25 世界が色づく時
俺は、その日食って行く分を稼ぎながら目的もなく転々とし、気付くと灰色の生活3年目を迎えていた。
今はウエストックスに来ていた。
これまでの2年、特に誰とも会わなかった。
どこかにいるかもしれないダークに遭遇するかと思ったが杞憂に終わる。
だけどこの日は違った。
思わぬ人物と遭遇した……。
「あ、お父さんやっと見つけたー」
エーコちゃんだ。
お父さん?
本物のダークが教えたのか?
にしても2年見なかっただけで随分大きくなったな。
「……違う」
「またそれー?」
またも何も、この歴史では初遭遇ですが何か?
「……俺は忙しい」
早々に立ち去ろうとした。
なのに着いて来る。
「待ってーどこ行くのー?」
「……狩りの仕事だ」
俺の今日の仕事は動物の狩りだ。
まぁ大半はこれか採取の仕事だな。
それくらいしかできないから。
極稀に魔法の教えるなんて事もあるけど。
初級魔法しか使えなくても、基礎を教えられるという事で、たまにそういう仕事をやる。
これが一番楽なのに一番金が良い。
「私も行くー」
何言ってるの?
「……来るな」
「何でー?」
「……父ではないからだ」
「は~……もー約束忘れたのー?」
溜息を付かれ頬を膨らましながら言う。
知らんよ。
ダークと何の約束したんだよ?
無視しよ。
俺はそう決めた。
「ねぇねぇ何を捕まえるのー?」
無視。
「大きい獲物ー?」
無視。
「あ、鹿だねー」
無視。
「すっごーい。直ぐ仕留められたねー」
無視。
「じじぃがくたばったんだー」
無視……ん?
ラゴスが逝った?
「それはご愁傷様だな」
「やっと反応したー」
それは反応するだろ。
「約束したよね?」
だから何の話だよ?
「……何の?」
「じゃあこう言えばわかるー?アークさん一緒に暮らそうー」
えっ!?あ……。
何で俺は忘れていたんだ?
真っ先に約束したのはエーコちゃんだろ。
ナターシャちゃんがダークと一緒にいたのを見て目的を失ったと思い完全に忘れていた。
俺は何やってるんだろ。
「覚えているのか?」
俺は耳を疑った。
でも、もしあれが幻聴のたぐいでないなら、目的を持てる。
「うん覚えてるよー。アークさんこれ持ってるよね?」
そう言って服の中に入れている首からかけられたチェーンにハメられたティーの指輪を取り出した。
「ああ」
俺も同じものを取り出す。
「不思議だよねー?1つしかない筈の物が2つあるのってー」
確かにそうだな。
「それとね全部覚えていないだー?」
「ん?どういう事だ?」
「アークさんと会った事、話した事は覚えているんだけど、それ以外は覚えていないのー」
「というと俺が時空間の扉に入った事とか?」
「それは覚えてるよー。例えばサラさんって人の事とかー……ルティナお姉ちゃんに聞いたんだけど思い出せないんだよねー」
「ルティナに会ったのか?」
「うん……半年前に会ったよー」
半年前か……。
「じゃあラゴスが逝ったのは?」
「1年前だよー」
そうか。
「もしかして、それからずっと俺を探していたのか?」
「そうでもないかなー?やる事あったしー。でも、たまに探してたんだよー」
「そうか……それは悪い事をしたな」
1年中ではないにしろ俺を探していてくれたのか。
その途中でルティナと会ったのだな。
「それで約束だよー。一緒に暮らそー」
「あーそれなんだが……すまない。俺は家を持っていない。だから直ぐには無理だ」
「良いよー……ルティナお姉ちゃんに聞いてそれは知ってたから」
まぁ転々とするって2年前に言ったからな。
「それでねー。私もやりたい事を見付けてね、ある人に弟子入りするんだー」
「やりたい事?何をするんだ?」
「まだ内緒」
「それは残念」
エーコちゃんがしたい事か……気になるな。
「アークさん……」
「それ止めてくれ」
「えっ!?」
「呼び方」
「……お父さん?」
「もっと止めてくれ」
中身違うっつーの。
「じゃあ何て呼べば良いのー?」
「アークお兄様」
「何言ってるの?」
心底呆れられた顔をされた。
「アークお兄様」
「そうじゃないよー。本気でそう呼ばせたいのー?」
「うん」
「どう見てもお兄さんには見えないよー?」
「中身はまだ10代だもーん」
「もーんって子供なのー?」
「中身の年齢はエーコちゃんがより少し上だけど、精神年齢は下かな?」
たぶん事実だ。
エーコちゃんが確りしてるから精神年齢が俺の中身ときっと同じかそれ以上だな。
「精神年齢が下ならアークちゃんにしようかー?」
「………」
マジで?
エーコちゃんに言われるとなんか地味にショック。
「は~……わかったよー。アークお兄様」
溜息を付かれたけど呼ばれた。
呼ばれたよー。
あー何か俺の中で金が鳴り響き天使が舞い降りて来てる。
天にも昇る気分だよ。
「エーコちゃん優しいね。一度は言われて見たかったんだよね」
「そんなのに私を付き合わせないでよねー」
「可愛いエーコちゃんを付き合わせないで誰を付き合わせるの?」
「ルティナお姉ちゃんとかー?」
「中身の俺より上だからルティナお姉様になるよ?本人嫌がるでしょう?」
「そうだねー」
「エーコちゃんだったら、たまに呼ばれたいな。たまに呼んでくれる?」
「しょうがないなーアークお兄様」
優しいなー。
しぶしぶだけど了承してくれた。
「たぶんお兄様って言われながら何かねだられた、何でも言う事聞きそうだな」
「そこまで嬉しがるとこっちが恥ずかしいよー」
あ、そっぽ向かれた。
ちょっとショック。
「じゃあ真面目にアークで。たまにお兄様で」
「え?でもー……」
再びこっち向いてくれた。
「今は無理でも一緒に暮らすんだろ?他人行儀は止めてくれ」
「わかったー。アークは今も転々と旅をしてるのー?」
「ああ」
「じゃあ一緒に行って良い?」
「勿論」
マジ天使エーコちゃんと旅が出来るなんてサイコーです。
そう思った瞬間、俺の世界は色づいた……。
俺ってつくづく単純でバカだな。




