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相棒を見殺しにし

それから1年いろいろあった。

ムサシが反帝国組織に加わり、俺達とひと悶着あったり。

エリスがラフラカ帝国を裏切ったり。

ロクームがルティナを口説く為に反帝国組織に入ったり

ルティナはアジトにいた子供達を守る為に半精霊に覚醒したり。

アルがガッシュを反帝国組織に勧誘したり。



本当に濃密な1年だったと思う。

余談だが、ガーリンソン指揮官はエルドリアの精霊に吹き飛ばされ、死亡が確認され、今は別の奴が指揮官だ。

そして、ダームエルの宣言通り、とことんラフラカ帝国とやり合った。

しかしやり過ぎた。

いや、依頼という形で中途半端に反帝国組織に関わっていたのが失敗だったのかもしれない。

俺達は最悪の形でしっぺ返しを食らう事になった。



挿絵(By みてみん)



季節は冬。

俺達はウエストックスに訪れていた。


「今回の依頼は何だ?」


いつも通りダームエルが持って来た仕事だ。


「人探しだと。誘拐なら攫った奴を殺して欲しいようだ」

「そうか」

「まあ明日、依頼主会うから良く休んでおこう」

「わかった」


その日は、ウエストックスの宿で眠った。

しかし、気配で朝早く目を覚めしてしまう。


「起きろダームエルっ!」

「ん?……ふあ~~。どうしたアークス?」


欠伸をしながらダームエルが起きた。


「……囲まれている」

「何だって?どこの奴等だ?」

「ラフラカ帝国軍だ。今回の依頼は、恐らく罠だったのだろう」


俺は窓から外を見ながら言った。


「クソっ!また奴等か。だが何故だ?」

「俺達はやり過ぎた」


あるいは反帝国組織に入っていれば、人数がいるので早々襲われないし撃退も可能だっただろう。


「ちっ!どうする?」

「窓を突き破って、屋根を走り抜ける」

「わかった……じゃあとっとと準備して逃げるぞ」

「ああ」


さて気配で感じ取れるのは200人程度か?

恐らくもっといるだろう。

逃げ切れるか?

俺達は窓を破り、屋根を飛び越えて逃げ始めた。


『ハイ・ファイヤー』


魔導士集団までいやがる。

数十人いる魔導士が一斉に炎魔法を唱えて来た。

家が吹き飛ぶ。

仕方無しに俺達は飛び降りた。

そして囲まれる。



「クソっ!どこまでもふざけやがってっ!」


ダームエルが毒づき、剣を抜く。

俺は走りながら小太刀を構えた。


「一点突破だ」

「おお」


プシュプシュプシュプシューンっ!


俺は正面にいた連中を斬り裂きながら進む。

ダームエルが後ろに続く。


『ハイ・ファイヤー』


クソっ!また一斉魔法。

あんなの避けられない。


「くっ!」

「ちぃっ!」


ザンっ!


焼き焦がされ、足が緩んだ隙にダームエルが斬られた。

俺はダームエルを庇うように走る。


ザンっ!

ブスっ!

プシュっ!


もう何の攻撃かわからない。

体中が悲鳴をあげている。

このままじゃ危ないな。

ダームエルも似たような状況。

でも後少し……。



「ダームエル着いたぞ」


俺は南を目指していた。


「ここって……」

「あんな人数どう足掻いても逃げきれない。凍えるだろうが覚悟を決めろ」

「仕方ない。わかったぜ」


そして飛び込んだ。

海にだ。

それでも弓は飛んでくる。

速く泳がないと。

しかし俺達はもう満身創痍。

そんな余裕もなく。

波に攫われるだけだった。




どこかに流されたのか。

気付くと陸地が見えた。

俺はダームエルを引っ張りながら、陸地に上がると、そのまま浜辺に倒れ込んだ。


「おーいアークス。生きてっか~?」

「なんとかな」


体中が悲鳴をあげているがなんとか立ち上がる。

それに寒くて凍える。

冬に海に飛び込んだのだ。

体が冷え切ってる。


「そうか……ごふっ!」


ダームエルが吐血する。


「ダームエル?」

「俺は……ダメ、見たいだ」

「ウソだろ?」

「……指1本動かないだ」

「じゃあ引きずってでも……くっ!」


痛みが走る。

俺にもそんな余力はない。

俺だっていつ完全に倒れてもおかしくない状態だ。



「なあアークス、ごふっ!」


また吐血。


「喋るなダームエル」

「お、れを殺して……くれ」

「馬鹿な事を言うなっ!」

「こ、んな……体中が、いてぇ…のに……死ぬまで、ま、てない」


どんどん弱々しくなって行ってる。

俺は小太刀を抜く。

そういつものように。

機械的に手を動かして殺すだけだ。

だけど、ダームエルに出来るわけがないだろ。


「ご、めんな~……ずっと、あや、まりた……かったんだ」

「いきなり何だよ?」

「この道に……巻き込んだ、こと、だ」

「それは俺が選んだ事だ」

「いや、それ、は……せんたくし、と、して……のこ、したから……」


ダームエルが虫の息になって来てる。


「有無をいわ、さず、ひか、りのほう、へつれて、いけば……こんな、こと、にも……」

「それは俺だって、もっと上手く立ち回れば……」


言っても詮無き事だろ。

俺もだが。

ダームエルも。


「だ、から……すぅ、はぁ……これ、は罰、なんだ。だ、から、お前さ、んが、さばい……てくれ」


ダームエルがいつの間にか泣いている。

とめどなく涙が溢れている。


「い、ごごち、がよ……すぎた。すぅ、はぁ……おま、えさんと……い、るの、が……だ、から、突き放せ、なか……った。ほんとは、わ、かって、たんだ。ガキに、いつ、までも、こんな事を……すぅ、はぁ……やら、し、ちゃ……いけ、ない……こと、くらい。お、まえ、さんが……13の、ときに、ほんとは、真っ当……な、ことを、させ、る……ってきめて、たん……だ、けど、な」



どんどん弱々しくなって行く。

もうダームエルは助からないだろう。



「だ、から……罰、な、んだ。たのむ……さ、い、ごは……おま、えさん……の手で、逝き……たい」


どうする?

迷う事ないだろ?

相棒が俺に殺される事を望んでる。

最期くらい相棒の望むままにしてやれば良いじゃんか。

俺の右手にあるこの小太刀をただ振り下ろせば良い。

このダームエルが用意してくれた小太刀で……。

できるかよっ!!

そんな事できない。

ダームエルは俺に取って相棒以前に……。


「……必ず助けを呼ぶ」


俺は逃げた。

ダームエルを見殺しにした。

何が助けを呼ぶだ。

ふざけるなっ!

ダームエル助からねぇよ。

俺は怖かっただけだ。

だから、6年も連れ添った相棒を見殺しにした……。

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