちに魔物の群れ」
アークが指差す。
『ギガ・ファイヤー』
上級炎系魔法を唱えると両掌から人が3人は乗れそうな火の鳥が飛ぶ。
それにより魔物の群れを焼き払った。
「数も増えてるー。どういう事ー?」
「エーコあっち」
アークが次を指差す。
周辺警戒を頼んだけどー、こうも簡単に次の魔物を指差すとは……。
記憶がなくてもダークの肉体だから、やっぱり気配察知能力は高いのかなー?
『ギガ・ブリザード』
上級氷系魔法で広範囲の吹雪を起こして、魔物の群れを氷漬けにした。
「エーコって大魔導士? 凄いなー」
「大魔導士? 良くわからないけどー普通の人より魔力はあるかなー」
ルティナお姉ちゃんは、精霊と人間のハーフだから昔は半精霊化というのが出来た。
半精霊化されると敵わないけど、今は半精霊化が出来ないから、この大陸で一番魔力が高いのは私かなー。
でも、だからって私は自分が強いなんて思っていない。
今回は良かったが、魔法が効かない魔物が現れたら私では無理。
それに比べ、ルティナお姉ちゃんは剣も使えるから、総合的には負けてしまうかなー。
「じゃあまた魔物が現れる前に早く買い出しして帰ろう」
「そうだな」
そして、アークが目覚めてから2週間が立った。
ドーンドーンっ!!
物凄い地響きがした。
「何だ?」
嫌な予感がするー。
「オサム、武器持って外出てー」
「えっ!? わかった。エーコが言うなら、そうする」
そうして私達は外に出た。
「……ギガンテス」
ギガンテスがゆっくりこちらに近付いて来ていた。
どうしよう?
全長6mもあって一撃が痛いんだよなー。
何より魔法が効かない。
斬撃耐性は低いけど、今のアークじゃ……。
「オサム、私が足止めするから逃げてー。あれはやばいよー」
「わかった」
アークが離れて行く。
魔法が効かないから足止めなんて出来るかわからないけど。
『ギガ・エレキー』
上級雷系魔法を唱えると両掌から雷を帯びた竜が飛び出す。
竜はギガンテスに巻き付く……が、効いてる様子が無い。
『ミーティア』
最強魔法の隕石魔法で隕石を落とす……やっぱり効かないかー。
『グラビティ』
それならギガンテスの真下の地面の重力を上げる。
これなら巨体だけあり、少しは足止めが……鈍重になっただけで、変わらずこちらに歩いて来る。
やがて目の前まで来られて、手に持つ木を引っこ抜いただけのような武器で殴り掛かって来た。
『シールド』
防御魔法を出し、それを防ぐ。
パッリーンっ!
しかし直ぐに砕けてしまう。
そしてそのまま殴られた。
「キャー」
私は一気にアークが走ったとこまで吹っ飛ばされた。
「エーコ、エーコ、エーコっ!!」
逃げてって言わなければ……。
アークの体は素早さに長けている。
それを発揮出来れば逃げれる筈。
「に、げてー」
ああ、どうしよう?
上級回復魔法をかけたいけど魔力を集中する余裕が無い。
私、死ぬのかなー?
ああ、もう視界は狭まって来た。
アーク、まだそこにいるの?
「うううああああああああ」
アークの叫び声が聞こえる。
でも、どんどん遠ざかって行く。
ごめんなさいナターシャお姉ちゃん。
アークを守れなかったよー。
「エーコっ!」
あ、まだそこにいたのかー。
「ギガンテスっての倒したぞ。だから死ぬな。エーコ」
はは、倒したんだー。
記憶はなくても、やっぱそれはダークの体だから、その身体能力を発揮できばいけるのかなー。
「あ、ーク、わ、たしね、アークの事、大好き、だったよ。異性って意味、じゃないけどねー」
精一杯私は笑った。
今のアークに言ってもわからないかもしれない。
でも伝えたい。
アークと暮らしたこの1年、私は本当に……。
「し、あわせ、だったよー」
ありがとうアーク。
私と一緒に暮らしてくれて。
お爺ちゃんが死んで一緒に暮らすようになったけど、本当に幸せだった。
だから、だから……。
「おね、がい、あ、ークは生きてー」
まだまだ伝えない事、いっぱいあるよー。
でも、もう意識を保てない。
ごめんね。アーク――――。




