娘を捨てた
俺は一つ気になってる事もあり、まずフィックス城を向かった。
「ここフィックス城だ。何用か?」
門番が2人立っており止められる。
「エド、エドワード王子に謁見したい」
「名を」
「ダークだ」
「しばしお待ちを……」
1人が城に入って行く。
しばらく待つと戻って来た。
「どうぞ」
門番の一人に連れられ応接間に連れて来られた。
そこにエドがいた。
「では失礼します」
門番がいなくなる。
「ダーク無事だったか。良かった……2年近くも見なかったから心配したぞ」
無事だったか?
やはりこいつは知ってるな。
「あれは貴様の差し金か?」
小太刀を抜き構える。
「待ってくれ。私や父ではない。あれはウエストックスの町長の独断だ」
「……そうか」
小太刀をしまう。
フィックス領には変わりないが、こいつを殺した所でダームエルは戻って来ない。
「住民を怖がらせたという名目で処刑にした。本当にすまなかった」
エドが頭を下げて来た。
「王子なのに頭を下げるのか?」
「当然だ……雇ってる時限定だが、仲間だろ?」
「俺の手で始末できなかったのは残念だが、良いだろう。ところで名目って何だ?」
「一時期の仲間だとしても追い込んだからには潰したかった……それでも大義名分がないと処刑できなかったんだ。だが無事で良かった。捜索したのだが見つからなかったので心配した」
「無事……だと?」
やはり怒りを収められない。
再び小太刀を抜く。
「私を殺すか?」
「ああ……相棒の仇だ」
「相棒?ダームエルか?まさか……」
「ああ、ウエストックスの襲撃で死んだ」
「そうか本当にすまない」
再び頭を下げて来る。
「だけど待ってくれ」
「待つ?」
「私を殺しても構わない。だけどその前にラフラカ帝国を潰してからにしてくれ。諸悪の根源はあそこだ。私もダームエルとは酒を交わした者として尚、許せない」
「酒を交わしたのか?」
とは言ったもののダームエルが直接エドから仕事を取ってくる事もあったからな。
そんな事もあるか。
「ああ……と言っても情報交換や仕事の依頼でだがな。陽気で良い奴って印象があったな」
「そうか……まあお前に怒りをぶつけてもあいつは帰って来ない」
俺は再び小太刀をしまう。
「すまない」
「それよりも今日はお前に別の用があって来た」
「何だ?」
「ララークに効く薬が欲しい。どこで手に入る?」
「ララークか……ラームジェルグの町に優秀な薬師がいる。名をレイラ=プリズン」
「ラームジェルグか……また港が封鎖されなければ良いが」
「なら私も行こう」
「良いのか?」
正直助かる。
優秀な薬師なら早々に相手してくれない可能性もある。
「せめてもの償いだ。ところでララークの病の侵されたの誰だ?」
「妻だ」
「婚姻したのか。お前の妻だから、相当奇麗なのだろうな」
「妻を口説いたら、本気で殺すぞ」
今日一番の殺意を向ける。
「しないから、殺意を引っ込めてくれ。そうか妻ができたのだな。だから2年近くも見なかったのだな」
「ああ……ダームエルを失って失意の底にいた俺を救いあげてくれた。だから何が何でも助けたい」
「わかった。出来る限り協力しよう」
「頼む」
「お前変わったな」
ん?ああそう言えば
2年も素でいたし仕事じゃないから忘れていた。
「いいや……ダームエルに言われて口数を減らしていただけだ。それに今は仕事じゃない」
「そういう事か……じゃあ早速イーストックスへ行こう」
「そう言えば皆は元気か?」
「弟は馬鹿みたいに暴れているよ。ルティナはほとんどアジトから出ない。ムサシは積極的にラフラカ帝国と戦ってる。エリスはまだ裏切りがバレていないからな、潜入してる。ロクームはエリスに着いて行った。ユキも最近反帝国組織に加わってくれた」
はっ!?
今聞き捨てならない事を言ったぞ。
「ロクームはルティナを口説いてなかったか?」
「ああそうなんだが、最近はエリスにご執心の様子だ」
「意味わからんな」
「全てのレディは口説くのが礼儀だろ?」
「お前に言った俺が馬鹿だった」
「ははは……今のお前は話しやすいな。さてそろそろ行こうか」
「ああ」
そうしてラームジェルグに向かった。
港封鎖もなくラームジェルグにすんなり来れた。
それでも1週間、魔導士の村を出てから2週間近く経っていた。
「これはエドワード王子……何か薬の入用ですか?」
こいつがレイラ=プリズンという名の薬師か?
「やあレディ……今日も美しいね」
「またそんな事言って……それで、何が必要ですか?」
「ララークに効くの薬を頼む」
「はいよ」
薬を渡される。
エドがお金を払っていた。
何故か船代も出してくれた。
「ところでレディ。元気がないようだけど如何したか?」
「あら気付かれてしまいました?実は娘が出て行ってしまいまして」
「娘さんが?」
「ええ……2年近く前から娘の婚約者の悪評が立ちまして、それが原因で婚約者が失踪したのです。たぶん探しに行ったんじゃないかな?」
「そうですか。見かける機会があれば、母が心配してると伝えましょう」
「ありがとうございますエドワード王子」
「美しいレディの顔を曇らせるのは世界の損失だからね」
―――――
~アーク~
「なあ娘って……」
「あたいだね」
「やっぱり……話してて思い出したけど苗字がプリズンだったからな」
「みょうじ?家名の事?変わった言葉ね」
「ああ、俺のいた世界では家名なんて言葉は滅多に使わない。それでナターシャちゃんはその時、どうしてたの?婚約者を探してたの?」
「いいや……あの時のあたいは、婚約者を裏切った自責の念から、そんな事できなかった。家を建てる為に薬を売って町から町へと転々としてたねぇ。まあ後々になって何で捕まえなったのかと後悔したけどね」
後悔か……。
俺もしたな。
何でダチを裏切ったのだろうと。
「まあ、そのお陰で今のあたいがいるのだけどねぇ。今度は離さない、間違えないってアークを追い掛けて来た」
「そうか」
それしか言えない。
だって、たぶんお別れする事になる。
俺は傍にいれない。
ごめんね。ナターシャちゃん。
「じゃあ続けるね」
―――――
「なあ金は良いのか?」
「ウエストックスの町長の行動に気付けなかったお詫びだよ。それに婚姻祝いだとでも思ってくれ」
「そうか。すまない」
「ではまたなアークス」
「ん?知っていたのか?」
「ダームエルと酒を交わしたって言っただろ?チーム名がダークって聞いたぞ」
左目を瞑りウィンクしてきやがった。
相変わらずキザな奴だな。
「そうか」
こうして俺達はフィックス城の前で別れた。
1ヶ月近くかかったが魔導士の村に帰って来た。
「何をやってるのじゃ貴様は?グランティーヌは……グランティーヌは……」
村に入って開口一番ラゴスじーさんに怒鳴られた。
「えっ!?まさか……まさか……」
「もう逝ってしまったのじゃ」
「そん、な……」
俺はティーの墓に案内されてしばらく呆然としてた。
「貴様に伝えるのは気にくわないのじゃが、私は幸せだった……グランティーヌの最期の言葉じゃよ」
何も返せない。
そんな余裕は無い。
ティー……ティー……ティー……。
俺はどうすれば良い?
また俺は大事な者を失ったのだな。
【エーコと幸せになって】
無理だよ。
お前がいなきゃ無理だよ。
俺の手は血で染まってるしお前を看取らなかったのだぞ。
そんな俺がエーコと一緒にいる資格ないだろ?
俺は再び失意に呑まれ、酒を毎日煽った。
俺はどうすれば良いんだ?ティー。
「貴様はまた飲んだくれて、エーコはどうするのじゃ」
毎日毎日ラゴスじーさんの小言が煩い。
それを無視し続けた俺は失意の底にいた。
1ヶ月が過ぎた頃、俺は決意する。
ダームエルを殺した連中、関わった連中全員殺す。
そしてティーを死に至らしめた商人を殺す。
そう決意した。
すまないなダームエル。
俺はやっぱり暗殺者になるよ。
護衛のが向いてるって言われたけど、やっぱり俺はそれしかできない。
そして俺は村発とうとしていた。
「貴様、少しはマシな顔になったと思ったら、出て行くのじゃな?」
「……ああ」
「貴様……いやアークスよ。エーコはどうするのじゃ?」
「……違う」
「何じゃ?」
「……俺はアークスではない。ダークだ」
さあここからはダークの仮面を被ろう。
「ダーク?何じゃそれは?」
「……暗殺者ダークだ。俺にガキ等いない」
「貴様という奴はぁぁぁっ!」
「……邪魔する奴は誰でも殺す。例えエーコであっても」
「何なんじゃ貴様は?」
そう暗殺者ダークの仮面を被ろう。
ダームエル本当にすまない。
「ワンワンっ!」
お前も着いて来るのだなハンター。
「……来い!ハンター」
「ワンワンっ!」
そして俺は娘を捨てた……。
申し訳ございません
矛盾が生じました
<俺は俺らしく俺で良い>を一部変更させて頂きました
エドワード編の別れ際のエドと同じような台詞にしてみました




