R1 ロクーム=コード
俺の名はロクーム=コード。
世界一の冒険家だった。
世界一と言っても当時の俺は、このユピテル大陸しかないと思っていた。
それがサラと出会って世界の広さを知った。
今では恥ずかしくて世界一とか言えないな。
そもそも、もう冒険家はやっていない。
今は大陸一のトレジャーハンターロクリスの片割れだ。
もう12年くらい前になるだろうか。
俺はルティナと出会った。
何だ?この抑揚の無い喋り方をする女はと思った。
しかし、聞けば精霊とのハーフというではないか。
これはお宝の匂いがプンプンするぜ。
精霊なら各地のお宝が眠る場所を知ってるかもしれない。
だからルティナを口説き落として精霊からそれを聞いて貰おうという打算的なもので近付いた。
その為に、反帝国組織に入った。
だが、俺は本物のお宝に出会った。
エリス=シャール。
一目惚れだった。
帝国の在り方に苦悩する彼女見て力になりたいと思えた。
今までお宝の事しか考えてなかった俺が誰かの事を考えるとは、笑っちまうよな。
そして、つい魔がさして共に泊まった宿屋で、襲ってしまった。
しばらく険悪になってしまったが、俺を意識するようになってくれて結果的には結ばれた。
エリス=コード。
それが今の彼女の名だ。
そしてもうじき子供が生まれる。
俺は貧乏だった為に親に無理矢理働かされ、その報酬を全部取られた。
少しでも逆らえば殴られた。
機嫌が悪くても殴られた。
お陰で人の顔色ばかり見るようになった。
お陰で周りを見る目だけは良くなり、冒険家になれた。
それに貧乏だった為にお宝にしか興味が無い。
そんな俺が家族を作るとは思わなかったぜ。
ただ最近気になるのがダークがおかしい。
周りを見る目が良いお陰で昔と少し違うとこが目立って見えてしまう。
それはさておき、せっかく家族ができるってのにダームエルって野郎が、また精霊大戦を起こそうと画策してるのではないかと思える出来事が起きまくった。
それを阻止するべく廃墟となった貴族の屋敷に来たわけだが、俺が仕切る事になった。
エドにやれと言われて。
まあ周りを見る目だけは良くなったのだから構わないがな。
俺は最適なチームを作り、それぞれ振り分け屋敷の周囲に降下した。
俺の受け持つのは北側だぜ。
まあ東側は問題ないだろ。
俺的にルティナ、アル、ガッシュの3人が一番強いと思っている。
その3人のうち2人であるルティナとガッシュを配置したのだから。
だが、念の為に様子を見るか。
ガッシュが空を駆けまくってる。
相変わらず、ぶっ飛んだ事をやってるな。
アレ闘気で足場を作って蹴ってるんだと思うが、人が出来る芸当ではないだろ。
「う~」
唸りながら爪で引き裂く。
どうやら空の魔物を中心に倒してるようだな。
そのついでに地上の魔物を攪乱してると。
あれ絶対考えてやってないだろうな。
本能で出来てしまうから凄いよな。
『ハイ・エレキー』
ルティナが中級雷魔法を唱える。
ドン、ドン、ドン……ズサ~~っ!!
雷が何本も落ちその全てが大地を駆ける。
ルティナの魔導の力も異常なんだよな。
本来なら雷が1つ落ちるだけ。
それを複数落とすなんて普通はできない。
しかも完全にガッシュを無視してるな。
辺り一帯に雷を撒き散らして。
まあガッシュなら本能で避けると信用してるんだろうな。
次は西側。
ムサシ、エーコ、ラゴスのじーさん。
この3人が実は一番心配なんだよな。
ムサシは防御に硬い侍。
それを前衛にして、後衛には連携ができそうな2人の魔導士。
バランスは良いだけど、一人は腰を痛めてたやつ、一人はもう良い歳。
大丈夫かな~。
『『ハイ・ブリザード』』
ピキピキ……っ!!
お!ダブル魔法。
エーコとラゴスのじーさんが同時に中級氷魔法を唱えていた。
広範囲の魔物が氷漬けになった。
「秘儀・月」
シュシュシュシュシュシュ……パリーンパリーンパリーンパリーン……っ!!
そこをムサシの突きの連打である秘儀・月で次々に凍った魔物を砕いて行ってる。
問題なさそうだな。
で、俺は、それを横目で見ながらナイフを上空に投げまくっていた。
ヒューン……ブスっ!
ヒューン……ブスっ!
ヒューン……ブスっ!
ヒューン……ブスっ!
空飛んでる魔物だけを相手している。
だって残りの2人には近づきたくないし。
「ユキーーーーっ!!」
ユキが吹雪かせる。
流石は雪だるまの魔物だな。
「サンダースピアーっ!!」
そしてサラが電撃の力を秘めた槍を突き出しながら叫ぶ。
刃先から電撃が発射。
吹雪きで水浸しになった魔物達を次々に電撃を浴びせている。
水は電気を通すから、下手すると感電しちまうわ。
よってあんなとこに近付きたくない。
あ、ナイフが無くなった。
ならワイヤーフックで良いや。
ヒューン……ブスっ!
ワイヤーフックを突き刺し引き寄せる。
プッシューンっ!!
そして短剣で斬り裂いた。
ぶっちゃけ俺なんか地味だな。
2人で十分だろ。
だがまあせっかく家族ができるんだ。
さっさと終わらせないとな。
今後の事を考えるとダームエルって野郎にかかずってる場合じゃねぇ。
「ギガ・ファイヤー」
ルティナ&ガッシュの東側の方を見るとルティナが上級炎魔法を唱えていた。
ルティナの手から火の鳥が飛び出す。
人が3人乗れるくらいの大きさだろうが。
火の鳥だから乗りたくないが……。
ゴォォォォ……っ!
東側の戦場全体にそれは飛び回る。
半精霊化を行っていないのに良くまぁあんな自由に扱えるよな。
雷属性に耐性がある魔物が残ったので炎属性にしたのだろう
そして、どうやら空の魔物はガッシュが片付けたようだ。
地上の方もルティナが焼き尽くす。
だが、魔法が効かない魔物がいた。
あれはマジックアーマーだろうか……。
魔法は効かないし硬いんだよな。
闘気&打撃が得意なアルが天敵で、アルなら単独撃破が可能だが他の連中じゃ一人では厳しい相手だ。
『パワー、スピード』
連続魔法で筋力アップと素早さアップの魔法をガッシュにかける。
良い手だ。
ガッシュが更に空中で駆け回る。
目で追うのは困難だな。
ズッドーーーンっ!!
ガッシュが猛烈な勢いで突っ込んだ頭突きをする。
普段は爪での攻撃だが打撃の為に頭突きにしたのか。
やるな。
だが、効いてない。
昔、戦った時より硬くなってるのか?
昔ならあれで終わってたのにな。
ズッドーーーンっ!!
再び頭突き。
全く同じ場所にやっているのだからヒビくらい入りそうだけどな。
「ガッシュ、私の方へ来て、私を足場にするつもりでマジックアーマーに突っ込んで」
「わかったわかった」
シュィィ~ンっ!
そうルティナが言うと半精霊化した。
ルティナを足場だと?
パワーとスピードをの魔法をかけてるからただでは済まないぞ?
ガッシュがルティナの方へ突っ込む。
そして足場にするかのようにルティナの方へ足を向ける。
『シールド、ハイ・ファイヤーっ!』
なるほど。
そいう事か。
シールドでガッシュの足をガード。
そこにハイ・ファイヤーを当てて吹っ飛ばすのか。
ドッゴーーンっ!!
ガッシュのパワーがかかった脚力と合わさってかなり加速をしている。
ルティナも上手いな。
ガッシュが蹴るのに合わせてハイ・ファイヤーを使ったな。
タイミングがずれれば、加速しなかったぞ。
更に半精霊化でハイ・ファイヤーの爆発力が増してる。
ズッドォォォォンッッ!!
ガッシュの頭突きがマジックアーマーを貫いた。
あ、でもガッシュの頭がパックリ割れている。
そうなるとわかっていたのか、ルティナも空を飛びガッシュに追従していた。
「エレキー」
ドーンっ!
マジックアーマーの前を通った時にトドメを入れた。
ガッシュのよって穴が空いていたのでそこに初級雷魔法を叩き込んだのか。
そして、ルティナはガッシュの前に降り立つ。
『ギガ・リカバリー』
上級回復魔法で即座に割れた頭が塞がる。
というかガッシュを危険に晒すのはどうなんだ?