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11 廃墟となった貴族の屋敷

2日かけて俺がダークの話を語り終えた。

ナターシャちゃんはしばらく黙り込んでいる。

やがりおずおずと口を開く。


「オサムはどうして、ダークの事、詳しいの?見てたってどういう事なの?」

「あー……俺がいた世界では魔法のように物を映し、娯楽として物語を楽しめるんだよ」


VRMMOのF(ファースト・)F(ファンタジー・)O(オンライン)をプレイしたと言っても通じないだろう。


「……つまりオサムは人の不幸を娯楽として見てたと?」


やばっ!

少しドスが入ってる。


「いやいや、えっと何て言うかあれあれ、この世界で言う絵本と同じ」


めちゃくちゃ慌てて言葉を探す。


「絵本?」

「そうそう……作者がいる創作物だと思い込んでいたんだよ。まさか別の世界とは知らなかったし」

「ほんとに?」


怖い怖い怖い。


「本当だよ。ナターシャちゃんだって絵本読んで異世界の実在の話ですって言われて、いきなり信用できる?」

「それは……まぁ、正直オサムがダークの体を使ってる事はなんとなく信用できたけど、こことは異なる世界があるって言われても信用できなしねぇ」

「まあ俺もだよ。俺はいろいろの世界の物語を見た。もしかしたらここのように本当にある世界かもしれないし、ただの創作物かもしれないし、それがわからない。まあこの世界は、11人の勇者の物語がそれぞれあった」

「じゃあオサムは全員の事も見たの?」

「いいや……ダークしか見てないな」


そんな全員分をプレイとかいくら課金する事になるやら。


「そうなんだ。ねぇオサム?」

「ん?」

「戻りたい?」


何故か恐る恐る聞いて来る。


「どこに?」

「元の世界」


ああ~。

戻れるのかな?


「戻りたくないかな。俺は引き籠って、そうやっていろんな物語見てるだけで、日々腐って行くだけだったからな」

「ほんと?」


何故かナターシャちゃんがパーっと明るくなる。

いやわかるけどさ。

そこまで俺を想ってくれてるのは嬉しいな。

今まで俺の人生は女っけなかったし。


「ああ、ナターシャちゃんといちゃいちゃできるし」


やばっ!

これはまずい。

俺には気持ちは無いって散々言ってたしな。


「あたいと?」

「いや、言い方は悪かったな。ナターシャちゃんと話せるから。あそこでの2人での暮らし本当は楽しかったよ。ずっと1人で腐ってた俺に勿体無いと思う程」

「それってあたいが好きだって言ってるから都合の良い女にしてない?」


ええ~。

そうくる?

いやこのいたずらっ子のような笑みはわざとやってるな。

これ何て言えば正解なんだ?

何て言っても矯正、ペッシーンが待ってるだろ?


「そんな事はないよ」

「じゃあもうあたいとはしなくても平気?」


そう言って抱き着いてきた。

しかも胸を押し付けるように。

絶対わざとだ。


「……ナターシャちゃんが拒むなら……っていうかわざとだよね?これどう言っても矯正って展開に持って行こうとしてるよね?」

「バレたか」


やっぱり。

しかも覚醒したビッグマグナムを握ってくる。


「こんなにしちゃってさぁ。本当に拒めば我慢するのかね」

「じゃあくっつかないで」

「それは嫌だ」

「さっきからズルいよ」

「いちゃいちゃできるからこっち世界のが良いんでしょう?」


もう勘弁してください。



「ただあれだ。一気に歳が老け込んだのが難点だけどな」


無理に話題を変えた。


「あーオサム逃げたー」


それは逃げますとも。


「まあ良いや。オサムは若かったの?」


そう言いつつやっと離れてくれた。

いや、ほんとはくっついていたかったけど。

だから俺が抱き寄せる。


「まだ十代だった」

「へえ十代ね……それでこれは何のつもり?言ってる事がめちゃくちゃじゃない?」

「ナターシャちゃんが可愛いのが悪い」

「あたいだってね意識したりするんだよ?」


あ、理性が飛んだ。


「……またやってしまった」


罪悪感に包まれる。

たぶん俺はナターシャちゃんの気持ちに答えなれないから。


「こんなんで拒んだら我慢できるのかねぇ」

「もう矯正でも何でもしてください」


顔を突き出す。


「……ちゅ!」


キスされた。


「ねぇオサム。こらからの事が片付いたら、また一緒に暮らさない?」


避けてたのに……。

その話をするの?


「………」

「嫌なのかい?」

「……いやそういうわけでは……」


どう答えたものか。



コンコンっ!


そこでノックされた。


「……はい」

「ストラトス殿が到着されましたとダーク殿に伝えるように仰せつかりました」


フィックス兵が扉の向こうでそう言う。


「……わかった」

「やっぱり危険なの?」


ナターシャちゃんは先程の続きを話してるのだろう。


「たぶん。俺は帰って来れるかわからない。だから、はっきり約束できない」

「じゃあ、あたいも行ってオサムを守るよ」


はいっ!?


「聞いてないよ?」

「うん、言ってないから」


あっけらかんと。


「言ったら賛成した?」


そう続ける。


「しない」

「でしょう?だからギリギリまで言わなかった。他の人には、もう行くって伝えてあるよ」


外堀埋めやがったのか。


「は~来るなって行っても来るんだろ」


溜息が漏れる。


「うん!だから終わったら一緒に暮らそうね」

「いや、それ死亡フラグ」

「死亡ふらぐ?何だいそれ?」

「いや良い。こっちの世界には馴染みのない言葉だから。ともかく約束は出来ない」

「まさか死ぬ気なのかい?」

「そんな事はさらさら無いよ。でもナターシャちゃんさっきの話で気付いてるでしょう?今回の黒幕」

「ダークの相棒」


そうダームエル。


「これは本来ならダークが決着を付けないといけない事。だから代わりに俺がやらないと」

「それで何で約束できないの?」

「その結果がどうなるかわからないからだ」


いや俺の中では、もうわかってる。

予感がする。

でも、杞憂に終わって欲しいのでフラグは立てたくない。


「じゃあ終わった時に、あんたが目の前にいたら引きずってでもあたいの家に連れ帰るからね」

「それより早く行くよ。さっきイッたばかりだけど」

「下品過ぎる……矯正」


ペッシーンっ!


結局ひっぱ叩かれた。

まあ有耶無耶にする為にわざとだったんだけど。



ルティナが南から強い気配を感じるという事で、俺達は南の小島にある廃墟となった貴族の屋敷に飛空船ファルコンに乗りやって来た。


挿絵(By みてみん)


「やはり魔物が沢山いるな」


エリスが下を見て呟く。

まあ予想は付いていたがな。

ここが要の場所なら守りは厳重だろう。


「エリス、わかってると思うが……」

「もう何度話した?わかってるロクーム。私はここで待機してる」

「じゃあ編成だ。まず俺、ユキ、サラは北側」

「わかったユキ」

「承知した」


って何で、お前が仕切ってるの?

しかも編成って何?


「エーコ、ラゴスのじーさん、ムサシは西側」

「わかったよー」

「わかったのじゃ」

「承知したでござる」


「ルティナ、ガッシュは東側」

「わかったわ」

「わかったわかった」


ってこっちは2人だけかよ。

まあ2人とも強キャラだからなんだろうけど


「ダーク、ナターシャ、アル、エドは一番多い南側」

「わかったわ」

「おお」

「わかった」


一番多いとこかよ。

まあそれで4人なんだろうけど。

って、それより暗殺者ロールプレイを……。


「……ああ」

「じゃあ各自検討を祈る」


なんでこいつが仕切ってるのか釈然としないがな。

それはともかく、俺達は各自の持ち場に降り立った……。

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